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リーングラードの学び舎より  作者: いえこけい
第三章
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ちいさな勇気、大きな修羅場前

 【室内運動場】に向かいながら、あくまで普段通りの顔で自分は考えていました。


 レギィのことはひとまず、後回しにできたのは僥倖だったでしょう。

 学園長にも散々言われていますが、仕事中に私事にかまけていてはいけません。


 というか仕事中に修羅場迎えてどうするんですか、自分。

 ありえないでしょう? というかありえないですよ自分の仕事観的にも。


 向かい合う以前の問題だったので軽く欝になりそうでした。


 正直、誰もいなかったら部屋でピタゴラスイッチを作っていましたよ。

 あの無駄かつ無意味に効率的な機能性で心を癒しているところです。

 しかし、当然というかなんというかそんな暇はありません。


 男子生徒たちの【健康診断】があります。


 【健康診断】は【室内運動場】で行われます。

 本当はどこかの空き部屋でやろうという話だったのですが、人一人が女医さん(36)に看てもらうスペース、リィティカ先生に採血されるスペース等を配置していくと、少し手狭になることがわかりました。

 実施場所は広くてもいいからゆったりとしたスペースの取れる【室内運動場】が選ばれました。


 一番の候補地は【教養実習室】だったのですが、あそこは性教育の講話に使われます。


「しかし、あの調子でレギィは大丈夫でしょうか?」


 女子側の説法をレギィが、性科学の分野をシャルティア先生が担当しています。


 レギィもあれで【タクティクス・ブロンド】ですから仕事に支障をきたすとは思えませんが最近、頓に不安定でしたからね。

 焦っていたような、もどかしいような、そんな所作が少し見て取れました。


 まさか婚期を焦っていた、なんてことはないですよね?

 ……ないですよね?


 他にも職員室に帰った時にシャルティア先生を見つけて釘を刺しておいたので、過激なことは言わないと思いますが……、不安でたまりません。

 次の日から生徒たちが男性不信になっていたら、軽く旅に出れますね。海を越えましょう。


 ともあれ、どちらも大丈夫だと信じておいたほうが精神衛生上、よろしそうです。


 こちらはこちらの仕事をきっちりして、それからレギィと話し合いましょう。


「はっ! ヨシュアン大先生!」


 フリド君が直立不動の敬礼をとっていました。

 あとはティッド君とキースレイト君ですね。


 後ろから気配がしていたから生徒がいるとはわかっていましたが、大先生?


 キースレイト君を見ると、少しため息をつきました。


「例の授業で感銘を受けたそうです。確かに興味深く、あぁして聞くまでは何故、下卑た話を聞かねばならないのか理解できなかったが、なるほど。疑問というのはどこにでもあると理解できました。自然に成る木にも、そこには我々の知らない理がある。そう知らされた授業でした」


 どうやらキースレイト君はあの授業の本筋をきちんと把握しているようです。


「女を知り尽くしたヨシュアン大先生の授業は非常にタメになりました!」


 これは挑発されていると取るべきでしょうか?

 でも純粋な尊敬が見て取れるので、非常に殴りづらいですね。


「えっと……、子供を作ることは大変なことなんだと思いました」


 ティッド君まで感想を言ってくれました。

 ですが、感想会じゃないので無理に言わなくていいんですよ?

 授業内容を思い出して、戸惑わなくていいんですよ?


 ティッド君くらいだと戸惑いのほうが強いようですね。

 性教育がある程度の年齢にならないと行われないのも頷けます。


「先生も知らないことが多いですからね。日々、精進ですよ」

「三人も女性を囲って、別れ話を切り出すヨシュアン教師は言うことが違いますね」

「違います」


 昼の話がもうすでに噂になっていました。

 あの場にはキースレイト君はいなかったはずですが?


 あぁ、ヘグマントクラスの子がいましたね。

 となるとその話はフリド君経由ですか。


 とりあえず笑顔で睨んであげるとフリド君は汗を流しながら、引きつった笑いを浮かべていました。


「レギンヒルト試験官とは少し長い付き合いでしてね。男女交際的な意味ではありませんよ? ともあれ、少し意見の食い違いがあったんですよ」

「……【タクティクス・ブロンド】たるレギンヒルト卿と?」

「人の繋がりは神様の銀細工、ということです」


 奇縁はどこにでもある、ということですね。


 実際に奇縁なのでしょう。

 自分とレギィは。


「さて、早く【室内運動場】に入りなさい。もう始まりますよ」


 それぞれが返事をして、自分を追い越し、【室内運動場】に入っていきました。

 自分も後を追うように入ると、様変わりした【室内運動場】の様子がありました。


 布で区切られた、それぞれのパーテーションが並ぶ様子はまるで出店のようでした。

 各項目ごとにそれぞれの診断が行われます。

 もっともパーテーションの数も限られますから、複数の項目を一緒くたにしているところもあります。


 例えば身長、体重は一緒のパーテーションですね。


 特に体重計はかなり場所を取ります。

 何せ基本原理がてこの原理です。ようするに天秤ですね。


 一本の棒を地面と水平に垂らし、片方に人が掴める取手があります。

 もう片方には何もありません。

 これは片方に重りを垂らすためです。

 そして重りを中心部から外側に移動させることで一つの重りで効率的に計測できるわけですね。


 この重りはリスリア王国の施行法で定められた石ブロックが使われます。

 

 三種類の重さを用意しているのでセロ君のような超軽量級でも測ることができます。


 もっとも精密とは言い難いですがね。

 もっと精密に計測するなら、このやり方よりも金を測る天秤が一番なのですが、人間サイズの天秤はちょっと保管に困ります。

 いつか術式具で体重を測る方法を見つけるべきですか、ね? それともバネ秤を作るか。どちらにしても選ぶのなら自分は術式具を選びたいものです。


 運動場内を見ながら、壇上あたりに向かうとヘグマントやアレフレット、ピットラット先生が待っていました。


「生徒たちは集まっているようなので、始めてしまいましょうか」

「うむ! 予定通り、右側と左側で分かれて検査するのだな!」

「えぇ、全員で順序通りにする必要もないですからね。時間短縮も図れますし、診断で得た数値がどういう意味を示すのか生徒たちに説明しないといけません」


 本鈴の合図まで少ししかありませんが、それでもさっさとやってしまうに越したことはありません。


 すでに集まっている生徒たちにその旨を伝え、健康診断スタートです。


 もちろん教師も計測に参加します。

 ヘグマントは身長、体重の計測。頭髪検査と虫歯の確認はピットラット先生、視力の測定はアレフレットです。


 女医さん(36)は皮膚から麻疹の確認、また栄養の偏りがあるかどうかの確認をします。

 現在、病気にかかっているかどうかも女医さん(36)の仕事です。


 自分は骨格の精査です。

 ついでに成長痛があるかどうかもそうですね。


 こうしてみると結構な人員がいますね。

 女子側はさぞ人が足りなかったかと思うでしょうが、レギィが何人か従者を連れてきていたので、足りない人員をカバーしていたという話です。


 そして、最新の検査として採血と血液検査担当がリィティカ先生です。

 嬉しいことに自分のパーテーションの隣ですよ、えぇ。

 ちょっと布をめくればリィティカ先生に会える。ドキドキしますね色んな意味で。


「お疲れかもしれませんが後半もよろしくお願いします、リィティカ先生」


 さっそく布をめくってリィティカ先生を労ってみたり。


「はいぃ。だいぶ注射にも慣れてきましたよぅ」


 にこやかに返事をしてくれるリィティカ先生は女神の美しさがありました。

 たとえ、採血台に少し血らしきものが付着していても神々しいですね、えぇ。


 ん? 少し気になったことがあったので、注射器を見てみました。


 注射器と針。その両方に汚れはありません。

 しかし、採血台には注射器と箱くらいしか置いていません。


「……もしかして針は使い回しですか?」

「はいぃ、もちろんですぅ」


 ちょー怖ぇです。

 え? あ、そうか、予防医学!

 医学がごちゃまぜだって自分で考えていたじゃないですか!


 いくらリィティカ先生が素晴らしき叡智の結晶でも針の使い回しの危険性まで気が回らないのか!


「えー、針の予備はありますか?」

「今使っているものを含めてぇ、全部で三本ですよぅ。すごく高い器具ですからねぇ」

「……早く言っておくべきでした。実は注射器が使用されるようになってから度々、感染源のない病気が流行ったことがあるのです」

「ふへぇ?」


 針に付着した血液が感染源だったのです。

 判明してから、針を消毒するなどの対処をしたようですね。

 それまで被害者はどれくらい居たのでしょうか? 


「注射器の針を媒介に感染していたんですよ。できれば拭き取るだけではなく、消毒しておいたほうがいいと思います。消毒液はありますよね」

「えぇ? はいぃ、何かあった時のために持ってきてますぅ」

「予備の針を消毒液に浸して、一回使用したら漬けたものと交換する方式にしましょう。針の内部の血を抜くのにも使えると思います」

「そうだったんですかぁ……、知りませんでしたぁ」

「いえ、そもそも連続で針を使用するケースをリィティカ先生も考えてなかったわけですから」


 と、言ったもののすでに女子生徒たちは採血が終わっています。


「そうですよねぇ、血液を媒介にする魔薬や病気があるのならぁ、思いつくべきでしたぁ……。考えてみればものすごく危ないことなんですよねぇ……」

「自分ももっと早くに気づくべきでした。申し訳ありません」


 これは本当に気づくべきでした。

 注射の練度がこちらとあちらで差があるということを気づけるのは自分だけです。

 となると、自分の不注意が生徒を危険にさらしたことになります。


 それだけではなく、血が混じっているのなら検査薬の効果が疑わしくなります。


 最悪、女子生徒だけ採血のやり直しになります。


「採血をやり直すかどうかは後で確認しましょう。幸い、検査薬は流行病の反応を見るものです。一人も反応がなければ問題はないはずです」


 問題だらけですが、前向きに考えるしかありません。

 正直、リィティカ先生の検査そのものが最新です。まだ手馴れていない最新医療の問題点に気づくなんて難しいなんてもんじゃないですよ。

 未来予知に等しい所業です。


 リィティカ先生がさっそくビーカーの中に消毒液を注いでいました。


 そうこうしている間に自分のパーテーション前から気配がします。

 どうやら順番が回ってきたようです。


 最初はフリド君でした。


 イスに座らせて、背中を向けさせます。

 そして指で皮膚の上から骨を押しながら、波紋のように源素に干渉させていきます。

 源素操作で源素の滞りを知るために使われる技術で、主に隠し扉を見つけるのに使われます。


 この技術は特に名前があったわけではありませんが、自分はハッキング操作の修行によく使っていました。


 人体に使えば、内源素の流れが悪い部分を見つけることもできるでしょうが、その反応は微弱でどのように悪いかどうかも不確か、そのうえ自分でも神経を使わないと感じ取れません。


 微細な感覚をつかむために少し集中しながら、骨付きを確認、


「最近、何もしてないのにどこか痛むことはありませんか?」


 成長痛の有無を調べます。

 これも源素の波形で調べることができますが、問診の方がてっとり早いですね。


「ただの筋肉痛だと思うのですが、運動していなくても次の日の朝に右足が少し痛むことがあります!」

「それはフリド君の成長が少し早いからですね。骨が伸びているのに筋肉がまだ追いつかないから起こることです。身長が伸びている証拠ですよ。ですが、そうした不安定な時期ほど危ないとも言えるでしょう。特にそんな状態で無茶をするとより酷くなることがあります。しばらくは運動する前に入念な準備運動をすること。いいですね」

「はい。ありがとうございます!」

「指や手首、肘、股もです。もしも、そうした部分が右足のように痛み始めたらすぐに女医さん(36)の元に行きなさい」


 成長痛は場所によっては危険な場合もあります。

 それが腕や股関節の成長痛です。


 特に股は膝辺りまで痛く思うほど、強い痛みを覚えます。

 指や肘は曲げるのが辛いと感じるようになります。


 そうなると日常にも支障をきたすようになり、授業にも集中できなくなってしまいます。

 【健康診断】で骨格の精査と成長痛の項目を入れたのは、こうした成長痛を前もって発見するためだったのです。


 こうして、しばらく生徒の様子を看ていると、そこそこ肉付きが良いですね。

 成長過程だから、というのもありますがヘグマントの教育によって筋肉がついてきたのでしょう。

 他にも体格が大人になろうとしているのもあるのだと思います。


 だから年長組でも、まだまだ子供の柔らかさを残していますね。

 年少組はもう少ししないと筋肉が隠れたままです。


 骨格の歪みを持つ子はいませんでした。

 数名、フリド君と同じように筋肉の引きつりや違和感を覚えている子もいましたが、ちゃんとアドバイスをしましたよ?


 成長痛は結構、大変ですからね。


 しばらくすれば十五人分、あっという間に終わってしまいました。

 割と検査をしていると時間は早く感じられますね。

 集中しているせいでしょうか?


 もっとも、その集中すら途切れさせる出来事が度々、起きましたけどね?


「ぎゃー!? 先生! リィティカ先生ぇ! 針をグリグリしないで殺されるー!?」

「あ、あ、動かないでぇくださいぃ。静脈が逃げてしまいますよぅ……」

「血が、血がー!? やだー!?」


 隣でこんな会話というか叫び声が聞こえてくるからです。

 生徒には注射器の効果と使用方法を前もって教えておいたつもりなんですけどね。


 リィティカ先生は注射器に慣れても、静脈を狙って綺麗に刺すまで手馴れているわけではないようです。

 数をこなさなければならない技術ですからね。

 それまで被験者には我慢してもらうしかありません。


 この分だと女子はもっとひどかったんじゃないかと想像すると……、あれ? 何故かクラスの子たちから責められる絵が浮かんできました。

 なんで自分が怒られるんでしょうか、不思議な予想です。


 それらが終われば、生徒たちを集めて説明会です。

 なんか泣いてる生徒は、絶対、リィティカ先生の手腕ですね。


 腕の内側に貼られたガーゼが痛ましい。


 ここはリィティカ先生に助言しておきましょう。

 もしも授業で言うことを聞かない子がいたら、注射器を見せるといいですよ、と。


 若干、幾名かの生徒にトラウマを植えつけた【健康診断】ですが、検査結果の総合は女医さん(36)がしてくれるでしょう。


 結果待ちなのは女子も男子も変わりません。

 予定通り、ここらで【健康診断】のそれぞれがどういう目的で行われたかを説明し、そして終わりました。


 今回の【健康診断】で色んな経験をした生徒たち。

 その反応が知りたい教師陣は当然、感想を書いてもらおうと思います。

 つまり、レポートのお時間ですね。


 生徒たちを連れて学び舎に戻り、一度、それぞれの教室に向かいます。

 すでに教室の中から気配がします。

 五人分あるということは、ちゃんと戻ってきたようですね。


 教室のドアを開けると、机の上で指を組んで頭をもたれさせたクリスティーナ君。

 あまり変わりない様子のマッフル君とエリエス君。ちょっと茫洋としているセロ君。

 そして、妙にテンションが高そうなリリーナ君はクリスティーナ君とマッフル君の机の前で何やら喋っていたようです。


「さて、席に座ってくだ――」


 言いかけた自分にリリーナ君がくるりと翻ったと思ったら、突然、右腕にしがみついてきました。

 そしてウルウルと目を潤ませて、じぃっと上目遣い。


 何してんだ、この不思議生物。


 物欲しそうだったのでその額に出席簿をくれてやりました。


「いたー! であります!」

「何をしているんですか? リリーナ君」


 反射的に腕を離してしまったリリーナ君に訪ねます。


「男を落とすテクニック実践編であります」

「よし、君たちが何を聞いたのか、ちょっと詳しく語ってくれませんか?」


 シャルティア先生、おい。

 実践的な教えをしろとは言ってませんよ、むしろそういうのを止めてくれと言ったんですよ。


「ムラムラしたでありますか?」

「イライラしましたね。で、クリスティーナ君はどうしてあんなに落ち込んでいるんですか」

「なんか色々と衝撃だったので凹んでいるであります」


 恥ずかしくて聞けなかったけど、聞いているとだんだん想像してあの調子にまで凹んだというわけですか。

 幼い頃から教養が身についているため、感性も磨かれているのでしょうね。


 そう言った意味ではティッド君と同じ反応をしていたということです。


 とりあえず絡みついてくるリリーナ君を外しておきましょう暑苦しい。


「マッフル君はちゃんと聞けましたか?」

「んー? ま、親父の話を聞いてるとさ。なんとなくはわかるじゃん」


 娘になんて話をさせているんですかグランハザード。

 いえ、それもグランハザードからすれば一種の性教育なのかもしれませんね。

 でもお母さんは止めなかったのでしょうか?


 そしてエリエス君。

 エリエス君を見るとすぐに意図を察して、立ち上がりました。


「人の営み、その詳しい様子を聞きました。男を落とす手管というのがどれほどのものか効果がわかりません」

「それは好きな人ができてから試してみましょう」

「……即座に試せないのが難点です」


 恥ずかしさ以上の知的好奇心とかすごいですね。

 ある意味、この子の理性の鎖は知的好奇心が源なのかもしれません。

 若干、暴走するところはありますけど。


 そして最後はセロ君です。

 茫洋とした顔をしているので目の前で手を振るとハッと自分を見て、


「ぴぃ!」


 と鳴きました。

 えええええ? 先生、かなりショックなんですけど?


 自分だったと理解したセロ君の瞳に理性の輝きが戻ってきました。


「ぁぅ……、せ、せんせぃ?」

「なんでしょう」

「せんせぃも、あんなにしばったり、ぃじめたりするのですか……?」

「シャルティア先生ぇー!?」


 響き渡るような声が出ました。

 年少組もいるんですから気を回してくださいよ!


 あえて、ですよね? 絶対、あえて教えましたよね?

 何? そうしたほうがシャルティア先生的に正義ですか? 性技を教えてどうすんですかマニアック方面の!


 絶対、後で問い詰めます。

 きっと丸め込まれるような気がしますが、絶対です。


「も、もしかしたらいじめているような感じに見えなくはないでしょうが、愛あってのことですよ? 愛。すごいですね愛。お互いがお互いを認め合って、自分のことのように受け入れるからできることです。だから別にいじめているわけじゃないんですよ」

「……そぅなのですか?」

「そうなのです」


 若干、不安な答えでしたかこればかりは仕方ありません。

 答えなんてあってないようなものです。


「いつかセロ君が誰か受け入れてもいいと思ったとき、怖さよりも相手を想うと良いですよ」


 落ち着かせるようにポンポンと頭を撫ぜてはいましたが、自分に言い聞かせている節はありました。


 何せ放課後には、レギィと向かい合わなければなりません。

 覚悟を決めねばなりません。


 困難に向き合う覚悟を人は勇気と言います。

 人に勇気なんて言われたら、どうしょうもないものだと斜に構えてましたが、ですが、本当に厳しい何かと面と向かった時。

 例え他人に大したことがないと思われようがやはり、その気持ちを勇気というべきなんでしょう。



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