驚愕
姉ちゃんとソニアが戦い始めてから、かなりの時間がたった。
ソニアもそうだが、姉ちゃんもそろそろ疲れないのかな。
ちなみに俺は周りの魔物を狩って訓練している。
ソニアは体術、姉ちゃんは剣術で戦っているが、戦況はソニアの方が若干有利ではあった。
姉ちゃんが斬りかかり、ソニアが受け流しつつ反撃。
そして、たまにソニアが受け流しきれなかったものが当たる、といった具合だ。
姉が使っている剣はそれほど質のいいものではないため、ソニアにそれほどダメージを与えることはできない。
一方、ソニアが与えるダメージは拳とはいえ、ヴァンパイアのため身体能力が高い。
ゆえに、姉の方は徐々にダメージがたまってきているのである。
「とっとと、レオナ様のことは諦めなよ! 私があなたの分まで幸せになってあげるからさぁ!」
「嫌だね、弟は私のものよ。あなたみたいなお子様に渡すものですか!」
「お子様ですって!? あなたの100倍ぐらいは生きてるわよ!」
などと、口で言い合いながら戦闘すること約30分。
ようやく決着がついた。
ソニアのカウンターを姉が剣で受け止めたところ、剣が折れてしまったのだ。
これで姉は戦い手段がなくなってしまったのだ。
「くっ、私の負けよ」
「じゃ、私がレオナ様をいただくわね」
おいおい、俺はソニアのものになるつもりはないぞ。
「むぅ、いいもん。 同じ家に住んでるから、布団に忍び放題だし・・・」
「お姉ちゃん、そんなことやってたの・・・?」
今度から部屋には鍵をかけておこう。
いろいろ危ない。お姉ちゃんの恋心を知ってしまった以上、そんなことをさせるわけにはいかない。
「そういえば、レオナ。このお子様と一体どんな関係なの?知り合いみたいだけれど」
「お子様って言うな!」
一生に冒険したいって言っても、仲良くできる雰囲気じゃなくなっちゃってるし、行っても大丈夫かな・・・
「そ、ソニアは俺の召喚獣だよ。冒険者になるとき、一緒に連れていきたいんだ」
「しょ、召喚獣?」
「うん、召喚獣」
「レオナ、いい?召喚魔術なんてだいぶ昔に失われた魔術なの。
今この時代にできるわけないし、出来る人なんていたら、大騒ぎだよ?言いたくないのかもしれないけれど、本当のこと言いなさい」
しょ、召喚魔術ってそんなすごい魔術になってたんだ。
確かに昔から、習得している人は少なかったけど、もうできる人いないのかぁ。少し寂しいな。
「本当のことよ、私はレオナ様に1000年以上前に契約を結んでいるわ」
「1000年以上も前って、生まれてないじゃない」
「ええ、だって一度死んでしまったから。レオナ様は生まれ変わりよ」
「え?」
ちょ、ソニアそれは言っちゃだめだよ・・・
お姉ちゃんから他の人に
「サータニア、名前ぐらいは知ってるでしょう?」
「う、うん。昔いた人間の魔王の名前よね・・・」
俺、魔王って伝えられてるのか。 嫌だなぁ・・・
「そう、その通り。1000年前に君臨して、味方の召喚獣に裏切られ殺された哀れな魔王様。私はその召喚獣だったの」
そこまで言わなくてもいいじゃないか・・・
気にしてるんだよ、裏切られたこと。
まあ、自業自得なんだけどさ。
「ま、まさか」
「そのまさかよ。レオナ様はサータニア様の生まれ変わり」
ぜ、全部言っちゃったよ。
お姉ちゃんに怖がられたら、心折れそうだよ。
「本当に?」
「お姉ちゃん、黙っててごめん。本当のことだよ」
「そう」
そういって、お姉ちゃんはうつむいてしまった。
これは・・・嫌われちゃったかな、大丈夫かな?
嫌だなぁ、これから一緒に冒険者になるんだから、ギスギスした雰囲気は避けたい。
「ふふっ」
しかし、顔を上げた姉の顔話満面の笑みだった。
「会いたかったです。ご主人様!」
「「え?」」
お姉ちゃんが発した言葉はあまりにも予想外すぎた。
「ど、どういうこと?」
「ど、どういうことよ!」
俺もソニアも理解ができなかった。
俺がお姉ちゃんのご主人様?
何の冗談だよ。
「やはりソニアだったんだね、久しぶり!」
「ちょ、ちょっと待って、お姉ちゃんは何を言ってるの?」
「サータニア様、いえ、今はソニア様でしたね。覚えていますか、私です、攻撃部隊隊長のミーナです」
「「はぁ!?」」
ミーナは、俺が様々な国を侵略していた時にともに行動していた数少ない人間の一人である。
召喚獣の攻撃部隊をまとめる隊長で、かなり強かった。
それこそ小さな国なら一人で滅ぼせるほどに。
彼女との出会いはあっさりしたものだった。
奴隷として売られていたところを俺が金貨16枚で買い取った。
今思えば、だいぶ安い買い物だったんだなと思う。
「ご主人様も一緒に転生してたんですね!しかも今度は同じ家族!」
「そ、そうか。お前も死んでしまったのか・・・」
「そりゃ、100年も生きれば寿命で死にますよ!」
「殺されたとかじゃないんだな?」
「はい!それにしてもご主人様とは思えないほどの優しさですね!気味が悪いくらいです!」
「だいぶひどいことを言うな。俺は改心したんだ!召喚獣はもうあんなふうには使わない」
「私があんなに行っても聞かなかったのに、いったい何があったんですか」
「それ、ソニアにも言われたよ」
そんなに俺が改心したことに驚かれると傷つくな。
まあ、あれほどのことをやって改心したとか言っても信じてくれないと思うけどな。
「それにしても、お二人とも元気そうで何よりです!」
「ええ、ミーナも元気そうね、いや、今はなっていう名なのかしら?」
「リリーです!これから、よろしくお願いしますね」
「よろしく、お姉ちゃん」
「よろしく、リリー。 でも、レオナは譲る気ないわよ?」
「それはこちらもです」
何はともあれ、お姉ちゃんとソニアは和解(?)したようだ。
仲が良さそうに話しているのでよかった。
じつは、主人公の改心はものすごいキーポイントです。
解明されるのはだいぶあとですがw