50.コリージとリタ
「はっ、はっ、はっ……。おい、もうちょっと早く歩けねえのかよ!」
「ま、待ってよ…!ハァ、ハァ!野蛮なあんたと一緒にしないで!」
「へっ!その野蛮人に喜んで股開いてたのはどこのどいつだよ!」
「うるさいわね!あんたなんか……ハァ、ハァ!腰を振るしか能の無いあんたなんか!あいつらを売った金が手に入ったら用無しなのよ!」
「ちっ、このクソアマが…っ!最後にもう一回ヤるって約束は守ってもらうからな!」
俺はコリージ。
数年前にガナイ達とあの開拓村にやってくるまでは冒険者をやっていた。
一時は一人前と言われるC級冒険者にまでのし上がった。
吠えるだけの無能な年上連中を追い抜いていき、後輩どもはみんな手下のように従えた。
夜なんか、毎晩のように女の方から言い寄られて相手に困ったことなんぞ皆無だった。
今でも夢に見るほど充実していた日々だった。
だが、そんなある日、運悪く魔物から受けた毒で神経をやられちまった。
腕のいい神官に毒の治療をしてもらったが、実はそいつは初級の治癒魔法もままならない詐欺師だった。
これが人生転落の始まりだった。
日常生活で体を動かす分には支障は無い。
だが、前のように俊敏な動きをしようとすると途端に体が痺れて動けなくなる。
俺は、冒険者を辞めざるを得なくなった。
それからは無残だった。
蹴散らしてきた無能な連中からはゴミ扱いされ、俺におべっかを使っていた後輩連中も腫れものを触るように遠ざかっていった。
俺にかわいがられて散々ヨガっていた女連中も、まるで害虫でも見るかのように露骨に嫌な顔して見下してきやがる。
クソッ!思い出しただけで腸煮えくりかえるようだ…!
そんな時だ。
開拓村の人員募集があったのは。
詳しく話を聞いてみると、魔物との戦闘ができない俺でも、農作業のほかに斥候としての経験を活かして罠を張り、獲物を捕らえたり、魔物から村を守ったりする役割ができそうだという。
――知っている人間がいない場所ってのは意外と悪くはないのかもしれない。
そう思ったのが最大の間違いだった。
食い物はない。
娯楽もない。
綺麗な女もいない。
人生を彩る要素が何一つとしてない場所。
俺にとっちゃ奴隷の扱いと同じ部類の地獄でしかない。
それでも罠で獲物を捕まえる俺を重用してくれていた時期はまだマシだったんだ。
デンゴがこの村に来るまでは。
デンゴの狩りの腕は、元冒険者の俺から見ても確かに見事だった。
だが、そのせいで俺の罠の重要性が薄れた。
明らかに俺の罠より捕獲量を上回るデンゴを、村の皆は持ち上げやがった。
反対に、俺はどんどん皆から遠ざけられた。
何もかも気に入らねえ。
そして、たまたま引っ掛けた大して器量も良くない独り身の女に手を出したのが運の尽きだった。
これまでどれだけ好き放題やっても孕ませたことなんざなかったのに、たった一晩で子供を妊娠しちまった。
それで産まれたのがバダだ。
可愛げのねえガキ。
まとわりついてきてうっとおしいだけのガキだ。
――ここは人生の墓場だ。
全てにうんざりしていた俺だったが、ようやく運が回ってきた。
リタがこの村に来たことだ。
ガキがいるようだが関係ねえ。
久々に所帯を持ってないイイ女に心が躍った。
性格は悪いが、男慣れしていて極上の味だった。
もう無理だ。
この味を思い出してしまったら、こんな場所にはいられねえ。
必ずどうにかして返り咲いてやる。
そうだ。この村のしけた連中を奴隷の国に売りつけて、一儲けしてやる。
冒険者をやっていた俺には、その手のツテがあるからな。
バダは痛めつけてリタの家に括りつけてやったし、それを見られたあの女は殺して埋めてやった。
罪悪感?
なんだそれ。
ガナイんとこのミアとヤれなかったことだけは心残りだがな。
リタだけは連れて行く。
俺の玩具にしてやればいいし、飽きたら売って金にしてやればいい。
待ってろ!俺の楽園!
ここからが、俺の本当の人生よ!
―――――――――――
もう、やってられないわ!
なんで私がこんな泥まみれになって畑に出なきゃならないのよ!
家は隙間だらけで寒いし、食べ物は碌な物がない!
こんなところで、どうやって生きていけってのよ!?
だけど、いい男は結構いるのよね
ガナイもデンゴもマルジ、だっけ?
顔は良いし、こんなところで暮らしているからか、みんな筋肉質だし。
ガナイなんか二の腕を見るだけで体が疼くわ。
でもここで暮らすのは無理。
一日だってこんな場所に居たくないわ。
シンディがミアとかいう女のところに行ったのは運が良かったわ。
あの娘、私の足手まといにしかならないもの。
早くコリージごと例の国にこの村を売り渡して、優雅な生活を取り戻すのよ。
絶対にこのままでは終わらないわ!




