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モノゴイと呼ばれた男  作者: クラノ恩樹
第1章 開拓村編
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21.弟を救え!

「ちょ、ちょっとどういうことなの!?

 残念ながらって何のことだよ!」


ガナイとドーミンのオババの話についていけない俺は、必死に説明を求めた。


チラリと赤ん坊を見ると確かに状況は良くない。

赤ん坊はぐったりとしていて息もせずに微動だにしていないのだ。


拳を握りしめたまま、何も喋ろうとしないガナイに代わって、

ドーミンのオババがポツリポツリと話し出した。


「ロイか。もう……お前ももう5歳になったんじゃったな。

 …うむ、この子はな。魔力過多症を患っておるのじゃ」


「魔力、過多症…?」


聞いたことのない言葉だ。


「そうじゃ。赤子の身体では制御しきれない魔力を内包していた場合に起こる病じゃ。

 何が原因かは分からんが、稀にこういった子供が生まれることがある」


よく見れば、赤ん坊の全身が暗い青色に染まっている。

しかし、それが何だというのだ。


「それだけでどうしてこの子が生きられないんだよ!?」


納得がいかない。

どうして大人がみんな匙を投げるのか。

対処法はないのか!?


「落ち着けロイよ。そういうものなのじゃ…。

 多すぎる魔力は制御が難しい。肉体のあらゆる部分に負担をかけてしまい、

 体内で暴走したそれは最悪、臓器を爆発させることもある。

 この子の場合はへその緒を切るまでは元気そのものじゃったからな、

 知らず知らずのうちにミアが制御してやってたんじゃろう…。」


魔力の暴走と聞いてミアとの修行を思い出した。

あの時は確かに体の中を魔力が暴れ、特定の個所に魔力が集まってしまっていた。


魔力制御は確かに難しい

ミアの手ほどきがあってもすぐには会得できなかった。


「へその緒を切った途端にじゃ…。

 見る見るうちに体中が青く変色していき呼吸すらしなくなってしもうた。

 ミアはその子の様子を見て、気を失ってしまったんじゃ」


ミアは死にゆく我が子を見て絶望のうちに気絶したらしい。


それもそうだろう。

大事な我が子を無事に産んだ途端、不治の病を発症する姿を見せられたのだ。

ミアでなくても正気を保ってなどいられまい。


「制御って…なんで、この子が…。魔力、過多…魔力の暴走って…でも…」


赤ん坊が対応するには無理難題であると俺にも理解はできた。

しかし、そのことがこの子の命を諦めるのに納得できる理由にはならない。


(何かないのかっ?この子のために僕ができる事はもうないのかよ………って、まさかッ!?)


グルグルと思考を巡らせていた俺の目の前が、突然殴られたような衝撃に真っ暗になった。

ある考えが頭を過ぎったからだ。




魔力水による弊害。




もしも…



もしも、

俺の魔力水がミアの妊娠にも大きく影響していたとしたら…。



もしも、

それがミアの身体を伝ってこの子に蓄積されてしまったのだとしたら…。


自分の足元が崩れていく―。


そんな焦燥感に襲われる。

仮説とは言ったがそれはほぼ事態の核心をついているだろう。


(俺は、なんてことを…!)



 不安


 後悔


 自分への憤り


数多の感情が腹の中を渦巻いている。

どれだけ後悔してもどれだけ自分を罵倒したとしても取り返しなどつくはずもない。


ミアとガナイの顔を交互に見た。


ミアはまだ眠ったままだが、

ガナイは唇を噛み、拳を握りしめ、震えながら今にも消えそうな小さな命を見つめていた。


いつも明るく、太陽のように笑うガナイとは似ても似つかない顔だ。


(こんな顔を父さんにさせていいのかよ!母さんの泣き顔だって見たくねえよ!

 …やるぞ、ロイ。やるぞッ、やるんだ!)


俺は心の中でこの子の命を救うと誓う。


「うおぉおおー!父さん!この子をしっかり抱いていてください!」


「ろ、ロイ?なにを…?」


突然の俺の咆哮と指示出しに狼狽えているが、

一刻の猶予もない。


「やるんですよ!助けるんです!

 父さんはこの子をしっかり抱いてあげていてください!」


「やるって何をだ!?」


「…僕がこの子の魔力を制御して命を救います!」


「ば、何をバカな―ッ」


「バカでも何でも助けるんだ!僕たち親子でこの子を救うんだよ!」


数秒、二人の視線が交差し続ける。


「…考えがあるんだな?わかった、責任は俺がとる…!」


ガナイが腹を括ったところで、親子による救命作戦が始まった。



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