146.双子の誤解
「モテないだろ?」
「…」
無言だった。はぁ、マジか。
「カゲツ、悪い。紹介しようと思ったんだが、ひとまず屋敷で待っててくれ。探してくる」
「あぁ、無理するなよ!」
「おう」
行き先なんてあそこしか思い浮かばないからな。
ベルシティに飛んでからまた転移で湖に飛ぶ。そこにはツリーハウスを作っている時に、毎日会っていた湖畔の小屋がある。
転移すればやっぱり小屋の外にあるベンチに腰掛けていた。
「ルキ、ロキ!」
声を掛けても俯いたまま顔を上げない。
「なぁ顔を見せてくれ。大切な2人の可愛い顔が見たいんだ」
俯いたままだが頬が赤くなる。仕方ない。強硬手段だ。
俯いたロキの下から強引に唇を重ねる。たっぷり触れ合わせてから頬に手を添えて顔を上げさせた。
涙目で俺を見るロキ。鼻の頭にキスをして
「大切なロキ…俺を見ろ」
「カスミ…」
「浮気なんてしてないぞ!ちゃんと紹介しようと思ったんだ」
「本当に?」
「本当だ」
ぎゅっと抱きついて来た。頭にキスをすると今度はルキだ。
「ルキ…」
しっかりキスするとやっぱり涙目で俺を見る。
「誤解だ。ルキたちを裏切ったりしてないぞ」
「ほんとに…?」
「ほんとだ」
またキスをするとぎゅっと抱きついて来た。
そのまま2人と小屋に入る。小屋と言いつつも中は案外広くて、ソファのある居間とキッキンとダイニング、その奥には寝室がある。
そこに2人を連れて行くとそのまま抱き合った。
「俺はお前たちにしか反応しないからな…」
そう言えば真っ赤になって甘えて来た。本当に可愛いんだが、思い込みが激しい。
「信じてくれよ?旦那さん」
「もう…」「もう…」
たくさん温もりを伝え合って、ようやく落ち着いた。
そこでカゲツがある意味、生き別れた状態の兄ちゃんだと話をした。流石に驚いていた。
「そんな事が?」
「びっくり」
「だよな?でも顔がまんま兄ちゃんなんだよ。髪と目の色は俺と同じで変わってるけど顔は同じ」
こっちの顔立ちは西洋風でほりが深い。俺は少しハーフっぽい顔だからそこまで違和感がないし、兄ちゃんもほりが深いからやっぱりあんまり違和感がない。
とは言え、さまざまな顔立ちの人がいるから意外と普通の日本人顔でもまぁ少し珍しい程度だ。
「会ってみたい」「会いたい」
「紹介しようとしたら泣いて出て行ったんだろ、2人が」
「だってカスミの言い方が」
「カッコいい人だったし…僕たちより若いし」
もじもじとい言う。
「こんなに大切にしてるのに?」
「うぅ」「むぅ」
「会ってくれるか?」
頷いたので、体を起こした。
2人と手を繋ぐと王都の屋敷に転移した。俺の部屋だ。そこから居間に向かう。
ノックして入るとやっぱり兄ちゃんがいた。
「カゲツ、今度こそ紹介する。伴侶のルキとロキだ」
兄ちゃんは立ち上がると
「初めまして、カゲツ・フォン・ルースだ」
「は、初めまして」「ルシアーノ・ド・シュプラールです」「ロシアーノ・ド・シュプラールです」
「そうか、君たちがカスミの…良かった。こんなに素敵な人たちと縁を結んだんだな。結婚は無理かなって言ってたカスミが。兄ちゃん嬉しいぞ!」
その言葉を聞いてセイやトーカたちが驚いた。
「話はまだか?」
「ん、そうだ」
それからセイやトーカたちにも順を追って話をした。
「まさか、そんな事が?」
とセイ。
「それでなんとなく懐かしく感じたのか」
これはトーカでクリスとリグも頷いた。人格は別でも感覚は繋がっているんだな。
「紹介しようとしたら2人が出ていくからさ…焦ったぞ」
「カスミの体からもその…カゲツの魔力が」
「カゲツの体からも…カスミの魔力が」
「あー魔力酔いを治すために魔力を渡したからな」
「「えっ?」」
なんだ?
「だから魔力を渡したからな」
「したの?」
「したぞ?」
「「…やっぱり浮気」」
「あー全くだな。抱き合っててもほぼ無反応だったぞ」
「抱き合って…」
「ほぼ…カスミ?ほぼって事は?」
「ほぼだな。俺は2人にしか反応しないからな!」
もうっとか言いながら収まった。全く兄ちゃんは昔から一言余計なんだ。
「兄ちゃんはあまり軽々しく話すなよ?昔っからなんだから」
「わ、分かってる」
そのやり取りを少し羨ましそうに双子が見ていた。
「兄弟だと結婚はしないし、万が一してもそのな…しないぞ?」
「ほんと?」「間違いなく?」
「流石に弟とは無理だな」
カゲツも援護射撃だ。
そこにリュカが戻り、預けていた子供たちを連れてアマランとウルグにヒルガも居間に来た。
ルイス、ロイス、カルア、カロアを見て兄ちゃんの顔は崩れっぱなしだった。さらに子狐を見て悶絶していた。
「セイル兄様、私はやっぱりカスミのそばにいます!」
と宣言していた。
その話はまた後でとなって、晩ご飯を食べて感動して泣いて、兄ちゃんは帰ることになった。住まいは騎士の宿舎らしい。
「兄ちゃん、ロスガレス様によろしくな!」
苦笑すると
「伝える。またな、カスミ。セイル兄様にみなさんも」
そう言って俺の髪の毛をくしゃりとして帰って行った。なんか寂しいな。
玄関で佇む俺の手をルキとロキが握る。
「「お風呂…」」
ブレない2人だ。
子供たちはアマランたちが今日まで見てくれることになった。俺は双子の世話をして、2人に包まれて眠った。いや、ほんと長い1日だった。
次の日、目を覚ます。
今回のことはセイが学院に説明に行ってくれる。俺は回帰したとは言え、相当なケガをしたから休みだ。
完全に機嫌を損ねた子供たちの相手は大変だった。
「いや!」「いやいや」「来ないで」「やっ!」
おかんむりだ。
そうは言っても俺も死にかけたんだが、どうやら子供には関係ない。
「嫌い」「…らい」「ぷん」「やっ」
困ったなぁ。
「ルイス…怒るなよ…」
やわやわなほっぺを突く。ぷんぷんしてる。
アマランが笑いながら
「やっと一緒に寝られると思ったら別々でいじけてたぞ!」
そっと後ろから包み込むと頭にキスをした。
「今日はずっと一緒だ」
と言うとやっと振り向いてくれた。
ぎゅっと抱き付くルイスを腕にそっと抱きしめる。
「ごめんな、寂しかったか?」
と聞けばこくんと頷く。
「お前は色々とな、いない時が多いし、そうなるとルキとロキも不安定だし。特にルイスはお兄ちゃんだからな、余計だろ」
まだ小さな体を膝に抱き上げれば、しがみ付いて来た。
すべすべの頬に手を滑らせるとキスをして抱きしめた。背中をトントンしていたら安心したのか、力を抜いて寄りかかって来た。
ルイスが落ち着けば、下の子たちも落ち着いてにじり寄って来た。順番に撫でて頭にキスをする。柔らかい髪の毛を撫でれば目を細めた。
結局、周りを子供たちに囲まれて、その高い体温とすべすべのほっぺと柔らかい髪の毛を撫でてまったりと過ごした。
俺の足が痺れた頃に、うとうとと寝始めた。
午後は外で遊ぶかな。起こして疲れさせないと夜にぐずるから。
ま、今は足が痺れていてもこの幸せを堪能しよう。
いつの間にか俺も寝ていたようだ。
上から覗き込むロキ。ん…あぁ寝てたんだな。
「くすっ可愛い顔で寝てた」
「あぁ、可愛いよな」
ロキは驚いてから首を振ると
「子供たちが可愛いのは当たり前。今のはカスミの事」
男が可愛いはあまり嬉しくない。
「可愛いは嬉しい…たくさん可愛くおもって」
本当にロキも純粋だ。手を伸ばして頬に触れる。
「お昼ご飯…」
そんな時間か。
ルイスとカルアを抱き上げると、ロキがカロアとロイスを抱き上げた。
まだむにゃむにゃ言ってるな…ほっぺを突く。
そのまま食堂に向かう。
今日はセイ以外は家にいる。
ルキは食堂で待っていて、俺の手からルイスを預かった。俺の膝にはカルアだ。おでこに張り付いた髪の毛を避けて顔を見るとにぱっと笑った。頭を撫でると前を向いた。
昼ごはんはシチューだった。柔らかいパンと温野菜のサラダもある。カルアはシチューはすこしなら食べられる。潰した野菜も食べさせながら、俺も食べた。
沁みるな…兄ちゃんにも食べさせたい。そんな味だった。




