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モノゴイと呼ばれた男 ~武器に宿った経験値でチート修行する~  作者: クラノ恩樹
第1章 開拓村編

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49.急転

「おーい、バダ!一緒に遊ぼうぜ!」


ある日、俺とポロンとシンディとヴィンスの4人でいつものように水配りを終えた後、俺たちはバダの家に来た。


俺とヴィンス、そしてバダは同い年だ。

シンディは俺より一つか二つ年上らしいが、その同年代グループにおいてバダだけが輪の中にいない。


こんな小さい村の中で、仲間外れになるようなことは良くないと思い、声をかけに来たのだ。


2カ月も放っておいて申し訳ないとは思ったが、シンディが新しい生活に落ち着くまで様子を見たかったのだ。


このことを伝えると、ヴィンスは「いいぜ!」と二つ返事で快諾してくれ、シンディも少しだけ複雑そうな顔をしたが、「友達として接してあげたいと思っていた」と、否とは言わなかった。


勢いよくヴィンスが家の戸を開けると、誰も家にはいなかった。


「いない、な」


「あいつ、どこに行ったんだ?」


俺とヴィンスが薄暗い家の中を見渡していると、後ろからポロンと手を繋いでいるシンディがぼそりと言う。


「……昔のあの家、とか?」


あの家とは、リタさんとシンディが前に住んでいたはずれの家のことだ。

今は、リタさんだけが住んでいるはずだが、コリージさんとよろしくやっている可能性も否定できない。


「「あ、あぁ~…」」


俺とヴィンスは気まずそうにうなずくしかできなかった。


「…何よ、その反応は?」


シンディはあからさまに気を使っている俺とヴィンスの反応が面白くない。

それを見て俺たちはさらにぎこちなくなる。


「じ、じゃあ行ってみようぜ!」


「そ、そうだな?よぉーし、行こう!」


「何か言いなさいよ!2人とも!」


子どもらしく騒ぎながら、シンディの元の家に向かうのだった。





コンコン


「リタさーんッ。バダ来ていませんかぁー?」


入口の戸が開かないので、俺たちはノックをして中の反応を待った。


「………こっちにもいないのか?」


ヴィンスが首を傾げている。


「いや……誰かいるぞ」


俺は、習得した索敵の訓練から人の気配を探れるようになっている。

それで家が無人でないことは分かった。


「また、裸で抱き合ってんのか?飽きねえな、あの人たちも…」


「…………」


ヴィンスの言葉にシンディは黙り込むが、俺は違う反応をする。


「中には一人しかいないと思う。コリージさんが来てるわけじゃ無さそうだよ」


「なんでそんなことが分かるんだよ」


「ははっ、がんばったからだよ」


俺は、ヴィンスに答えながら家の中を隙間から覗いてみた。


「バ、バダッ!?」


信じられないものを見てしまった俺は思わず叫んでしまう。


「ど、どいてくれ! 空気砲ォ!」


強引にヴィンス達を押しのけて風魔法で戸を吹っ飛ばして中に入った。


「―ッ!?」


中にいたのはバダ。


それも、後ろ手に柱に繋がれて猿轡までされて気を失っているようだ。

顔には痣ができており、鼻から血が流れた痕も見つけた。


「バ、バダッ!しっかりしろ、大丈夫か!?」


「な!?なんだよこれ!?どうしたんだよ!」


「ひ、ひどい…」


「まずはこのロープを外そう!」


「よ、よし!」


俺たちはロープをほどこうとしたが、きつく結んであって子供の力では外せない。


(こんなひどい真似、一体誰が…!?まさか、いやそんな…)


「ぐっ…!ああもうッ、だめだロイ!ほどけやしねえよ!」


一瞬、自分の思考の渦に入りそうになったが、ヴィンスの声で我に返る。


「分かった!どいてろ!」


俺は、皆を下がらせて魔力を操作していく。


「水刃!」


「おお!さすがロイだぜ!」


小さく水の刃を発生させてロープを切り、バダを解放することに成功する。


「バダ!おいしっかりしろ!」


横に寝かせてペチペチとバダの頬をヴィンスが叩くが起きる気配がない。


衰弱具合から見て、今日の今日繋がれたわけではなさそうだ。

だが、人間は飲まず食わずで3日を生きてはいられない。子どもなら尚更だ。


(唇も乾いてはいるが、まだ湿り気もある。繋がれたのは昨日あたりか?くそっ!だれだ一体!)


「…まずは、傷を治すぞ」


「傷を治すって、どうやって…?」


俺は、魔力操作の精度をさらに高める。

開発は早かったが使う機会が全くなかった魔法だ。


気持ちは逸るが努めて冷静に魔法を発動する。


「回復の水!」


全身に行き渡るようにたっぷりの回復魔法をかける。

それはバダの小さい体から溢れそうな量にもかかわらず、全てがバダに染み込んでいく。


途端に、バダの体にあった痣がスッと消えていく。


(うおっ!?すげえな、コレ!)


自分で自分の魔法の威力にビックリしてしまった。


「ロ、ロイ!お前っ!」


「す、ごい…っ!」


「にいー!」


みるみるうちに体の傷が治っていく様子を見て、これまで事の次第を見守っていたポロンまでが俺の魔法で興奮した。


だが、これでも傷が治っただけなのだ。

完全に力を取り戻すにはまた別の魔法が必要だった。


「まだだっ」


傷を治した後は、おなじみのあの魔法だ。


「活力の水!」


活力の水なんて言ってみたが、中身はミアとガナイで検証済みの元気ハツラツ栄養剤、ロイケル皇帝液2だ。


一気に流し込もうとするとむせてしまうので、点滴で口の中を湿らせるように少しずつ垂らしていく。


「………」


俺の慎重な作業を見て、さっきとは打って変わったように誰一人として声を発しない。

みんなが静かに見守る中、約1時間に渡る栄養剤の投与が開始された。




「うっ…」


「バダ?」


ロイケル皇帝液2が効いたのだろうか。

ようやくバダが目を覚ました。


「バダ!大丈夫か!」


「良かった…目を覚まして…」


「うー!」


まだ、状況が呑み込めていないバダは俺たち一人一人の顔を確かめるように見ていく。


「ここは?」


安心した。声も出せるようだ。


「…私が住んでいた家よ。あなた、ロープで括りつけられていたのよ。」


「一体、どうしたってんだよ?心配したぞ。」


シンディとヴィンスが声をかけると、バダは一瞬考え込んだあと、ハッとして俺の胸倉を掴んだ。


「ロイっ!あいつが、あいつが……!」


「お、おいっ。少し落ち着けって!何があったんだよ?」


突然取り乱したバダにビックリしながら、俺はバダを宥める。

すると、聞きたくなかった事実をバダが話し出した。


「俺、あいつに捨てられた…ッ!あいつはリタと一緒に居なくなったんだッ!」


(くそっ、やっぱりそうなったか。まさか実の息子よりも女を捕るなんて…)


嫌な想像が現実になってしまったと、俺は落ち込む。


「そんな…!」


シンディは自分の母親が原因でバダが不幸になってしまったとひどくショックを受けているようだ。


「ねえー。ねえー…。」


そんなシンディを慰めるように、ポロンが彼女の手を強く握っている。まったく、できた弟だ。


しかし、そんなことをお構いなしに、バダはまだ俺の胸倉を掴んで喚いている。


「落ち着いてくれ!みんなで相談すれば……く、苦しい…」


「ちょっ!落ち着けよ、バダ!安心しろよ!村の皆で助けてやるから!」


強引にヴィンスがバダを俺から引き離してくれた。


「だ、大丈夫、ヴィンスの言う通りだ…ッ。これからの事は何も心配いらない……ッ」


そう言って落ち着かせようと声をかけたとき、さらに衝撃の事実がバダから伝えられた。


「違う…ッ!違うんだよ!あいつらはこの村を奴隷の国に売ったんだ!

 母ちゃんだって殺された!みんな………みんな奴隷にされる!」








この日、この村の運命が大きく変わった。



更新が遅くなりました。

しばらく不定期での更新が続くと思いますが、よろしくお願いいたします。

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