プロローグ
教師という仕事を一言にまとめると『肉食魚への餌やり』だ。
これが崇高な意思や長年の経緯から導き出された結論であったらどれだけ救いがあったろう。
「愚鈍な牛は叩かねば働かないとも言いますわ。そこまでおっしゃるというのなら身体に教えてあげますわ。立ちなさい愚民!」
しかし、いきなりこう叫ぶ少女に対して、教師生活一日目の自分に何を期待しろというのか。
残念ながら何も浮かばない。
立つ瀬も浮かばねぇよ。
「立ってやろうじゃん、これで満足? ずいぶん志のお低いこと! クルクル頭のせいでそれ以上、お望み遊ばせないんだから可哀想だよね」
金髪クルクル頭に対して、赤毛の少女が呼応した。
君たちも出会って初日だというのにどうしてこう響きあえるのか。なんらかの運命を感じざるをえない。
ぎゃーすぎゃーすと言い合う二人に早くも王都に帰りたくなる。
リーングラードという北方の僻地まで来て、やることが肉食魚もかくやと争い合う少女のお守りか。
泣けるにしたって状況くらい選ばせてもらいたいもんだ。
ずらりと並ぶ総勢五名の生徒たち。
本当にこの子たちを教師として導くのか。
猛獣の調教じゃないんだから、もう少しマシな人選もあっただろうに。
はっきりと不安だ。
というか、この事態をどう収めろというのか。
自分に拒否権なんてない。
思えば選択肢すらなかった。
王命を受けて拒否できると思うか?
クソ貴族どもよりよく知っている相手だろうが、それにしたって場が極まりすぎている。
いやいや、そもそもアイツがくだらないことばかり思いつくせいだ。
「……どうしてこうなった」
目の前の現実が奇っ怪すぎて、もう見ていられない。
どうして自分が貴族でもないのに教師になり、竜車に一ヶ月も揺られ、リーングラードの土を踏む手順になったのかを衝撃的に思い出してしまった。
この物語はテスト的に生み出されたものです。
私自身が初めてこちらに投稿させていただくにあたり、色々な試行錯誤や思考、至らない面などが見えてきてしまうこともありましょうが、おだやかな初春をご家族でお迎えのこととお慶び申し上げます……ではなく、おだやかな心持ちで無我無念の境地でお読みください。
追記※2014/05/01にプロローグの全面改装を行いました。