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リーングラードの学び舎より  作者: いえこけい
第六章
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Age and experience teach wisdom.

「よし。裁判の準備だ。全員に通達する、この犯罪者を生かして返すな」


 職員室に入って早々、自分は逮捕される寸前でした。

 額に青筋を張りつけたシャルティア先生の瞳は冷気というものを表現していました。

 その瞳は青属性ですか?


「違います」

「何が違う。その幼児はなんだ? 弁明は結構。裁判の席で聞こう」

「だから聞いてください」


 赤ん坊を抱いたまま悟りきった顔をしている自信がありました。


 昨日の晩、赤ん坊を保護した自分は途方に暮れました。

 何せ独身の一人暮らしにベビーグッズなんてあるわけがありません。

 おしめや哺乳瓶、肌着もなければ寝るための場所なんて影も形もありません。


 ついでに何が気に入らないのか赤ん坊が泣き始めたせいで、満足に思考する時間も与えてもらえません。

 誰がこんな嫌がらせをしたのか考え、わからなかったので想像上のバカ王を殴っておきました。


 あやしながら布を集め、巻きつけて暖炉の傍まで近寄っても全然、泣き止んでくれませんでした。

 幸い、モフモフが気を使って防音結界らしきものを張っていたおかげでお隣さんが怒鳴りこんでくることもありませんでした。

 いっそ怒鳴りこんでくれたらその場で説明できて良かったのではないかと今では思います。


 そういえば赤ん坊の肌は乾燥しやすいことを思い出し、湿度を上げるために湯を沸かし始めたりしました。


 しかし、泣き止みません。

 途方に暮れすぎて、呆然自失となった時にふと天啓が舞い降りてきました。当然、女神リィティカの信託です。


 もしかしてお腹が減っているのでしょうか?


 こうしてこれまた急遽、野菜籠をひっくり返して、赤ん坊のためのご飯を考えることになりました。

 しかし、いくら自分でも赤ん坊のご飯なんて作ったことがありません。


 そのうえ間違いなくこの子は授乳期ど真ん中です。

 離乳食なんて食べられないでしょう。


 その代わりに思いついたのは母乳です。

 さぁ、母乳を狩りに行くかと外に出ようとしたらモフモフに止められました。


 『落ち着け』と言われました。

 ちなみに自分は「じゃぁ母乳をください」と返しました。


 お互い、無言になりました。


 きっと自分とモフモフは同じことを思ったでしょうね。


 「無茶だ」と。


 自分とモフモフは遠い目をしていました。

 大の大人と狼が静かになっても赤ん坊は泣き止みません。


 もう【宿泊施設】に駆けこんで誰か探した方が早いような気がしました。

 そもそも一人で考える必要なんてありませんよ、どうしてなんでもかんでも一人でやろうとするのでしょう、助け合いは重要です、今まさに。

 そう考え、ローブを手にした瞬間、ふと、あることを思い出しました。


 かつて内紛の時に荒廃した村で見た光景です。

 女性が必死で赤ん坊に乳を飲ませようとしていたのですが、どうやら母乳が出ないようでした。

 見た感じ栄養状態が悪そうでしたしね。


 あの時、自分はその光景をスルーしたのですが、誰かが近寄っていたように思えます。

 そうして何かを赤ん坊の口元に近寄せていたような気がします。


 もしかして母乳の代わりを作ることができるのでしょうか?


 だとしたらその作り方は?

 何を使って、どんな成分だったのでしょう?


 あの状態で手に入るもの……、森があっても常時、冬場みたいなものでしたし、果実みたいなものは手に入らなかったでしょう。

 山羊がいれば乳なのでしょうが家畜が居たようにも思えません。

 寒さに強い薬草などは生えていましたし、栄養分の多い薬物の可能性もあります。


「あぁ、山羊」


 そこまで考えてまた思い出しました。

 乳です。別に山羊でなくとも牛でも十分です。

 寒村の女性は牛乳を使ったかどうか定かではありませんが、自分にとってはきっかけになりました。


 子供の頃、台所に白いものがあって、これは何かと母に聞いたことがありました。


 母はコンデンスミルク――練乳だと言っていました。

 そのときはお菓子のために作ったものだと思っていましたが、考えてみればずっと練乳があったような気がします。


 妹に飲ませていた記憶はありません。

 しかし、あのやり手の母が無駄に練乳を作るでしょうか?


 まさか、いけるのですか?

 赤ん坊って練乳を飲めるんですか?


 こんな曖昧な記憶で赤ん坊に練乳を飲ませるような賭けに出ず、母乳が出そうな人を探した方が早いんじゃないでしょうか?

 あ、しかし、嫌なことも思い出しました。


 この【宿泊施設】に身重の人を見た覚えがありません。


 自分が知る限り、というか【宿泊施設】の名簿に赤ん坊っていませんでしたね。

 一番、若い子は七歳だったと思います。


 詰みましたね。

 自分はどうやら賭けに出ないとならないようです。

 それも見ず知らずの赤ん坊に対してですよ。


 自分の考えが正しいともわからないのに試していいわけがありません。


「モフモフ。少し出てきます。すぐに帰ってきますので赤ん坊をお願いします」


 自分はローブを取らずに外に出ました。

 出かけの際、モフモフがあんぐりと口を開けていたような気がしますが、文句は後にしてください。


 誰に聞くべきかはすでに決めています。

 一番端のピットラット先生の社宅に向かいました。


「こんな夜分にすみません」


 出てきたピットラット先生は教師用制服のままでした。

 この人、寝る前まで制服を着ているのかと驚愕した瞬間でした。


「どうかされましたかな?」


 失礼な訪問だったにも関わらずピットラット先生はいつも通りでした。

 その姿にピットラット先生を選んで正解だったと肌で感じます。


 ピットラット先生なら赤ん坊を育てる機会もあったはずです。

 同じようにヘグマントも経験者でしょうが、彼はどう考えても子供の世話を奥さんに任せていそうです。

 一番、頼りになる経験者と言えば間違いなくピットラット先生でしょう。

 そうでなくとも生活の知恵は大体、答えてくれます。


「申し訳ありません、つかぬことをお伺いしたいのですが生まれて三ヶ月、あるいは四ヶ月くらいでしょうか? それくらいの赤ん坊は練乳を飲みますか?」


 この質問にピットラット先生は少し微笑みました。


「おや、ずいぶん珍しい話をご存知ですな。あまりよろしくはないとされていますが母乳がどうしても出ない場合や近くに出産していない家庭にいた場合、また男親が赤子を育てる時にそうした事があると言われています。練乳だけではなく果実の絞り汁なども使われたこともあるようですな」

「どうしてあまりよろしくないのかお聞きしても?」

「死にやすくなりますから、と言われておりますが、はてさて。私は試したことがありませんので」


 母乳が飲めないから病弱になりやすくなり結果、死にやすい、ということでしょうか。

 練乳をずっと飲ませ続けていれば確かに体に良くないでしょう。

 子供に必要な栄養がことごとく足りていませんしね。


「ちなみにエルフの赤ん坊なんかだとやはり果実の汁ですか?」

「そこまでは詳しくありませんが、おそらく。ただ練乳は高価な砂糖を使われるので多くは乳だけということもありました。ヨシュアン先生がお持ちの調味料でしたら十分でしょう」


 若干、困ったような顔をしているのはやはり、自信がないからでしょうか。

 少なくとも練乳か果実の汁かであの場を凌げることだけはわかりました。


「お答えいただきありがとうございます。では失礼します」


 すぐさま礼を言って飛んで帰るとモフモフは悟りきった顔をしていました。

 ドアを開けた瞬間、大音量でしたものね。

 他にも赤ん坊を一人で任せられて、どうしたらいいのかわからなくなったのでしょう。


「モフモフ、赤ん坊は無事ですか」

『吠えてはダメか?』

「……今は抑えてください。騒音どころか部屋が吹っ飛びます」


 吠えるのを我慢していただけですか。

 もう少し我慢してもらってから自分は台所に立ちました。


 さっそく夕飯の残りの牛乳を温めて砂糖を投入し、それから果実の汁でも入れましょうか。

 果実の汁と練乳、二つが揃えば足りない栄養も補充できるでしょう。

 気に入るかどうかわかりませんが、やってみて損はありません。


 そういえば山葡萄がまだ残っていましたね。

 ひとまず山葡萄を絞り、鍋の中に放りこむと変化が見られました。


「……バカですか、自分は」


 見事に牛乳が分離しました。


 牛乳に酸性の山葡萄を加えたら分離するに決まっているじゃないですか。

 どうやらあまりのことで動転していたようです。冷静に行動できているとは思っていたのですが、そうでなかったみたいですね。

 自分らしくない失敗に少し違和感を覚えましたが、そんな小さなことに気をかけている余裕はありません。


 これで山葡萄はなくなってしまったので練乳にするしかありませんね。


 気を取り直して、新しい鍋に牛乳と砂糖を入れて、あんまり煮詰めないようにかき混ぜながら水分を飛ばしていき、薄い麦色になったら鍋ごと氷水に漬けて再びかき混ぜつつ冷やしました。


 できた練乳をスプーンに掬い、赤ん坊の口元に寄せると泣き止み、不思議そうに口を動かしました。

 まるで食べていいものかどうか判断するように寄り目なのはなんなんでしょうね?


 そのまま啄むように練乳を飲んだのを見て、密かに安心しました。


 何度も練乳をあげると舌を小さく出して微笑んできます。

 くしゃくしゃな、愛嬌のある笑い方です。


 傾けすぎて少し零してしまったところを微温いお湯を染みこませた布で拭いてやってから抱き、膝の上に乗せてから背中をトントンと叩いてやります。


 ゲップするまで何度も何度も繰り返すと、コポッと言う音と共にゲップしました。


「……そりゃぁ、赤ん坊ですからね」


 ズボンに吐きこぼししましたよ、練乳を。


 こぼれた体液入り練乳をまた拭いて、それからどうするべきかを考えました。


 このエルフの赤ん坊を育てるつもりはありません。

 どんな事情でウチの玄関に捨て置かれたわかりませんが、教師生活を続ける以上、赤ん坊は邪魔なだけです。


 ただでさえ生徒たちで手一杯だというのに。

 それに無駄に暗躍家がゴロゴロしているんですから。


 明日、授業が終わるまで預かり、それから面倒見てくれる人を探しましょう。

 【宿泊施設】なら誰か育ててくれる人がいるかもしれません。

 キャラバンが来たら、そっちで探してもいいですね。運良く赤ん坊を生んだ母親がいたら預けてもいいですしね。


「今日、明日くらいなら面倒見ますから大人しくしてくださいね」


 ちなみにその日の夜は二回、夜泣きで叩き起されました。

 モフモフも疲れたような顔で耳を立てていましたよ。


 寝不足のまま朝になって、ようやく問題に気づきました。

 授業が終わるまで預かるということは、つまり赤ん坊を学園に連れて行かねばならない、ということです。


 流石にモフモフに任せっぱなしにするわけにもいきませんし、昨日食べたもののせいか盛大なウンチもしていました。

 若干、緑かかっていたので朝から顔が引き攣りました。


 この事件が原因で【宿泊施設】で面倒を見てくれる人を探す暇がありませんでした。


 幸い、赤ん坊の体調に問題はなさそうでしたがこれはもう、自分が連れて行くしかありません。

 何が起こるかわからなくて預けてもおけません。


 こうして仕方なく職員室まで赤ん坊を連れてきたら、このザマなのだから困るを通り越して脱力しますよ。


「なるほど、事情はわかった」


 自分の話を聞き終わるとシャルティア先生はようやく背もたれに体重を預けました。


「どこからかさらってきたわけではないと仮定しよう」


 半信半疑でした。

 信じてください。


 その目から逃げるように横を向くとリィティカ先生から震えるような熱く、激しい眼差しがありました。


 これはもしかして愛の告白ですか?


「うわぁ、うわぁ、かわいいですねぇ……、赤ちゃんですよぉ、赤ちゃぁん」


 あ、はい、赤ん坊を見ていたわけですか。

 いつになったら届くんでしょうね、この信仰心は。


 リィティカ先生はもう、触りたくてたまらないという感じで語りかけていました。

 慈愛の女神たる身としてはやはり、母性がシャウトしているのでしょうね。そう考えると仕方ないと言えば仕方ありません。

 女神が赤ん坊を見て、愛が滾らなければ嘘です。


「抱いてみますか? リィティカ先生」

「はいぃ! よろしくお願いしますぅ」


 輝かんばかりの笑顔で手を伸ばすリィティカ先生をつい抱きしめたくなりますが、赤ん坊が邪魔でした。

 しかし、赤ん坊をリィティカ先生に預けると今度は抱きしめることができません。


 いや、赤ん坊ごと抱きしめたらいいんじゃないでしょうか?


 名案だと思い、すぐさま赤ん坊をリィティカ先生に手渡しました。

 そして、今がチャンスと立ち上がると――


「あ゛―――ッ!!」

「え? えぇ? ふぇ~?」


 ――今まで大人しかった赤ん坊がギャン泣きですよ。


 あの豊かな胸に触れられているという名誉に預かりながら泣くとは何事ですか。リィティカ先生のお胸のどこに不満があるんですか。まん丸なんですよ? あれは極大の豊かさと優しさと愛しさの象徴です。題名をつけるのなら『愛の海』でしょう。まさか赤ん坊にはリィティカ先生の柔らかい愛が通用しないというのですか? これが次代か、この世の終わりか。嘆きが心を支配しますよ。


 早急に赤ん坊にこの世の真理やら何やらを教えこませなければなりません。

 ゼロ歳から始める信仰教育です。


「抱き方が悪いんじゃないか? 胸が邪魔すぎて」

「じゃ、じゃぁ、シャルティア先生が抱いてみてくださいよぅ」

「わ、私か!」


 珍しくシャルティア先生が声を裏返らせていました。

 すぐに喉を鳴らし、仕方ないというような目つきで赤ん坊に手を伸ばします。


 不思議なことにシャルティア先生が抱き上げるとピタリと泣くのを止めました。


「どんなものだ、リィティカ」

「う~、もう一回、お願いしますぅ」


 なんだか女性陣が楽しそうですね。

 もう一度、リィティカ先生に手渡すと泣き始め、しかし、シャルティア先生の手元に戻ると何故か泣き止みます。


 どうやら赤ん坊はシャルティア先生がお気に入りみたいです。

 リィティカ先生のどこが気に入らないのか、ちょっと詳しく話し合いたいですね。場合によっては異端認定も覚悟の内です。


 あぁしたガールズトークは一旦、何らかの終わりを迎えないことには話かけてもおざなりな対応しかされません。


 その間に男性教師陣の意見を聞いておきましょう。


「ピットラット先生。昨晩はありがとうございました」

「えぇ、それはもちろん……、しかし、あの赤ん坊についてだったのですな」


 ピットラット先生に言われ、自分は小さく頷きました。


「ずいぶん慌てていらっしゃったので何事かと思いましてな。ヨシュアン先生が慌てる姿、というのも新鮮でした」


 言外に「言ってくれても良かった」という風に取れますが、置かれた状況が状況でした。


「どうしてお前はそう騒動の種を拾ってくるんだ。植えるだけかと思えば新しい苗床まで見つけて、楽しいか?」


 アレフレットがジト目で見下ろしてきました。


「そのうえエルフだ。どうやったら拾ってこられるんだ」


 エルフは基本、森から出ませんしね。

 冒険者になる者もいますがリスリア王国との冷戦もあって、好き好んで表に出てくる者は少なかったはずです。


 そんなエルフの赤ん坊なんてレアなんてものじゃありません。

 下手をしたら国際問題になりかねない厄種です。


「えぇ、そのことで少し相談が」

「相談? お前がか?」


 アレフレットが胸を張って胸元を正していましたが、それを無視してヘグマントとピットラット先生に向き直りました。


「すでにお気づきかもしれませんが【宿泊施設】にはエルフがいません。では『誰がエルフの子供を自分の社宅前に置いたのか』という問題についてです」

「む? それはおかしくないか?」

「はてさて。そういえばリーングラードの森の中にエルフの集落はありませんでしたな。それは生徒会発足の時に調べておられたので覚えています」


 ヘグマントでもおかしいと気づくほどの異変です。

 ピットラット先生の言う通り、リーングラードにエルフはリリーナ君しかいません。


「そんなもの、誰かが置いたんだろう。エルフの子供だというのならエルフだ」


 ゴホン、ゴホンと咳をし、注目を集めながらアレフレットは持論を展開し始めました。


「つまり、エルフの旅人か冒険者が偶然、リーングラードに訪れてちょうど目に付いた社宅に子供を置いていった、ということさ」


 それはそれでありえる話です。

 学園はともかく【宿泊施設】は簡単な原生生物避けの柵しかありませんし社宅も同じです。

 学園に入らず、迂回するように【宿泊施設】を目指せば入れなくはありません。


 ですが、自分とモフモフの気配破りを掻い潜って社宅前までやってきて子供を置く、なんて真似ができるのなら相手は【戦略級】です。

 赤ん坊くらい余裕で守りきれるでしょうね。


 その【戦略級】が何の理由でリーングラードに訪れ、一番目立つ学園に近づかず直接、【宿泊施設】に入ってきて、どうして赤ん坊を捨てなければならなかったのか。

 少し考えるだけで不自然な行動と問題と理不尽がゴロゴロと転がってきます。


「理由に関しては想像するしかありません。どういう理由があったにしろ、問題は一つだと思いますよ」

「あの赤ん坊の処遇か」


 アレフレットも考えていたのか顎に手を置いていました。


「【宿泊施設】の住人に頼むしかないだろ。それともあの赤ん坊を育てるつもりか?」

「いえ、正直な話、赤ん坊の世話をしながら仕事はできませんよ」

「当然だな。僕たちは国政の実験計画に参加しているんだ。むしろそのくらいの認識があったことにホッとしたくらいだ」


 可愛くて包容力があって聡明で、大きな胸の女神が奥さんになってくれるのなら喜んで育てますけどね。


「ひとまず今日のところは学園長に預けようかと」


 学園長のことですから育児くらい、片手でやってのけるでしょう。

 少なくとも学園長の歳で子供を育てたことがない、とは言わせません。

 ピットラット先生と並んで対育児のプロフェッショナルでしょう。


 とりあえずの段取りが整っているだけマシでしょう。


 あの赤ん坊は自分の結論で今後が左右される、そんな弱い存在です。

 それがどこか生徒たちにかぶって見え、頭を振ってその考えを振り払いました。


 そんなこと、自分が考えるような立場にありません。

 自分はただ拾っただけです。赤ん坊の親になるつもりもない癖に軽々しく考える問題ではありません。


「学園長に赤ん坊のことをお願いしてきます」


 シャルティア先生の腕の中でスヤスヤと眠る赤ん坊を見て、ため息が出ます。


 そう言ってシャルティア先生に手を伸ばすと赤ん坊を渡してくれました。

 さすがに赤ん坊を抱かせ続けていたらシャルティア先生も授業の用意ができませんしね。


「――ッ!」


 そして、シャルティア先生は口元をかくして、小さく咳をしました。


「大丈夫ですか?」

「――あぁ、気にするな。少しすれば収まる」


 赤ん坊を抱いている間、咳を我慢していたのでしょう。

 身も知らずの赤ん坊のためにそこまで気を回すあたり、意外というか納得いうか。根性ですね、本当に。


 こうした気の配り方は自分では頭が回りませんね。

 男性と女性の、赤ん坊への接し方が違うからなんでしょうか。


 その辺を経験し損ねた自分ですが、かつて夢で見た自分とフィヨの子シアンと赤ん坊を混同することだけはありませんでした。


なんだか8/25発売だった二巻がもう出ているという噂が……、どういうことですか;;

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