4.服を買いに行こう!(下)
ショッピングモールに着くと、なんだか足取りが軽くなったように感じた。
(なんかちょっとーーいや、だいぶ楽しみかも。)
服屋さんのところまで、まっすぐに進む。
だけどーー
(え、待って)
一瞬、足が止まった。
お店の中には、春らしい色の服がずらりと並んでいた。
白にベージュ、淡いピンク。
ふわっとしたスカート。
可愛くて、なんだかおしゃれでキラキラしてる人たちが着る前提みたいな服だ。
(なにこれ、レベル高くない...?)
さっきまでの勢いが急に萎んでいく。
(これ、入って大丈夫なお店?)
「未来?入らないの?」
少し先を歩いていたお母さんが振り返る。
「……入る」
小さくそう言って、私は店の中に足を踏み入れた。
店内は明るくて、いい匂いがした。
(うぅ……なんかもう、おしゃれの圧がすごい……)
私はとりあえず近くにあったスカートを手に取る。
白っぽくて、ふわっとしていて、可愛い。
こういうのを履けば、少しは変われる気がした。
「試着してみたら?」
お母さんに背中を押されて、私は試着室に入る。
カーテンを閉めて、制服じゃないスカートを恐る恐る履いてみる。
——そして、鏡を見る。
(……あれ?)
なんか……違う。
可愛いはずなのに、なんだか落ち着かない。
服だけが浮いていて、中身が追いついてない。
(……なんで?)
少しだけ、胸がしゅんとなる。
カーテンを少し開けて出ると、お母さんが私を見る。
「うーん……悪くはないけど」
「……だよね」
私が小さく言うと、お母さんは少し笑った。
「“可愛い服”を着るんじゃなくて、“未来が可愛く見える服”を探せばいいんじゃない?」
(……私が、可愛く見える服、か。そんなの、今まで考えたこともなかった)
......
(む、難しいなぁ〜...)
私はもう一度、店の中を見回す。
(もう頭がぐるぐるしてる。こんなんで大丈夫かな..)
「お母さん、難しいよ〜それが分かれば苦労しないよ〜...」
「まぁ、それはそうなんだけど。
とりあえずさ、いろいろ着てみようよ。何かいいと思えるものが見つかるかもよ?」
それから、お母さんと一緒にお店をぐるっとまわってみたり、いくつかのお店をめぐって。
白すぎないクリーム色のトップスと、
落ち着いた色の、ひざ下くらいのスカートを試してみた。
試着室の鏡の前で、そっと立つ。
(……あ)
さっきより、自然だった。
かわいいが全面にでてるわけじゃない。
でも、なんだか少しだけ。
(……いいかも)
私はそっと前髪を触った。
「どう?」
カーテンの向こうからお母さんが聞く。
「……たぶん、これ」
自分でそう言えたことが、少し嬉しかった。
買い物が終わって、ショッピングモールを出る。
手には新しい服の入った袋。
「あ、今何時?未来」
「ん。ーーえっ、もう5時だ。5時14分」
「来たのが2時半くらいで、今日は休日だから...よし、ギリギリ駐車場の料金かかんないね!」
「それにしても結構時間かかってたんだね...」
「まぁ、あれだけみてまわってればね。でもいいの買えたんでしょ?よかったね」
「ーーうんっ!」
袋の中で、新しい服がかさりと小さく音を立てた。
ふと、“あの人”の顔が浮かぶ。
美容院では、気づかれなかった。
でも——
(次は、少しだけでも)
胸の奥が、ほんの少しだけ熱くなる。
(ちゃんと、見てもらえるくらいになりたい)
そう思ったら、
買い物袋が少しだけ軽く感じた。




