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第3話 逃げるとき、人は本当の顔になる
「僕、凪っていいます。伊豆を歩いて回ってるんです」
「歩いて?」
「はい。会社辞めて、逃げてる途中です」
歩美は、自分が金髪にした理由を話した。
就活がうまくいかないこと。結婚に焦っていたこと。
黒髪の自分が息苦しかったこと。
凪は黙って聞いていたが、
「逃げるときって、人って本当の顔になりますよね」と
ぽつりと言った。
「僕も、逃げたんです」
凪は窓の外の海を見つめたまま言った。
「毎日、終電まで働いて……」
列車が熱海駅に近づくと、凪が言った。
「よかったら、海見に行きません?」
歩美は迷ったが、
「行く」と答えていた。




