その1 怪しい旅人
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「これら一連の流れにより、私はここにいるのですよ」
その「如何にも占い師」と言わんばかりの格好では、逆に怪しいなとしか思えなかった。
「夢空さま。占いが当たっているとすれば、貴女達の身に、何があるかだって分からないのですよ。私も全力でお手伝いしますから、何卒、私をこの家に留まらせてください」
「そんなこと言われてもなぁ……」
土曜日の午後三時。
姉は今、部活(多分野球部)の応援を終え、帰宅の最中のはず。さっきメールが届いたからわかる。
「私はお家の主人じゃないもの。勝手には決められないの」
それに、女二人が住む環境に、少年とはいえ男を泊める訳にはいかないから。
「そうですか……」
落ち込んでいるような素振りを見せるソプラテスさん。黒のローブを身につけていても分かる長くて銀色の前髪が、垂れ下がっていた。
その目が潤んでいるのを見て、私は少しだけ、可哀想に思えてしまった。怪しい人に対してだって、慈悲ぐらいは持っていてもいいじゃない。
でも私達の家には泊める訳にはいかない。うーんどうすべきだろう……。
「ガシャン、バン、ただいまー」
「効果音付きなの!?」
姉が帰宅した。そして私はツッコんだ。反射的に。ガシャンと何を割ったのか。
距離が遠いから、声が届いたかは分からないけれど。
「お姉さんが帰宅なさったんですね」
「そうだよ。ほんのちょっと癖が強いけど」
「ほほう、それはそれは……」
それから少々の間を置いて、姉がリビングに入ってきた。
「やっほーい、お姉ちゃんが帰ってきたよぉトモリちゃあああん!」
帰ってくるなりいきなり飛び付かれて、抱きしめられる。これはいつもの光景だけど、お客さん(という表現が適切かは分からないけれど)が来ているのだから、少しは自重をしてほしいと思う。嬉しいけど。
ああッ、変なところは触らないで。
「不思議なお方ですね。お姉さんは……」
「えーと……だあれ?」
ソプラテスさんの存在に気づくと、わたしは解放された。そして、姉にこれまでの経緯やら何やらを掻い摘んで説明すると、直ぐに納得してくれた。
「トモリちゃんの彼氏じゃなくてよかった! びっくりしたっ!!」
「さ、流石にそれはないよっ!」
勘違いも甚だしいよ。
「確かにトモリさまは美人ですが、私の好みのタイプではありませんので、無問題です。」
そんな言い方をされると、心に棘が刺さるかも。私だって女の子。好みでないと言われることのショックは、男の子よりも大きい。
「まあどっちにしてもあたしは~トモリちゃんを~、渡さなーい!!」
この話し方にムッとする人も多い。私は好きだけど……ソプラテスさんがどう感じるかがわからない。
少し心配になりながら彼の方を見ると、笑ってた。ちょっとだけ安心。
「それでー、ソプラテスさん下宿先を探しているんでしょう??」
「はい。貴方たちに関係があることでしょうから、できればこちらにと思ったんですが……」
姉は「うーん」と考え込み、辺りを忙しなく動き回って、やがて閃きを口にする。
「お父さんが今居ないからねー……。今忙しいだろうし、帰ってこないだろうしー。この家は無理かなぁ」
「やっぱりですか……仕方ないんでしょうけど、残念です……」
「まーだお話は終わってないよ~。でさ、あたし思いついたんだけどさ。ルイくんの家は?」
「ルイさんの家……」
その手は考えていなかった。あのお家には、居候のベガさんもいるし、丁度いいかもしれない。でも、果たして許してもらえるかな。
「善は急げって言うでしょ! 行ってみようよ!!」
懸念を告げると直ぐにパッと返ってきた。
「ああ、私なんかのために、ありがとうございます……」
いいんだよ、と元気よくお姉ちゃんが言う。
「……あ、先にお家のこと済ませちゃうね」
その後、洗濯、風呂溜め、皿洗い、掃除……を出来る限り済ませて、私たちはルイさん……夜天家を目指して出発した。




