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リーングラードの学び舎より  作者: いえこけい
第三章
213/374

……などと供述しており未来はこじれる予定です

「それはその……、さみしかったからです」


 というのが解答でした。

 何がって枕の強奪劇のことです。

 こうしてうまく試練官になれなかったのなら1年間、自分と会えないと思ったら居てもたってもいられず、もしかしたら出会えるかもという期待と共に王城に訪れたそうです。

 こうして極めて杜撰かつ計画的に家宅に訪れたところ、ベルベールさんと鉢合わせしたそうです。


 ベルベールさん相手に嘘が通用するわけもありません。


 しかし、不思議なことにベルベールさんはわざわざレギィに枕を売却したそうです。

 枕と布団は元々、売却して新しいものを買う予定だったので、廃品回収的な意味でレギィに売ったのかもしれませんね。

 でなければベルベールさんが売るはずありません。


 なるほど、理解しました。

 ベルベールさんが大丈夫と判断した以上、悪用はなさそうですね。

 つまり、信用して枕を預けたままで――


「いられるわけねぇですよ。とっとと返しなさい」

「にゃふんっ」


 ――鼻をつまんでやりました。


 枕には何もしていないそうなのですが……、時間の問題ですね。

 とりあえず枕をベルベールさんに返す約束を取り付けました。

 約束を守らない人は嫌いなので、レギィが自分から信用を得ようと思うのならちゃんと返さなければなりません。


 他にも色々と話し合いました。

 歩きながらも【貴賓館】についてからも。


 自分が今まで口に出さずにいた事、こうしてほしいと思う事、何に怒り、何を憎悪して内紛を生きてきたのか。

 レギィが耐えられない事、思いこんでいる事、何に悲しみ、何を努力しようとしていたのか。


 そうした普通に暮らしていたら察するはずのことすら、自分たちは見逃しているかもしれないのです。


 欠けた者同士だからこそ言葉は重要でした。

 こうした話すら自分たちがしてこなかったのは、必然的に触れざるをえなかったからでしょう。


「フィヨも……、生きていたらここに居たのかもしれないのですね」


 レギィもまたフィヨが死んで複雑な想いをした者の1人です。

 内紛時に恋心を抱いていたのなら、フィヨとはどんな気持ちで話し合い、友達となったのでしょうか。


 そこは語りたがりませんでした。

 というか、自分も聞きたくありませんでした。

 思い起こせばレギィの前でイチャつくこともありましたからね。恨み言が全部、今になって返ってきそうです。


 エドと黄色いの相手にこうしたことを話し合った覚えはありません。

 あの2人は自分より年上ですからね。察してくれる分だけ助かっています。


 メルサラは単純でわかりやすいからいいとして、やはりレギィは色々と別枠です。

 主に何を考えているのかわかりません。

 たぶん、立場的……地位ではなく、同じ立ち位置にいるからでしょうか?


 話し合いが終わり、社宅に帰ると……あ。

 またモフモフのことを忘れていました。


『同胞よ』


 暗闇の向こうから獲物を狙う声が聞こえてきました。


「……仕事で帰りが不定期になることもあるので、遅いと思ったら自分で用意してください」

『メスの匂いがする』


 さすがにバレますか。


『遅くなるなら次からは子供たちの建物に向かうとしよう』

「管理人さんのところですね、わかりました。ちゃんと言っておきます。しかし、狩ってくるという選択肢は本当にないんですか?」

『モフモフであっても守護者のいる土地では供給される以上を動くわけにはいかない。ましてや何が起こるかわからない以上、餌は貯めておかねばなるまい』


 えー、どういうことでしょうか。

 『眼』を開いてもモフモフの周囲の源素は動いていません。

 何らかの手段で守護者とやらから栄養――源素を得ているのでしょうが、それ以上は自分の用意するごはんで賄っているようです。


「となるとその姿は源素をあまり消費しないためと、得た力を貯めているため、ですかね」

『さもありなん』


 どういう都合かは知りませんが、ともかく供給量を全て力の蓄えに回しているので身体の維持は別口、ということですね。


「そこまで何を警戒しているんですか?」


 一声で国軍の兵士たちが破裂するような凶悪な力を秘めた【神話級】原生生物がまるで危険物の近くにいるような慎重さを感じさせます。


 一瞬、モフモフが目線を逸らしました。

 見ている先は自分のローブですね。いえ、ローブではなくもっと向こう側?


『……答えてはいけないようだ』

「モフモフの力なら無理矢理、破ることもできるんじゃないですか」


 何かと契約しているような感じがするので約束破りを唆すようでアレですが、疑問だったのも確かです。


『できるがやる意味を見いだせない。供給を落とされる。貯めた力も失う。そうなれば干渉することもできない』

「というか実際、何しに来たんですか?」

『モフモフが同胞と共にいることは血より濃い運命に定められている』

 

 意味なく瞬いてしまいました。

 運命? 神様あたりが定めた物語のことですか?


「自分は運命とか聞くと背筋が痒くなるんですが」


 ローブをコートハンガーにかけ、台所からグラスを持ってきて、ソファーに座りました。

 さすがに玄関でやるような話でもないでしょう。


 モフモフはゆっくりと自分の前に移動し、ペタンと座りました。


『モフモフは同胞が同胞足り得るか見ていた』


 それは吟遊詩人が語る歌のように滔々と心に染みていく、不思議な響きでした。


『異なる価値観がある』


 自分とよく似た黒色の瞳はずっと自分を見つめていました。


『草木とは違う、たがう者たちが共に在り、秩序とした繋がりがある』


 モフモフの一言、一言が見もしない風景を思い起こさせました。


『起源が異なる者同士が秩序の中で見えれば当然のように疑問が生じる』


 始まりの真珠海岸。


『一つの問いに答えを出せば新たな疑問が生まれる』


 金色の草原。空魚たちが舞う楽園。岩から現れたもっとも深い大地の知識。


『モフモフも人もいくつもの疑問の前で答えを出し、また次の疑問に挑んでいく』


 跳ねる獣たちの黄金の屋敷。剣のように厳しい雪原の輝き。灼熱が生まれた砂漠に現れた白光。


『生命は生くる挑戦だ』


 風に舞い浮かぶ外套。


『挑戦を止めない限り、続いていく』


 鎖の森と白い少女。


『異なる者は異なる者のままで、しかし、異ならない言葉で答えを紡ぎ出す』


 空には変わらず浮き続ける天上大陸。


『そして、また生命を抱え、生命の環は続いていく』


 大雲海を突き抜ける巨大な鯨。


『モフモフは同胞を見ていた。多くの子供に疑問を投げかけ、解を導き、それでいてなお己自身に問いかけ続けていく様を』


 猛毒ごと大地を喰らう巨竜。


『変わらない。何一つ生命の環から外れていない。なんと懐かしきか』


 大海原を稲妻のように進む蛇。


『生命の探求者――ただしく【旅人】である』


 堕ちた隕鉄を中心に渦巻く伽藍。


『モフモフは嬉しい。父祖たる大狼が求めし者だ』


 雄々しき巨漢。盲目の少年。雪の女帝。薔薇の花嫁。仮面の老賢人。


『原初の記憶にあるように草原を駆ける足になり、森を踏破し、同じ血肉を食み、苔の枕で共に眠る』


 そして自分は、いつもの外套に身を包み、岩を削るための杖を持ち、腰にはヤドリギを容れた革袋。手には灼熱から生まれた手甲をはめ、白い少女からもらった思い出のカンテラに火をともしました。

 隣にはそう、溌剌に足元に絡みつく狼。


 名前は――


『モフモフは共にあるぞ。共にあると決めた』


 ――瞬間、夢が醒めたかのように記憶は失われていました。

 精神干渉、ではありません。


 覚えていませんが、音も、感触も、匂いまで、確かにありました。

 術式では再現できない、現実じみた感覚です。


 まるで、そうですね。魂というものがあるとして、魂の記憶を追体験したような、いわく言いがたいイメージの奔流でした。

 一体、何が起きたのでしょうか?


『隣り合い、寄り添い合い、探しながら歩もう同胞よ』


 黒い瞳はまだ自分を眺めていました。


 これらが何の意味を持ち、何をモフモフが言いたかったのかわかりません。

 ですが、不思議な納得が胸の中にありました。


「ただでさえ教師生活が忙しいというのに……」


 一度、深くソファーに沈みこみ、術式で作った水を喉に流しこんだ後で立ち上がりました。


「そのうえ、明確な答えも返していませんよ?」

『答えられない以上、同胞が自らでたどりつかねばならぬ。が、どちらにしても守護者は話す気がないようだ』


 難儀な話です。


「とりあえずご飯にしましょうか。自分は食べてきたのでモフモフはありあわせでいいですね?」

『問題ない』


 無意味にモフモフを撫でてみたら、すごかったです。

 手が、手が沈みこみます。なんだこの柔らかさは。

 一瞬、身体がどこにあるかわかりませんでした。


 この毛を織ればちょっとしたハンカチでもできるんじゃないでしょうか?


 モフモフハンカチ。

 やんごとなき奥様方に売れそうです。


 手遊びに生徒たちがモフモフを撫でているのはこのせいですか。

 特にセロ君は沈みこもうとしますからね、モフモフの毛に。


『ご飯……』


 呟かれて正気に戻りました。

 さすが【神話級】原生生物の身体です。一味違いますね。


 妙な戦慄を覚えながらモフモフの餌の用意を始めました。


 そして次の日です。


 今週の通常授業が終われば生徒たちは【長期休暇】に入ります。

 自分が会議でもぎ取った10連休です。

 生徒たちは【試練】を行ったとはいえまだ完全に技術や知識を己のものにしていないので、この10日は生徒たちなりに技術を消化させる自己鍛錬の時間、という名目で力強く熱弁しました。


 別に自分が10連休、欲しかったわけではありません。

 何故なら、この10連休の間、教師はいつもどおりに出勤ですからね。


 仕切り直しの意味合いと、次の学習要綱の教本造り。

 様々な確かめのための、冷却期間です。


 そして今も確かめの時間です。

 放課後、セロ君を連れて学園長室に行こうとした時のことです。


 ただ――


「セロ君?」


 ――ものっそい不機嫌なんですけど?


 一緒に歩いていてもツンツンして、ぷいっと顔を背けたままでした。


「なんですかっ」


 話しかけると火の粉が飛ぶくらい尖っていました。

 この豹変が一体、どうして始まったかなんてすぐにわかりました。


 自分の腕にレギィからもらったブレスレットがついていないからです。


 昨日の話し合いの時でした。


「ヨシュアン。左手を出してください」


 言われ不思議に思いながらも左手を出すと、すり抜けるようにブレスレットを取られました。


「パルミアの誓いは少し、待っていてもらいます」

「で、このブレスレットはなんなんですか? 周囲の反応が異常なんですよ」

「それは……」


 少しだけ溜めを置いて、レギィはブレスレットを握り締めました。


「婚約の証です」


 なんですと?

 思わず立ち上がりました。


「女性からブレスレットをつけてもらうことは、その女性に変わらぬ永遠の証を約束する支度をしているとされています。パルミアに贈り物をしようとした男性にパルミアが決して違えない約束の品として贈ったのが最初とされています」

「……そんなもん知らねぇ!」


 素で叫びました。

 つまり、アレですか?

 レギィは知らない自分をそそのかして、ブレスレットをつけさせたと。


「だから、ブレスレットを破棄することは婚約の破棄を意味します」


 それで生徒があんなに騒いでいたんですか。

 つまり、あの時。

 術学の実践【試練】の時、自分はレギィをフろうとした、ということになります。

 いえ、すでにフったんですが、人目があるのとそうでないのではまるっきり重さが違います。


「ヨシュアンも悪いんですよ? 大事なことなのに知らないだなんて」

「その知らない相手に騙し討ちしたレギィはなんなんですか!」

「……だって、夢だったのです」


 しおらしくされても! 指を弄りながら言われても!


「例え知らなくても、例えその気持ちがなくても。好きな殿方と少しの甘い夢を見たかったのです」

「いやいや、知らないままだったら普通に結婚させる気だったでしょう?」


 ちょっと舌を出していました。

 あぶねぇです。何考えてんだ。

 

「ヨシュアンは約束を守る人ですから、きっと無碍にはしないと。そうした算段がなかったとは言いません」

「その算段しか見えてこねぇんですよ」


 なんてこと考えてやがりますか、この白いのは。


「……二度と騙し討ちみたいな真似は止めてくださいね」

「はい。残念ですがやはり、まだちゃんと踏みしめる部分を固めていなかったと今では思います。それにプルミエールのこともあります……」


 プルミエールを放置したままで浮かれていられない、ということですか。

 反省するべきところはちゃんとしますからね。

 今まで色々と口に出さなかったことが悔やまれます。


「でも約束は覚えていますか?」

「何のです?」

「この1年で一緒に幸せになってくれる人が見つからなかった場合、私とのことをちゃんと考えると。私の想いを受け入れてくれると」


 あれ? 約束の内容が変わっていませんか?


「考えるだけですよ? 受け入れるわけではないのでそこんところはちゃんと約束しましょう。今回みたいに騙されたらたまりませんからね。後、幸せの形は人それぞれだと思うんですかどうでしょう? 結婚だけが全てじゃないと思うんですよ」

「私ももう、適齢期を過ぎてますから」


 自分の責任じゃないですよ、それ!

 と、言っても通用しないんでしょうね。


 結局のところ、こうして話し合おうとしなかった自分にも原因があるのです。


「ところでアンクレットももしかして……」


 レギィは少し首を傾げていましたが、何かを思いついたように一つだけ頷いて、


「アレは『おまじない』です。ブレスレットほどの意味はありません。女性がつけると『素敵な男性以外は近寄れない』というものです」


 何故かイタズラじみた笑みで答えました。


 確かにリィティカ先生も『男避け』に同意していた節がありました。

 リィティカ先生が嘘をつくはずがないので、レギィの言うことも一理あります。

 何より、生徒たちはブレスレットに反応してもレギィのアンクレットには反応していませんでした。


 『男避け』というのは本当なのでしょう。

 問題はその内容でどうやって男を避けるのでしょうか?


「ただの女の子の『おまじない』ですから、ヨシュアンは気にしないように。もちろん、普通の女性にそんなことを訊ねるのはマナーが欠けていると思われますから、聞いてはいけませんよ?」


 何故、迫力を出しているのかわかりません。


「あと……、どうしてヨシュアンの周りはいつも誰かしらの女性の影があるのですか」


 特に意味のない怒られ方をしたのを覚えています。


 ともあれ、こうした事情もありブレスレットはレギィの手にあります。

 しかし、そんな事情をセロ君は知らないわけです。


 前々から感じていましたがどうやらセロ君は自分とレギィをくっつけたいようです。

 理不尽な怒りでもありますが、セロ君なりに自分を心配してと思っておきましょう。


 とはいえ、このままセロ君の怒りにさらされているのも心臓に悪いのでなんとかしましょうか。


「セロ君。先生とレギィは別れたとかそういうものではありませんよ?」


 そういうとセロ君は途端にこちらを振り向きました。

 そもそも付き合ってもいないので別れるも何もないんですが。


「ほんとなのですかっ?」

「お互いがお互いのことをちゃんとしていなかった今までがありましてね。色々あって、少し冷静になろうと思いましてね。特にこの学園生活では考えないようにしようと話し合ったのです」

「……わからなぃのです。好きな人は好きな人同士でいっしょになれたら幸せ……、と院長様はいってたのです」

「人それぞれですよ。確かに幸せでしょうが、片方だけの想いだけでは両想いになれないのと同じです。お互いの目線を合わせることも必要ですし、時には違うところも見ないといけません」

「……おとなはむずかしぃのです」


 難しいですよ、本当に。

 少なくとも子供の頃のような無邪気な心で慕うことはできません。


 相手の立場や在り方を尊重しながら大事にし過ぎて、無理をさせてはいけないと逃げてしまうことだってあるのです。

 それが余計に火をつけることもある……、本当に女の人はわかりませんね。特にレギィは。


「心配させましたね、セロ君」

「ぁぅ……」


 何より頭を撫でてやると幸せそうにするこの子をまず、立派にしてやらないといけません。


 学園長への説得はとりあえずうまくいったとだけ言っておきましょう。


「という具合に白の適性者が感情を高ぶらせた場合に、術式具のON/OFF機能を触ると暴走が起きるようです。ですが、これはまだ白の源素について制御すらできなかったセロ君だからこそ起こったことです。こうして今は物理結界に成功しており、白の源素の制御を可能にしています。今後、故意の暴走以外はありえないと証明できます」


 実際に学園長の前でセロ君が物理結界を使い、学園長は納得の色を見せていました。

 全部、知っていて頷いていたのか、それとも自分に任せたのかまでは謎ですが、どちらにしろ反論もほとんどなく、参礼日の術式具造りは認められました。


「もちろん、管理は厳重にお願いしますね」


 と、釘を刺された程度で良かったというべきでしょう。


 セロ君は仲間はずれにならずに済み、エリエス君も興味の対象に打ち込めるのですから最良の結果だと思います。


 問題はセロ君を帰してからでした。


「学園長にお聞きしたいことがあります」


 学園長はセロ君を前にしたときとなんら変わらぬ穏やかな顔でした。


「学園長は今回の事件について、どう思われますか?」


 今回の件、つまりプルミエールの事件ですが、実行犯に目が向きがちになりますが、もう一つ、気になることがあります。


「自分たちがレギィに資料を渡す際、学園長に全ての資料を提出していたはずです。全ての教科が改竄されていたとなると時期は学園長に資料を渡してからレギィの手に渡るまでの短い期間に行われていたはずです」

「そうですね。管理は厳重とは言い難いのですが、ここにはテーレもいました」

「学園長は本当に何も知らないんですか?」


 少なくとも学園長が犯人なら可能な事件です。


「そうですね。お疑いのようですからハッキリと言いましょう。私とテーレは改竄の件について、まったく知りませんでした。鍵をつけていたわけでもありませんので盗ろうと思えば盗めたと思いますよ。ただ、私とテーレが学園長室を出る時間はそう多くありません」


 嘘をついているような素振りはありませんが、そもそも学園長相手に嘘か本当かを正しく見抜けられるかどうかも怪しいですね。

 ただやはり嘘はついていないと思います。

 何よりも改竄したのなら真っ先に疑われるのは学園長です。


 この策士も裸足で土下座する老婆がやるにしては味気なさすぎです。

 この老婆なら平然と他人に罪を擦りつけるくらい、やってのけるでしょう。


「学園長が犯人でないと仮定して、犯人は学園長のいない短い期間を狙って、素早く資料を入れ替えられる相手となり、なおかつ『そこに居ても不自然でない相手』となるとやはり……」

「そうですね。誠に遺憾ながら居るようですね」


 学園長も教師の中に犯人がいると思っているようです。


「ですが、気をつけなさい。今回の件、私が知る限りでは3つの勢力が関わっています」


 3つ?

 あの事件に3つも?


「1つは資料を改竄した組織。1つはプルミエールを唆した組織。そして最後に……」


 この2つは理解できます。

 複数犯の可能性も考えていました。

 この2つが同じ目的で動いているのなら、足並みくらい揃えるでしょう。


 実に厄介な展開になってきたようです。


「魔獣信仰の組織が何やら蠢いているようです」


 魔獣信仰?

 聞いたことのない言葉が学園長の口から飛び出してきました。


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