その2 占い・予知の相違①
「……というわけなんだけど」
私たちは今、曇りの空の中、夜天家の玄関口に居る。ルイさんは家事を行っているため出られないとのことで、代わりにベガさんが応じてくれた。
「オイラは歓迎したいけど、ルイの父さんが何ていうか分からないからなぁ……」
予想通りの返事だ。でも、まだ私は引き下がらない。親が留守という点では共通しているが、彼の父親は毎日帰宅していると聞いたことがある。それまで待機する方法もアリかも。
「お父さんって、何時ごろに帰ってくるのかわかる?」
「どうなんだろうなぁ……。いつもは七時ごろになるけど、なんせ休日前だ。何とも言えないな」
時刻は四時半。二時間半ともなるとこちら側の生活にも支障が出てくる。だから流石に、そこまで長居はできない。
「では……」
ソプラテスさんが何かを言いたそうに口を開く。
「私が占ってみましょう。いつ、お父様が帰宅なさるのかを」
「お手並み拝見だね!!!」
今日は行動が煩い姉が、ついに言葉を発した。背が高いのにちょこまかと動き回るのがまた気になってしまう。
そのせいか、彼が占い師であることが頭から抜けていた。
「ベガさま、何かお写真のような、お父様のお顔が分かるものをお貸し願います」
「ああ、いいよ……。その前に、リビングに入って良いよ。立ち話じゃ疲れるだろ?」
そういえば玄関口での会話だった。私たちはベガさんの厚意に甘えて、リビングに行くことに。
「そういえば、ルイさんのお家に入るの、初めてかも」
「あー、そいえばそうだね~! な~に~トモリちゃん。もしかして~、大好きな匂いで興奮しちゃ(ふごーー!! もごご!!)」
決心した。変なことを口走ってしまう悪いお口は塞いでしまおう。そもそも私はルイさんが好きってわけじゃないし、何を勘違いしてるんだろうこの姉は。さっきまで妹は誰にも渡さないというような発言をしておきながら、ルイさんなら良いってなんなのだろう……もうよく分からない。
「(じー……)」
ソプラテスさんがじっとこちらを見ているけれど、あえて無視をした。
「……きっと実りますよ。私には見えましたから。幸せそうなあなたが」
「えっ」
「嘘ですよ」
「……っもう!」
二人しておちょくってくる、というかこの二人はもう意気投合したのか。私はまだ信用しきってはいないのに……。順応性の高い姉を、ちょっとだけ羨ましく思う。
そんな中身のあまりない会話をしているうちに、私たちはリビングに着く。
「ああ、いらっしゃい二人とも、と、アレ。その人は?」
エプロン姿のルイさんが姿を表した。左手にボウルを持ち、右手で中身をクルクルかき混ぜている。作っているのは一体……。
「占い師の、ソプラテスでございます。何卒よろしくお願い申し上げます」
「ああはいどうもご丁寧に、ありがとうございます」
ヘコっとお辞儀をし合う二人は、何だか似ているように感じる。特に理由はないけれど。
「で、占いだか何だかをするつもりだったんだろ? そこに座るといいよ」
言ってくれたベガさんにありがとうと告げ、示されたキッチンテーブルの方を見る。
「わーいやっと椅子だー!!」
「お姉ちゃん既に座ってる!?」
言われる前に着席していたのだろうか。逆さに座り、ギッコンバッタンと非常に(脳内が)自由な行動をとる姉。ちょこっと常識はわきまえて欲しいかな。
そして一同(ルイさんを除いて)が着席し、ベガさんが写真を見せると、ソプラテスさんが目を瞑り、占いとやらを開始する。
「……おや、これは……『玄関扉の前』……え、玄関って」
瞬間、ガチャリと玄関の扉が開いた。
「おおー」(一同)
ピンポイントで彼は当てた。正直私は外すと思っていたし、嘘なのかもと思っていた。だからこの結果には正直驚きを隠せない。けれど、それはすぐに覆されることになる。
「ただいまぁ、お兄ちゃん……あれ、みなさんお揃い、なの?」
「えっ……っと……あぁ、ユメ、おかえり!!」
ものすごいニアミスなことに、入ってきたのは、父親ではなく、ルイさんの妹である、「夜天 結芽」さんだった。




