140.実技試験からの…
「みんな、魔力の気配が濃い。気を付けろよ」
「ッはぁはぁ、待っ…あっ」
ミロが転んだ。すかさずクリスが戻ってミロを抱える。
「急げ!」
「はぁはぁっ」
カルロスの息が苦しそうだが、今は少しでも距離を稼がないといけない。躓いたカルロスの腕を取るとそのまま走る。
「はぁはぁ、もうダメだ…」
チッ仕方ないか。
「クリス、2人を連れて行け!ここで食い止める」
「はい、主」
カルロスをクリスに託すと振り返った。
全くなんでこんな事に。俺は後ろから追ってくる猿型の魔獣に風の刃を飛ばした。
見える範囲の魔獣は蹴散らした。クリスたちの後を追う。しかし、あちこちから魔獣の声と交戦する音が聞こえる。俺たちに付いていた騎士は他の応援に向かった。その直後に猿型魔獣に囲まれたのだ。
クリスたちが見えた。
横から今度はゴブリンだ。
(クリス、右から来る)
(主、ここで止まります)
仕方ない。逃げるのは無理だ。
ミロとカルロスはもう立っているのもやっとだから。
2人を守るようにクリスが立つ。
「お前ら動くなよ!」
2人は必死に頷く。
クリスと2人で取り囲んだゴブリンを蹂躙していく。足手纏いが無ければ難しくもない。
蹴散らした後に火で燃やす。燃やした後は消火をした。
それにしてもおかしい。
「おーい」
風に乗せた声が聞こえた。俺たちに付いていた騎士だな。
「大丈夫か?」
駆け寄ってくる。服に血が付いているが、軽傷か。
「なんとかな、後から後から来る」
「俺たちが後ろを守るから、この2人を援護してくれ」
「分かった」
俺とクリスがケガをしていないことを確認して騎士が、頷いた。
森に入ってからやたらと魔獣の気配を感じた。討伐してる筈なのに、おかしい。途中で止まって様子を伺うとレオたちのチームが進んだ方から狼煙が上がり、悲鳴が聞こえた。
だから俺たちに付いていた騎士が離脱した。それも仕方ない。レオは王子だ。
そして俺たちも魔獣に追われて逃げていたのだ。また騎士と合流して進んで行く。
森の入り口に向かう途中でレオたちのチームが見えたその時
「キャー!」
「ぐわっ」
「逃げろ」
この声はブランか。
クリスと目配せして
「ミロたちは出口に迎え」
(トーカ、みんなを守れ!)
(カスミ!)
(あっちにはリグがいる。他のみんなはお前がいなければ出口に辿り着けないかもしれない)
(分かった。必ず戻れ)
(あぁ、夜は酒盛りだな)
トーカに手を挙げてクリスと離脱した。騎士はミロたちを守って進む。
「カスミ!」
後ろでミロの声が聞こえたが気にしてはいられない。
(リグ、導け)
(はい、主)
リグの気配を追う。近いな。
程なくリグたちのチームにたどり着くと、オークの群れに囲まれているブランたちは、男子生徒が震えながら2人を守っていた。そして、群れを牽制する位置に例の騎士だ。
「援護するぞ!」
俺を確認した騎士は
「俺の後ろを頼む」
「任せろ!」
(クリスはブランとリグに付け)
(はい!)
俺はオークたちの背後から氷を纏わせた剣で首を切る。切った場所から凍りついていく。これが氷魔法を剣にのせた時の効果だ。
少しでも皮を切ればやがて凍っていく。ただ、体がでかいと凍るのに時間が掛かるから注意が必要だ。
恐慌状態の男子生徒が氷り始めたオークに向かう。バカが、切れないだろ。
俺とクリスの剣はオリハルコンコーティングだ。しかも、実際には剣で切ってるわけじゃない。刀身に氷を薄く伸ばすようにして表面を一瞬で凍らせて皮を切っているのだ。
カチカチに凍った皮は脆い。ただでさえ魔法耐性があるオークの皮はとにかく硬いのだ。
案の定、切れずに怒らせただけだった。俺は助ける気はなかったので、他のオークを屠っていたが騎士はすぐさま男子生徒に駆けつけた。
チッ仕方ない。
騎士が抜けた穴を埋めるようにそちらに魔法を放つ。誰もいなくなったから火魔法で焼く。肉が食べられなくて残念だ。
死んだのが透視で確認できたら消火する。
(終わりました)
振り向くと騎士がケガをしていた。幸いキズはそこまで深くない。
「出口に向かう」
男子生徒は意識がなく、ケガをした騎士に運ばせるのもどうかと思ったら、もう1人の男子生徒が
「わ、私が運びます」
ブランとリグに向かい
「リグ、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。主、来てくれてありがとうございます」
俺はリグの頬の汚れを拭うと
「当たり前だ。俺の従者だからな」
隣のブランは何か言いたそうだったが、今は余裕がない。
「歩けるなら早く進め」
俺はまたクリスと後ろを守る。
トーカはどうやら森の入り口まで着いたな。良かった。レオは王子だからな。
ん?こっちに来てる。
(カスミ、ダメだ!退がれ)
ゾワッとした。
「みんな退がれ!」
さすがと言うべきか、騎士はブランを抱えて後ろに飛んだ。
クリスとリグは男子生徒を引っ張る。
少し先の土が隆起して、大きな芋虫がにょきにょきと出て来た。
えっと無理!
思わず
「うわぁぁーーー!無理だ」
叫んだ。嫌いなんだよ、虫は。
俺の叫び声に驚いた騎士が唖然として俺を見る。
「危ない!」
トーカが声をかけて騎士は我に返って退がった。
「ブラン!」
おい、なんでレオまで来てんだよ。
足手纏いが増えた。
しかもブランが
「キャー!」
と叫んで失神した。頭が痛い。この状況でそうなるか?守られるべき王族が、マジかよ。
「トーカ、リグ。レオとブランを退避させろ!」
芋虫は口から酸を吐く。当たれば皮膚が溶ける。まともに食らえば骨すら溶けるのだ。
気絶したブランを抱えたら戦力である騎士が戦えない。とはいえ、ブランは王女。
「騎士様も王女殿下を連れて退避しろ!ここは俺たちが食い止める」
しかし、騎士様が退避しようとした方向からも芋虫が湧き出て来た。
クリスとリグは男子生徒を抱えて出口側に回り込んだ。芋虫に隔てられたのは俺と騎士とブランだ。
「トーカ、レオを退避させろ!」
レオを追って来た騎士がレオを捕まえた。
(カスミ、しかし)
(足手纏いがいない方が戦いやすいんだ。トーカがいれば出口まで安全に辿り着く、行け!)
(分かった!)
クリスは男子生徒が立ち上がったのを確認して、リグと話をしている。リグも男子生徒から離れて、クリスに援護されながら、芋虫を切る。
こちらは騎士がブランを抱えているので、俺1人で氷魔法で切る。デカい上に数が多い。
俺の純粋な体力は少ないんだ。はぁはぁ参ったな。仕方ない、回帰!
クリスとリグもどうやら回帰したようだ。魔力は尽きないが体力は限界があるからな。
なんとか芋虫を討伐し、膝を付いた。
「少年、助かった。あぁ、君たち。彼女を頼む」
クリスとリグに話しかけた。クリスがブランを抱える。
「半分よりは出口に近い。このまま進もう」
なんとか凌いだとそう思ったのだ。この時は。そうじゃないと分かるのはすぐだったが。
「おかしい…」
透視スキルで視ると森の奥に向かっていた。やられたな…幻覚作用のある魔力か…。
良く見れば植物だな。油断した。透視スキルを使えば分かったのに。疲れで注意力が散漫になっていたんだ。
「止まれ」
魔力も濃くなってる。
(クリス、リグ。何かあればブランを連れて逃げろ。ヤバい)
(私は主を置いて行けません)
(私もです!)
(邪魔だからいない方がいい)
それほどだ、これは。クリスはともかくリグには荷が重い。擬似人格から人になったリグはもう一つの個人だ。もしリグが死ねば、また具現化でリグを作れるがそれは今のリグじゃない。それは俺が嫌なんだ。
俺はたちがここで食い止めなくては、逃げるレオたちにも影響がある。
騎士と顔を見合わせて、頷いた。
前方から大きな魔力のうねりを感じる。
(俺が行けと言ったら迷わず行け!このまま後ろに向かえば出口に通じる。クリスはトーカの思考を読め)
(っ分かりました、主)
(…必ず戻って下さい)
(お前らもだ。何かあれば躊躇なく回帰しろ!)
ヒリヒリするような魔力圧を感じていた。騎士も額に汗をかいている。
来るな。
(行け!)
その言葉と共に俺は騎士に飛び付いて頭を抱きしめる。「ぐっ…」腕の中で騎士も抗っている。
結界を可能な限り重ねろ!
自分は回帰を掛け続ける。体がバラバラになるかと思うほどの圧力。魔力を集めないとクリスたちが離脱出来ない。ここを離れるのは無理だ。この騎士も分かっていて矢面に立ったんだ。
くそっ騎士を守れ…結界を重ねがけだ。スイ、治せ!
はぁはぁ、回帰を持続しろ!
う、なんて魔力の圧力だ。
体が壊れながら再生すると言うなんとも苦痛な時間がどれほど続くのか、早く治らないと腕の中の騎士の命が危ない。結界は貼り直しながら維持しているが、壊れる方が早い。
隙間をぬってケガをしている分はスイが対応してくれている。
一応、魔獣だからかスイは平気なようだ。
長い時間が経ったような気がして、俺は気を失った。
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