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リーングラードの学び舎より  作者: いえこけい
第六章
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Someday fight and destiny.

 気絶したベルナットを持ってグランハザード商会のバザールに顔を出したら、すぐさま商会員が現れて、ベルナットの店に案内してくれました。

 チップを渡そうとしましたが珍しく首を振って商会員はいなくなりました。


 若干、青ざめていたように見えましたが問題はなさそうですね。


 ベルナットの店は竜車の荷台を改造して織物や裁縫ができるように大きく間取りを取った移動型裁縫屋というべきでしょうか?


 荷台を三台繋げているのでかなりのスペースがありますね。

 横壁が幌であることを除けば小さな喫茶店くらいでしょうか。

 ベルナットたちマグル族からすればもっと大きく見えるんでしょうね。


 様々な素材の布地が掛けられた壁の他、特に目につくのは独特の形をした裁縫ミシンでしょう。

 形状は機(はた)織り機に巨大な手のような木材機構が覆いかぶさり、いくつものペダルが備え付けられ、見た目は独特なパイプオルガンのようです。


 これはマグルの手が本来、細かい作業に向かないのに性質的に細かい作業が得意な結果、「細かい作業ができないなら作業できる機構を作ればいい!」という情熱が作り出した独自文化です。


 足踏みだけで糸通しから着け外し、布送りまでやってのける優れものらしいのですが仕組みが若干、術式具に近いところがあります。

 単純な物理的な仕組みではどうしても動かない位置に金属部品が使われているところを見ると、あながち間違った見立てではないのでしょう。


 観察はこれくらいにして勝手知ったる我が家のように裁縫屋の中に入り、適当な場所にベルナットを置き、部屋の中にいたマグル族の少女に目礼をしました。


 マグル族の少女は自分を見て、口に手を当てびっくりしたというジェスチャーをしましたが、すぐにベルナットを見て、次に自分を見ました。

 どうやら何かしらの得心がいったのか楚々と外に出てしまいました。


 たぶん店番に行ったのでしょう。


 さて、そろそろ背中に突き刺さる視線に耐えるのも飽きたので自分は生徒たちに振り向きました。


「一息できる場所が見つかったのは僥倖ですね。ここを拠点に買い物をしましょうか」

「いやいや、もうなんか色んなことが起きすぎてツッコミきれなかったんだけど一つだけハッキリ言えることがあるし」

「なんです? 先生はいつでも質問を受け付けますよ?」

「先生って真性の鬼畜だよね」


 マッフル君のジト目に自分は先ほどまでの流れを思い返しました。

 特に何も問題なかったと思いますが?


「マグルを叩くなどという大罪をどうして平気で行えるのですの!」


 クリスティーナ君が身を乗り出して近寄ってきたのでドリルを押し返してやりました。


「あ……、おっきいウサちゃん……、だいじょうぶなのです?」


 セロ君は心配そうにベルナットを看ていました。

 その横でリリーナ君はベルナットの鼻を遠慮なく指先で突っついていました。


「セロりん。この兎はマグル族でありますよ」

「マグル族……? なのですか?」

「マグル族はヒト種に数えられる一種で、兎によく似た姿をしている。大きさは大体、成人男性の腰まででフェーリアーの次に小型のヒト種と言われている。分布域は広く、人間との交流関係は神代まで遡る」

「ほぇ……、すごいのです」


 エリエス君の説明だと何がすごいのか今一つ、わかりませんね。


 なので少しだけ授業をしましょうか。

 お題はマグル族。暦学の分類なのでアレフレットのお株を奪う形ですが、どうせ貴族院の試練には出ませんしね。


 マグル族。

 見た目はそのまま、エリエス君の説明通りですね。

 ベルナットは灰色の毛皮に覆われていて、先ほどのマグル族の少女は明るい茶色で、見ての通りというか様々な色や模様で彩られ、長毛種や短毛種もいます。

 全てひっくるめてマグル族ですね。


 神話では岩の王の奉仕種族として生まれ、人種との付き合いもこの頃からあります。

 身体能力が低いせいか弾圧されることもありましたが、そうした時は他種族から遠ざかり、いつの間にか寄り添っては隣人となる不思議な種族です。

 細工や裁縫などの細かい作業に向いており、そのせいか独自の文化を築いています。


 その独自文化の一つとして……、あぁ、ありました。


 自分は部屋の隅に植物を見つけて、鉢植えごと生徒たちの前に持ってきました。

 胸くらいの高さの植物には六つの蕾がピンっと閉じられていました。


「以前、源素適性をしたと思いますが覚えていますか?」


 生徒たちはそれぞれ頷いていました。

 まぁ、忘れられるような出来事ではないでしょうね、主に白い誰かさんのせいで。


「これは【ティナルの木】という低木です。この植物に源素を流すと……」


 ティナルの木の蕾が一斉に開きました。

 それぞれ赤、青、黄、緑、黒、白の六色の花です。


 この光景には生徒たちも驚いたのでしょう。

 不思議そうに木を眺めていました。


「こうして流した源素に応じて花を咲かせます。古い時代にはこれで源素適性を観たりしたんですよ」

「先生は全属性適性だから全てが咲いた、ということですか」

「えぇ。と言いたいのですが実は違います」


 今度は黄色の源素だけを流してやりました。

 すると黄色の花以外がしゅるしゅると萎れて、再び蕾に戻ってしまいました。


「このように源素に反応するので意識的に源素を流してやれば適性以外の花が咲きます。つまり――」

「そうそう! トモダチの言う通り、本当は周囲の源素に反応するんだ! ボクたちは源素が見られないから源素が濃い場所を知るために使うんだよ! あぁ! そうそう、見られないといっても『眼』がないわけじゃないんだ! 見ようと思えば見れるけど他のヒト種に比べてちょっとぼんやりとしか見えないんだよね! 代わりに周囲、全てを同時に見ることができるんだ! 他にもエルフ種が生まれつき緑の源素が見えるようにボクたちは全ての源素が生まれつき、見えるんだ! ようするにボクたちの『眼』は近眼なんだよ? あれ? トモダチ? どうして手をあげているんだい?」


 人の説明を奪うとは良い度胸ですねベルナット。


 自分がベルナットに天誅を食らわせる前にマッフル君とクリスティーナ君が両脇からガッチリ掴みかかってきました。

 セロ君が自分の正面で両手を広げてプルプルしていますし、リリーナ君はベルナットを抱えて跳躍、距離を取りました。


「冗談ですよ。いちいち叩いて黙らせるつもりはありません。ありませんから術式を編むのを止めましょうエリエス君」


 エリエス君だけは指先をこちらに向けて、ウル・プリムの術式を編んでいました。


 指を鳴らして術陣を霧散させるとエリエス君は瞳に若干の怒りを含めました。

 あぁ、これはようするに膨れっ面というヤツですね。


「マグル族は初めて見ました。話を聞き終えるまで邪魔はさせません」

「一切、信用できないんだけど! ていうかマグル相手に大人げないし!」

「マグルへの暴行は禁止されていますのよ! 先生が犯罪者なのはともかく先生が先生である間は自重するべきですわ! じゃないと私たちまで犯罪者だと思われますわ!」


 とりあえずクリスティーナ君の頭には行き場のなくなった拳を案内してあげました。


 それにしてもクリスティーナ君は減点ですね。

 現代歴学の項目をキチンと教えなおすべきでしょうか?


 マグル族への暴行が全面的に禁止されているわけではありません。

 基本、穏やかで騒がしく臆病かつ弱いマグル族が犯罪に手を染めることはありません。もっとも誤って行うこともあり得ますが話の本質とは違いますね。


 ようするにマグル族は善良でひ弱なのでそれ相応に扱うように、ということです。

 国政で農地改革や作物の改良などで誘致した手前、あまり無碍な扱いをしないように国が率先して努めているだけです。


別に殴っても問題ありませんよ?

 見た目の問題で普通のヒトの良心に大ダメージを与えるくらいです。


「先生は、めっ、なのですっ」

「……ぬぅ。なかなかであります」


 セロ君は真面目ですね。

 でも物理結界を張らなくても大丈夫ですよ?


 あとリリーナ君。君は何やら呟いていたようですが先生は知っていますよ。

 今、ベルナットの毛皮を堪能しているだけですよね?


「やぁやぁ! 忘れてた忘れてた! トモダチはトモダチの中で一番、狂暴なトモダチだった! でもボクは君を罵らないし詰(なじ)らないし貶めやしない! だってトモダチだからね! それにただの暴力ではなくちゃんと説明していたし、再会の喜びをすぐにも示したくて走っていったボクも悪かった! だからボクはちゃんと知っているよ! 本当は心優しい狂暴な人だってことを! あ、そういえばお茶の用意をしなきゃね! すぐにできるからちょっと待ってくれないかな? お茶の用意をしている間に話が聞きたいよ! トリー? トリー? あれ? 店番かな? 仕方ないや! うん! 準備するからちょっと待っててね! 話を聞きたいって言うけれど何を聞こうかな? その大きな女の子たちについてもだけど王都からいなくなったアレやコレやソレやなんてやっぱり全部全部聞きたいんだ! それに狼の匂い! この匂いは知っているよ! フィヨには特にこの匂いがまとわりついていたからね! あ、ごめん……、ちょっと無神経だった」


 リリーナ君の腕から降りたベルナットは身振り手振りで感情を示していましたが、話題を間違えたと肩を落としました。


「そうですね無神経ですね。だから、もうちょっと落ち着きましょう。ひとまずお茶を用意してください。あぁ、それと」


 不思議なことにですね、ベルナット。


「元気にしているようですね」

「……うん! 元気だよトモダチ!」


 フィヨのことをベルナットに言われても、何も湧きあがってきません。

 ただ当たり前のことを言われた、それだけの感覚しかありません。


 ベルナットが慌ただしくも落ち着きのない姿勢でお茶を用意しているのを横目に、自分は生徒たちに向き直りました。


「さて、話を戻しましょうか。マグル族は源素と関係のある特殊な植物について詳しく、その知識や彼らの持つ種子は独自文化の一つとして挙げられます」

「文化? 文化と言えばそうなるのかな! ボクたちの知識も心もみんなみんな代々の【モノタリ】から聞かされて育つんだ! 【モノタリ】っていうのは【ナカテーの碑文】を読める語り部みたいなものかな? 【第三界】の……ってよくわかんないよね! ボクも最初はよくわかんなかったよ! おおざっぱに何を言われるかっていうとトモダチは大事に、かな? 当たり前のことだね!」


 ベルナットは言いたい放題言った後はすぐに鼻歌混じりでお茶を入れ始めました。


 あのですね。

 いきなり専門用語、放りこまないでください。

 たぶん、自分の人生に関わってきそうな単語ばかり並べやがりましたよね。


 昔は気にならなかったのに謎の知識や経験を得た今はスルーできないんですよ。

 しかも知らなかったら知らなかったでこっちの命を掠め取っていくような予感がぷんぷん匂い立つんですよ。


 あとで話を聞くしかありませんね。

 最悪、拉致ります。


「興味深い……」


 エリエス君。必死にメモを取っているのはいいですがまだやるべきことはありますよ。


「ベルナット。少しこの店で生徒と話したいことがあるので、机はこのままお借りします。あぁ、マッフル君、セロ君、リリーナ君は今のうちに買い物をしてきなさい。この後は制服の調整の他にもいくところがありますからね」


 まぁ、ベルナットがいるので制服の調整はここでやってもらえますね。


 なんだか妙にジト目のマッフル君とハラハラした顔のセロ君、のほほんと好奇心を生やしているリリーナ君を見送って、自分はクリスティーナ君とエリエス君に椅子に座るように促しました。


「調整するっていうならすぐにでもできるよ! ちょっと裾が足りないってことはすぐに見てわかったからね! それよりボクの作った服を本当に着てくれているんだね! 皆で頑張った甲斐があったよ! どうだった着心地! ボクたちは毛皮があるせいでニンゲンの衣装を着るとごわついちゃってね! だからニンゲンを雇って感想を聞かせてもらっているんだけどやっぱり雇う人が偏っちゃうからね! 特に女の子や男の子はご両親が服を作ったり、貰ったりしちゃうから感想は貴重なんだよ! さぁ! 何か不満点や困ったことはないかい? 肌ズレは起こしてないかい? シワが消えなかったり痒くなったりしないかい? 今ならどんな要望も応えてみせるよ!」


 そう言えば制服の感想を直接聞いたことがなかったですね。


「そうね。私の領地の絹ほどではないけれど丈夫で型崩れもない、良い生地を使っていますわね。最初は持ってきた服が使えなくて憤りも覚えたものだわ。こうして着続けてみると……、悪くはないですわ」


 と、無駄に胸を張るクリスティーナ君でした。


 ずっと着ていたから文句はないと思っていましたがある程度、服を気にするクリスティーナ君がそういうなら相当、いい出来なんでしょうね。


「動きにくくもなく、修繕もしやすいとなれば良くできているのではなくて? 少し華やかさが足りないのは致し方ありませんわね。製型をした者は褒めてあげてもよろしくてよ」


 ……あぁ、そういうことですか。

 このクリスティーナ君はベルナットが制服を作ったと聞いて、ただ『設計図の通りに作った裁縫上手』として見ているんですね。

 デザイナーは別に居て、ベルナットは下請けと勘違いしているのでしょう。


 この勘違いの原因はベルナットがマグル族だからでしょうね。

 ウサギみたいな手で細かい作業ができないと判断しています。

 色んな否定的意見も考えついたでしょうが勝手に筋道を立てて納得するのはどんな人間も同じです。


 こうした思いこみにハマると中々、抜け出せないでいるんですよね。

 正直に製作者だと教えてあげましょうか?


「まぁ……、総じて最近、流行の服飾屋が仕立てたと聞いたので渋々でしたわね。やはりフリルが足りないですわ」


 正直に教えていちいち騒がれるより、このまま澄まし顔で居させましょう。


「エリエス君はどうです?」

「選ぶ必要がないので役に立ちます」


 これまたド直球な意見です。

 もうちょっと着飾ってもいいんですよ?


 女の子らしさってどうやって磨いてやれるんでしょう。

 単純に着飾らせてもエリエス君はうんざりしそうですよね。

 こうした根の部分は直せと言われて直るものでもなく、ちょっとした価値観の変化でガラリと変わりますからね。


 装飾について興味が出てきていたので、長い目で見るべきでしょう。


 それと『選ばない』というのは良い面もあって否定もしづらくて困ります。


 というのも古い知人の話になりますが一つ、面白い考え方を聞いたことがあります。

 その知人は毎日、同じ服を着ていました。

 着る服がないのかと聞いてみたら『同じ服を何着も持っていて使いまわしている』と返ってきました。


 じゃぁ、どうして同じデザインの同じ服ばかりを着ているのかと聞いて戻ってきた返事が面白く感じました。

 曰く『一日に何かを選ぶってのは力が必要で、量も決まっている。服の選択に使うよりもっと大事なことを選びたい服は決まったものしか着ない』とのことでした。


 まぁ、変わった考え方です。

 ただのズボラと言い換えてもいいでしょう。

 しかし、否定だけはできませんでした。


 選択が何かを決断すると置き換えるなら、決断には気持ちを決める――ようするに気合いです。

 選択の度に気合いを入れていたら、それは確かに疲れるでしょうね。


 彼女の言に一理あると思ってしまいます。


「うんうん! 喜んでもらえて何よりだよ! 騎士たちが着る服よりも丈夫で繕いやすく、動きやすくて着やすい、それでいて快適な服だなんて国の人に言われた時はムチャクチャだと思ったけれど封書には制服のカンタンな設計図や織り方、繕い方なんて助言まで書いてあったんだから奮わないわけがないじゃないか!」


 え? それは聞いたことがないんですが。


 あぁ、いや、心当たりならあります。

 ベルベールさんがフィヨに教えていた服飾関係は自分がよく知るものもありました。

 自分の記憶から映像を取り出し、知ったと言っていましたが作り方を教えていませんし、知りもしません。


 そこまで服に詳しいわけではありませんからね。

 間違いなく細部から繕い方を学んだベルベールさんの功績です。


 となるとベルナットに送った手紙をベルベールさんが先に見て、アドバイスを送っていたようですね。

 結果として良い方向に行ったのなら怒るつもりはありません。

 むしろ感謝の手紙を書いておきましょう。


「……あら? それってどういう」

「ベルナット。構わないので手元を見てください。お茶がこぼれていますよ」

「うわっち! 大変だ大変! 何か拭くもの! 拭くもの! あ、これだ……、て!? これは新しい生地だった~!? あぁ、どうしよう、すごく高かったのに……」


 ベルナットの仕草はけたたましいというのがぴったりと当てはまりました。


「落ち着いてくださいベルナット。とりあえず、生地の使えない部分は切って、置いてください。クリスティーナ君とエリエス君は進路相談がありますから、こちらに集中しましょうか」


 進路相談と言いますが二人はもう決まっているでしょう。


「進路、つまり学園を卒業した後、何になるかということですわね。それならもう決まっていますわ。ハイルハイツ領を継ぐ。生まれてからずっとそのために学んできましたわ」


 クリスティーナ君の進路は実家を継ぐで間違いな……、ん?


「少し踏み入った質問をしますがよろしいですか?」

「なんですの? いつもはズケズケとモノを言いますのに」

「気のせいですよ。確かクリスティーナ君は兄がいると言っていましたね。それも二人。普通に考えたら兄二人のどちらかが領地を継ぎ、片方が補佐の立場に収まるはずです。クリスティーナ君は他領の嫁入りが順当です。となると、どうしてハイルハイツ家を継ぐことに?」

「………」


 これにクリスティーナ君は珍しく眉根を寄せて、唇を尖らせてしまいました。

 それからチラリとエリエス君を横目で盗み見て、息を吐きました。


「本来なら余人を交えず教えないとならないところですわ。でも、この子はどうせ私のことを聞いても動じないのでしょう? 言いふらすほど興味がないというか……」

「そんなことない」


 エリエス君の無感動な瞳を見て、クリスティーナ君は右と左を素早く見て、途端に顔を赤らめました。


「クリスティーナに纏わるものがなんであれ、クリスティーナが授業妨害するのに変わりない」


 これにクリスティーナ君は机に頭をぶつけて突っ伏しました。

 すごいですねエリエス君。術式も使わず、手も触れずにクリスティーナ君を机に叩きつけるとは。


 エアオシオキと命名するとして、自由自在に操れるようになれば手間いらずです。


「一応、通訳しておきますがエリエス君はクリスティーナ君がどんな過去を持っていても今の関係に変わりないと言っているだけです」

「そんなこと、言わなくてもわかってますわ! この子の言葉足らずや遠慮のなさはよく知ってますもの! それにま、まぁ、誰にも言わなければそれでいいのですわ!」


 羞恥心を振り切って、クリスティーナ君はフリルとドリルをこちらに向けました。


「私が一番、優秀だったからですわ!」

「ははっ、それは兄二人に失礼な話ですね」

「それはない」

「どうして最初からそんなに否定的なんですの!」


 尖がった唇がさらに尖がり、中々、話が進まなかったのは言うまでもないでしょう。

 少なくともベルナットのお茶が二杯目に入るまで時間がかかったということだけは言っておきます。

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