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リーングラードの学び舎より  作者: いえこけい
第三章
141/374

復習をしてみよう

 レギィを連れて学園長室に入ってからというもの。

 レギィと学園長は何やら面倒な手続きの話をしています。


 自分はあまり関係ないので、聞き流しながら考えごとをしていました。


 これはもっとも重要なことです。


 どうして元老院派に所属するレギィが貴族院が仕切るはずの【貴族院の試練】の試練官として現れたのか、です。


 レギィに限って貴族院に寝返ったということはありません。

 彼女は『貴族の怠慢のせいで内紛が起きた』ことを昔から悔いている節があります。

 懐古主義者の巣窟に尻尾を振るようなことだけはありません。


 中立派の元老院にわざわざ借りを作るような真似を、崖っぷちの貴族院がするでしょうか?

 中立派を送ることで政治スタンスを明確にさせたかった?

 いやいや、それはかなり薄い線です。


 表向き、貴族院は『義務教育なんて訳のわからないことには手放しに賛同しかねる』というスタンスです。

 だからこそ、試練という形で王の発案に待ったをかけたわけです。


 なんでもかんでも王の言うことを実行していたら、国が滅びます。

 バカ王のバカげた発案が通る時はいつもゲリラ敢行ですからね。


 元老院の表向きは『義務教育? 儂らもう死ぬし関係ねーわ』ですね。

 元老院も元老院で内紛の時に自分たちが育てた子供たちがアホをしたことについて、ため息ですものね。


 元老院はジジイ世代、内紛で死んでいった貴族そして貴族院が父親世代。

 そして自分たちが孫世代と考えてみると、なんとなく全体像が見えてきそうです。

 よくある世代のギャップというか、噛み合わない歳の意識差というか。


 リスリアにおいてこの三代の関係性を単純に表すと、優秀だったジジイ世代から生まれたダメダメな親父世代はクソッタレで、会社をダメにしてしまったので孫世代に糾弾されて蹴落とされた、というべきでしょうか?


 軍閥はベルリヒンゲン老から聞いたところ『優秀な次代が生まれるなら見過ごす!』という感じでした。

 見過ごす代わりに人材をよこせ、と言ってきたのはいつものことです。


 全体的に義務教育に対する反応は薄いのです。

 しかし、裏向きにするとかなり劇的な変貌を見せます。


「つまり、実際の教鞭を奮う様も見ておきたい、と?」

「実地でしかわからないことがあると思うのです。私はかつて内紛でそのことを痛感しました。私が貴族という立場と神官という立場で守られて、人伝でしか凄惨な内紛の姿を聞いてこなかった。意識が薄いまま、私は独りよがりの正論だけを振りかざしていました。その結果が私自身の預かり知らぬところで多く人を戦地に送り、より多くの人を傷つけてしまいました。愛すべき者、愛してくれる者たちの死や痛みを知らず、そうなることでどういう結果が生まれるのかを考えもせずに、ただ漫然とした安寧の中でです。それは人を導く立場にある貴族として、許されざる大罪と思っています」

「それは時勢もあるのでしょう。貴方を有用に使うのなら、当然の結果ではありませんか?」

「使われるというのなら、せめて私は私の知るところ、全ての責任を背負って歩いていきたいのです。それが、無為に殺してしまった人々への償いであり、今ある貴族としての責任だと思っています」


 何故かこちらを見てきたレギィに肩をすくめておきました。


 間違っていると知らされなかったから今を問いかけるレギィ。


 今ある自分が間違っていなかったのかを問い続けている自分に、是非を問う権利はないのでしょう。

 その正しさが例え、たくさんの人を殺したかもしれなくても。

 その正しさを責める権利だけは自分にありません。


 何故なら、彼女は実際に誰も殺していなくて、自分は多くを殺してきたから。


 なので、自分はレギィの言葉をただ聞き流しました。

 考えるべきは他にありますものね。


 まずは貴族院。

 裏向きの理由は『義務教育なんぞクソくらえだ』のスタンスです。


 理由は平民の知能指数を引き上げることで、今ある特権を奪われかねないということに対する危惧です。

 ただでさえやり手の商人は貴族も恐れずに権利を貪ろうとしますから、そんな商人みたいな人間が増えるのは困るという考えでしょう。

 国民は無知のほうが扱いやすいというのも理由でしょうね。


 元老院の裏向きは『教育制度の変更によって我々の利益になる部分はどこだ』という点です。

 リスリアの知識の一部を担う元老院は、この知識をどこまで放出し、どこまでを制限すれば利益になるのかを考えています。


 また教育の元となる教本を利用し、思想的な掌握すら企んでいる可能性もあります。

 この辺はレギィが義務教育をどう思っているかで、元老院の思惑をある程度は留まらせられると思っています。


 軍閥。これは正直、裏表がありません。

 ベルリヒンゲン老がベルリヒンゲン老ですからね。

 ただ、義務教育が始まったら軍学校を併設したいとは考えているようです。

 これにより愛国者が増えれば、ひいては国力にもなります。


 洗脳教育が始まりそうな予感がしているので、個人的には怖いですね。

 ようするに軍閥は『義務教育』を利用しようと考えています。


 大まかな派閥の考えと方向性はこんな感じです。


 ただ、細かな派閥。

 例えば南部、北部の思想の違いやら政治的な駆け引きを考えると、頭が痛くなりますね。

 ほとんどが中立派にいるように見えて、こちらの趨勢を見極めているのが大半です。


 きっと勝敗がわかれば、あっさりそちら側につく算段を取り付けるでしょう。


 転がし方次第で、どう転ぶか。

 今のところはこの試練をクリアすることで、どう変化するか。

 この辺が今後のポイントになるのではないかと思います。


「わかりました。その熱意と真摯な気持ちはよくよく聞かせていただきました。幸い、特に定められていなかったところではあります。授業の参観を認めましょう」

「ありがとうございますクレオ学園長」

「試験範囲についてはご存知で?」

「はい。こちらは学習要綱の定めるところを基本に、これから実地を見てどうしようかを検討します」

「参考資料をお渡ししますので、思索の一助としてください」

「重ね重ね、丁寧な対応を。クレオ学園長の配慮には頭が下がります」

「こちらも学園の――いえ、若人たちの未来があります。道の先へと進む子らを我々が妨げていい理由もありませんよ」


 今の若者も大事にしてほしいですね。

 特に自分のことです。


 学園長はわりと自分に無茶なことや妙なことを押しつけたがりますから。


「――ヨシュアン先生?」


 自業自得な面もあるので、学園長に強く出られないのもあるんですよ。

 なんか手玉に取られているようでマズいですね。


 なるべく学園長の手の内だけは知っておかないと。

 【戦略級】術式師としても、王派としても。


「ヨシュアン先生、聞こえていますか?」

「はい、もちろんです」

「それは良かった。ヨシュアン先生も了承してくれるそうです」


 ……え? ちょっと待った。

 今、了承って言いませんでしたか?


 すでに自分の知らないところで何かが決められているようです。


「さて、お互い積もる話もあるのでしょうが、ここから外に出れば他の教師たちにも貴方たちのことがバレてしまうこともあるかもしれません。お若い二人で話すことも多々あるのではありませんか」

「よろしいので? クレオ学園長にとって都合がいいだけとは限りませんが」

「国政とはそういうものですよ。それに歳のせいですかね。最近、耳が遠くなってきたのです。ちょうど、お二人の話が聞こえないこともあるでしょう」


 この言葉をどこまで信用すべきか、ですね。


 おそらく、自分がレギィに聞こうとしていることを見逃してくれる、という意味なのでしょうが。

 レギィへの配慮、というより自分に向けたものという意味合いも強そうです。


 ですが、レギィの持っている情報次第では、その限りではありません。

 

 学園長は裏付けが取れていない人物でもあります。

 だから信用できない、というのではなく逆です。


 こっちの無茶にも付き合ってもらっていますし、学園そのものに対しての攻撃――例えば例の暗殺者事件の時の対応もそうです。


 学園長は学園に関することのみ、確実に公平で信用に足ります。


 それに口だけは非常に固そうですから?

 たぶん口外することだけはないでしょう。


 口に出すくらいなら、今回のように利用するでしょう。


 一応、この場にいるテーレさんに目配せしておきます。

 テーレさんの【デッドリー・リー・サイン】による認識阻害を利用して、外から学園長室そのものを認識できなくしてもらいます。

 

 これにテーレさんが応じてくれたのなら、学園長の意向もわかります。


「わかった」


 ポツリと零して、テーレさんはドアの前に立ちました。

 認識できないということは、つまり、この部屋の声が外に漏れたとしても理解できないということです。

 完全な密室とも言えるでしょう。


 応じてくれた、ということは学園長は本当に黙っているつもりなのでしょう。


 おかげで学園長の立ち位置だけよくわかりませんが、敵でないだけマシだと思いましょう。


「それではレギィ」

「ヨシュアン? これは――」


 レギィはすこし室内を見渡します。

 何かが変わったことを敏感に感じとったのでしょう。


 この辺はすごいですね。

 さすがはレギィです。


 白属性は『干渉』。それは一方的に何かに作用するだけではなく、作用される何かにも鋭敏な感性を持たなければなりません。


 自分にはまったく感じられない【デッドリー・リー・サイン】の強発動を、レギィはかすかに感じているようです。


 でも、テーレさんの存在には気づいていないみたいです。

 自分はテーレさんの姿が見れて、レギィはその能力の強発動を感じ取れる。

 役割分担としては優秀そうに見えますね。


「気にしないでください。ちょっとしたおまじないみたいなものです」


 レギィは少し考える素振りを見せましたが、それでも一つ、頷くと気にしないでくれたようです。


 ベルベールさんもテーレさんも、【神話級】保有者の説明は他人には難しいですからね。

 説明が省けるのならそれに越したことはありません。


「レギィ。正直に答えてもらえると助かります。どうして【貴族院の試練】に貴方が試練官として参加しているんですか?」


 貴族院と元老院が手を組まれると非常に厄介です。

 なので可能性だけは消しておかないと。


「今回の『義務教育推進計画』の試練に関して、元老院は貴族院の依頼を受けて、一名を試練官として向かわせることにしました」

「何故です? 正直、元老院はともかく貴族院にメリットはないでしょう?」

「元老院のお歴々から聞かされた話では『我々だけではなく他の派閥からの派出ならば、より公平である』とのことです。根回しもなく、突然の依頼。元老院も少し揺れたようですね。慣例では、どちらかがどちらかに何かを要求するとき裏向きの何かが送られますから」


 それはただの癒着じゃないでしょうか?


「だからこそ『礼を失している』という主張や『慣例にないから手を出さない』との意見もありましたが、結局は貴族院に貸しをつけられると考え、踏み切ったようです」

「裏向きは? いくらなんでも怪しすぎるでしょう」

「様々な推測はできましたが、やはり弱っているというのが本音ではないでしょうか。貴族院の息がかかった者を試練官にし、不平な行動を取らせて足を取られるよりも正面からの、正々堂々とした方法を選んだのでしょう。少なくとも試練は貴族院にイニシアティブがあります。後がない貴族院なら焦って無理な行動を取るより、でしょう。この件で私が知る限りでは、ここまでです」


 筋は通っている。

 通っているので、逆に納得できません。


「そんなことはないでしょう! 確実に失敗に持ちこめないなら迂遠な方法をいくつも一緒に組みこむのがもっとも冴えたやり方です。本当にそれ以外ないんですか? 何か知っていて黙っていませんか、レギィ」

「本当です。私も不気味なので調べましたが、そうした動き以外は静観し続けています」


 レギィが来たことで貴族院のスパイが連動し、試練失敗への布石を打つ。

 こう考えてみたら、どうでしょうか?


「レギィが来たのは要請されてですか? レギィでなくてはいけないという話は」

「ありません。私が試練官となったのは……」


 少しだけ言いよどみましたが、それでもまっすぐ、自分の目を見て、


「私の意思です。私が試練官になると元老院に伝え、その要望が通りました」


 そんなわけあるか!

 と、大声に出してレギィに掴み寄りたい気持ちを殺しました。


 おかしすぎる。

 何のアクションもないなんて、ありえないでしょう?


 三ヶ月ですよ?

 三ヶ月もあれば何かしらの尻尾の一つや二つ、影くらいつかめます。


 王都に帰った時、一眠りした後から出発にかけてまでの短い時間でしたが、裏事情が少なすぎる教師陣のアレコレを問いただしてみたのです。


 ベルベールさんも調べた以上のことはまだ調査中だと言っていました。

 概ね、ベルベールさんからの書類は正しかったわけです。


 当然、ベルベールさんも妨害は考えられると思っていました。

 貴族院が何かしらの思惑を持ち、『義務教育計画』を潰したいと考えているだろう認識もまた、正しいのです。


 どちらも正しい場合、その多くはどちらかの間違いです。


 まだ時期じゃないから、静観していると考えるべきですね。

 なら、何を待っている? 帝国と共同して何かを画策している?

 いや、もしかしたら法国か? でも、それらを示す証拠はありません。


「要望? どうしてまた試練官なんかになろうと思ったんだ」


 貴族院からすれば、手助けしているようなものですよ?

 それなのに、それなのにレギィは何を考えているんですか。


「それは……」

「隠し事、あるじゃないですか」

「違います! これは隠しているわけではありません」


 レギィもまた貴族です。

 察しのいい貴族なら『義務教育計画』が最終的に何を目指しているかを理解できるはずです。


 その結果、貴族という制度は形を変える。

 今ある領土や領地を失い、権威はなくなり、貴族はただ土地を管理する役目だけの存在になる。


 王の持つ権威も同じです。

 最終的には憲法を頂点とした、立憲君主制へとシフトさせる。


 今代でできなくても、その芽は確実に植えてしまいたい。

 それが、自分が考えた貴族への復讐計画。


 情動を抑え、流す血を最小限にし、二度と内乱なんて起こらない国にするための方法。

 二度と、死ななくていい人が死なず、悲しんではいけない人が悲しまないための未来。

 二度と、誰かの傲慢や怠慢が痛みや哀しみへと繋がらない作戦。


 貴族への怒りを、憎悪を押し留めてでも、あの人のために苦しみながらもがいて、勝ち取りたいのです。


 いつか地獄に行くだろう自分が、せめて天国にいるあの人に胸を張れるようにと。

 間違いすぎた自分への、戒めとよすがです。


「隠していないのなら言えるでしょう? おかしいじゃないですか。貴族院なんかかばってどうするつもりだ! あいつらはなぁ! いや、お前らは――」


 『##やっt【検閲削除】××を――○#だ』。


 感情の坩堝から生み出された言葉が、明確な形になりきる前に歯を食いしばり、辛うじて沈みこませました。

 理性の鎖で何重も押し殺して、動悸すら激しくして、です。


 その言葉だけは辛うじて、口に出さずにいられました。

 その言葉だけは、絶対に言ってはいけない言葉です。


 それはこの世、全てへの侮辱だ。

 最大限にして最悪の侮蔑でしかない。


 被害者は、被害者だから文句が言えるんです。

 でも、もう自分は被害者ではない。


 立派な加害者で、立派な罪人です。

 そんな糾弾の言葉を口にする権利なんて、自分にはない。


「――なんでもありません。忘れてください」


 ましてや過去の自分の力の無さを誰かのせいにまで、できない。


 どっと疲れて、壁に体を預けてしまいました。

 レギィに言ったところでどうするつもりなんですか、自分は。


 彼女は何もしていない。

 彼女もまた、内紛に人生を狂わされた一人です。


「ヨシュアン……」


 レギィが立ち上がり、自分の正面に立ちました。

 あぁ、会わせる顔がないとはこのことですね。


 真正面からレギィの顔が見られません。


「貴方が、貴族の『私』を信じられないのはわかっています」


 レギィもまた、バカ王やベルベールさんと同じで自分のことを知っている一人です。

 内紛当時のレギィは王国側でしたが、それでも彼女は『敵』ではなかった。


「『私』が貴族という立場を捨てずに選んだのは――」


 彼女はいつだって正しかった。


「――貴方に、貴方と『私』がこうして」


 その細い手は穢れた自分の手に触れて。

 目の前で、両手で自分の手を願うように握り締めました。


「触れ合えると信じて欲しかったからです」


 きっとレギィは本当のことを喋っているのでしょう。

 嘘をついてなんかいないことくらい、わかっているんです。


 激したのは、自分の未熟です。

 つい、熱くなってしまいました。


「すみませんでした」

「わかっています」

「で、本当のところはどうなんです?」

「わかっていませんね?」


 ちょ――爪、爪が指に食いこんでます。

 地味に痛いんで止めてください。


「ヨシュアンに会いに来たのです」

「わざわざ説教――いえ、なんでもありません。そうでしたか。顔を合せていないことをあんなに言ってましたからね。沙汰がないのは元気な証拠とは言いますが、そんなに心配しなくても」

「私がっ。会いに来たのです」


 強調されても。


「あ、はい。ありがとうございます」

「それだけですか?」


 それ以外に何を言えと。


 何も言わないでいると、にっこり微笑まれました。

 あ、まずい、逃げないと。


「ヨシュアン。おすわり」


 瞬間、体が重くなって床に沈みこみました。

 また加重干渉ですか、そうですか。


「あの、レギィさん……、自分、怪我人なんですが」

「え……?」


 説教される前になんとか回避しないと。


 怪我と聞いて心配そうに眉を傾けたのも一瞬だけでした。


「ヨシュアン。貴方、何をしたのですか? この前は西岸部に潜入した爆破魔を相手にして怪我をしていたではありませんか。その前は故【狂える赤鉄】の秘密施設に赴き、怪我をしたと聞いています。あれほど自分を大事にしなさいと言っているのに、貴方という人は」


 いえ、そうではなく加重干渉を切ってください。

 説教する前に大事なことですよ?


 地味に自分が何かをしでかしたことが前提でないと出てこない言葉でした。


「ヨシュアン先生は先日、帝国へと赴き、大怪我をしたのですよ」


 学園長ー!? ちょっとまって学園長!

 話聞いてないとか言ってたじゃないですか、なんで口に出すんですか、そのことを!


「……帝国?」


 レギィの目が光ってる、光ってる!

 騎士オルナが放つ殺気以上の、殺気ではない何かに背筋が凍りつきそうです。


「ヨシュアン。詳しくお話できますよね?」


 頑張ったと思います。

 頑張って言い訳したと思います。


 それでも、ようやく加重干渉を切ってもらえたのは夕方くらいでした。


 だからレギィにはあまり、会いたくなかったんですよ。

 ものすごい勢いで怒りますもの、主に実生活について。


 大人なんだから実生活の責任くらい、自分でできますよ。

 何が悲しくて、この歳になってまで怒られなきゃいけないんですか。


 クタクタになって学園長室から出た自分を待っていたのは――


「さて。ヨシュアン。聞かせてもらおうか?」


 ――ニヤニヤとした笑みを浮かべたシャルティア先生と、キラキラした瞳のリィティカ先生でした。

 ヘグマントとアレフレットにがっしり両腕を掴まれて、ピットラット先生の待つ告白台に連れて行かれる自分でした。


 今日って参礼日ですよね?

 どうしてこんな苦痛な休日を送らなければならないのでしょうか?


 これでまた神を呪う理由が増えました。

 絶対にぶち殺してやるから覚悟してろよ、ちくしょう……。


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