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四代トラブルメーカー  作者: かいり
#君をつくっているもの
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10話―⑤【side R】『信じたくない現実』

 目を覚ますと、ボロボロの天井が見えた。一瞬どこだか分からなくて、ぱちくりとまばたきをする。少し顔を動かすと、あたしを見下ろすコノハがいた。



「やっと起きた……」

「コノハ……? ここは……」

「シルマ学園だよ」



 むくりと起き上がる。どうやら廊下で寝ていたみたいだった。コノハの傍には、同じく起きた蒼祁がいた。



「チッ……結構だるいな……さすがにキツかったか……」



 ぶつぶつ何かを言いながら、ふと蒼祁と目が合う。蒼祁はため息を吐き、あたしを鋭く見据えた。



「お前もう二度とテレポーテーションは使うなよ」

「分かってるよ」



「絶対だぞ」と何度も釘を刺される。そんなに信用ないかな……あたし。さすがにもう懲り懲りだよ。絶対使わないよ。



「白夜! 大丈夫⁉」



 後ろで声が聞こえ、振り向いた。寝そべるハクに、心配そうに声をかける影縫さんがいた。もう一人の男子も、不安そうにハクを眺めている。ハクは自分の手を眺めてから、ゆっくりと起き上がった。



「帰れた……」

「良かった白夜……! 心配したよ……!」

「今回は焦ったなあー」



 抱き着こうとした影縫さんに、瞬時に腹パンを入れるハク。影縫さんはお腹を押さえてうずくまった。ふん、と息を吐き、辺りをキョロキョロと見回すハク。その時目が合った。



「……………」



 何となく、喋りづらかった。蜜柑達のこと、あんな風に思ってるんだって考えると、何となく壁を感じてしまった。

 きっと、ハクの言ってることは正しいんだと思う。幽霊はモノノケになる。だから蜜柑達も例外なく危ないんだと。

 でもやっぱり、そう簡単には受け入れられないよ。蜜柑達が助けてくれるのは事実だし、悪意あるモノノケになるなんて信じられないよ。



「何見つめ合ってんだよお前ら」



 背後からポンと頭を叩かれる。ちらりと見ると、蒼祁はくだらなそうにため息を吐いた。

 そういえば、疑問に思ってたけど………。



「ねぇ、どうやって帰ってこれたの? さっきの呪文、瞬間移動魔法のじゃ……」

「魂だけになっても、肉体が魔導石を持ってれば魔導石の魔法が使えるらしくてな。だからテレポーテーションで行き来した。魂だけな」



 へえ………そうなんだ。すご。やっぱ伊達に「最強」謳ってないんだ。



「ったく……やっぱりとんでもないことしてくれるな。野生動物は。まず白夜に言うことあるんじゃないのか?」



 反射的に影縫さんを睨んだ。

 その呼び方いい加減やめてくれないかな。いちいちイライラしてくる。それに言われなくても分かってるし。



「……ごめんね。ハク。巻き込んじゃって」

「いや。こっちこそ。直人のせいでもあるし」

「え? なんでオレ?」

「お前が威嚇しまくったからだろ」



 ギロリとハクに睨まれて萎縮する影縫さん。ホント、ハクにだけは弱いんだね。それだけ好きなんだろうなぁ。影縫さん、容姿だけは恵まれてるんだから黙っていればいいのに。



「だってそれは―――」

「――――――みーつけた」



 声が響いた。廊下の先を見ると、女の人が歩いてきていた。ワインレッドのポニーテールを揺らし、不敵な笑みを浮かべている。

 あの人は………まさか……!



「カヤさん……⁉」

「あら、覚えてたのね」



 そう。カヤさんだった。さらに、カヤさんの背後から現れる、白衣を来た黒髪の眼鏡男。



「余計なのもいるな」



 滝川さんだった。コノハがあたしの隣に立ち、自然と戦闘体勢に入る。

 この二人がいるってことは……!



「もう逃がしませんよ」



 後ろから第三の声。振り向くと予想通り、風峰さんがいた。

 魔警察がこんな所にまで……! どうしよう……このままじゃ……!



「なんだお前ら? 誰に何の用だ?」



 蒼祁が三人を順に見る。その鋭い視線に臆することなく、風峰さんは口を開いた。



「我々は魔警察です。華城さんの魔具が、悪魔の仲間である可能性があるので、預かりに来ました」

「悪魔? コノハが?」

「アタシが見たのよ。この目でちゃあんとね」



 カヤさんが自分の目を指差す。

 そうだ。そもそもカヤさんがそんなことを言い出したせいで、あたしは魔警察から追われるはめになったんだ……!



「だからそれは悪魔の罠だって言いましたよね⁉」

「そうだと断定出来るまでは野放しに出来ません」



 野放しにって……! この人も影縫さんみたいに、あたし達を動物か何かだと思ってるわけ……⁉ ホントムカつくなあ……!



「だったらまず悪魔の方を捕まえなよ! なんでコノハばっかり狙うわけ⁉」

「勿論悪魔も追ってます。ですが同時進行で貴女の魔具も捕らえなければ……」

「だから魔警察は信用ならねぇんだよな」



 蒼祁がぼそりと呟く。しかしちゃんと聞かれたみたいで、風峰さんや滝川さんに睨まれた。それでも気にせず、蒼祁は続ける。



「ただ、制御不能な魔具を壊しておきたいだけなんじゃないのか?」

「……変な言いがかりをつけるのはやめて下さい」

「お前らは、その魔具に裏切られて殺されたらどうするんだ?」

「コノハはそんなことしないって言ってるじゃん!」

「だから、それは先入観です」

「先入観じゃなくて事実! アンタらにコノハの何が分かるの⁈」

「それは貴女も同じでしょう? 他人の全てを理解している者などいませんよ」

「あたしは違う!」



 気付いたらコノハがいた。それくらいコノハとは一緒にいるんだ。コノハは悪魔に加担するような悪いやつじゃない。万が一にもそうだとしても、絶対に仕方のない理由があるはずだ。



「らちが明かねぇ。ひとまずその悪魔を捕まえれば満足か?」



 蒼祁が一歩前に出る。カヤさんはニヤリと笑い、太ももに装備していたポーチに手を突っ込んだ。そこからゆっくりと手を出すと、その手には何かが握られていた。それは、明らかにポーチに収まらない長さであり、銃のような形状をしていた。



「やっとやる気になったかしら?」

「蘭李。冷幻連れて悪魔捕まえてこい」

「蒼祁は―――」

「俺達はこいつらを足止めしといてやる」



 すると、影縫さんと黒髪の男子が同時に蒼祁を見た。



「待て。なんでオレ達まで数に入れてるんだよ」

「冷幻を助けてやっただろ? その借り返せ」

「元はといえば華城が―――」

「直人。拓夜。頼む」

「勿論だよ白夜」



 ハクが言うと影縫さん、犬のように従うんだなあ。ある意味便利かも。

 準備運動を始めた男子の背を、影縫さんは軽く叩いた。



「なら拓夜。お前は白夜を守ってやれ」

「いいけど……お前ら二人で大丈夫なのかよ」

「こいつはともかく、オレは一人でこいつらを凌げる」

「は? 俺だって凌げるし」



 なぜか睨み合う蒼祁と影縫さん。強さ的には何ら問題ないけど、仲間割れとかしそうだなあ……不安。

『拓夜』と呼ばれた男子がこっちに来た。それを見かねて、ハクが頷く。あたし達は駆け出した。



「待ちなさい―――」

「おっと、アンタの相手はオレだ」



 風峰さんに襲いかかる影の腕。あたし達はその脇を通り抜けた。廊下を駆け抜け、シルマ学園から出る。外はもう電灯の必要な夜だった。走りながら、ハクに顔を向けた。



「どうやって悪魔を探す?」

「うーん………メルに頼んでみるか?」

「メル? 誰だそれ」

「知り合いの天使」



 拓夜に説明するハク。ところでこの拓夜って人は誰なんだろ。ハクと同じ闇属性の人なのかな。後で聞いてみよう。

「あ、そうだ」と思い出したかのように、ハクが拳銃を取り出した。



「これ返す。忘れてた」

「あ、ありがとう。ちょっと一回止まっても……」

「待って!」



 突然コノハが叫んだ。あたし達は急停止する。ハクから拳銃をもらい、上着のポケットにしまいながら振り返ると、コノハは睨むようにじっと前を見据えていた。



「どうしたの?」

「………来る」

「来る?」



 コノハと同じ方を見る。何の変哲もない暗い道路だ。誰もいなく、少し不気味ではあった。

 が、暗闇から溶け出るように、あの悪魔が姿を現した。



「よお。こんな所で会えるとはなあ」



 黄緑色の目が光った。あたし達は戦闘体勢に入る。

 タイミングよすぎないですかねぇ……まさかつけられてたのかな……。



「今日は知らない奴がいるみたいだな。新人か?」

「失礼だな! おれは白夜より年上だ!」

「拓夜。今はそんなこといいから」



 悪魔はニヤリと笑う。やつの右腕が地面と水平に振られた。影から黒い狼が現れ、こっちに駆けてきた。あたし達はそれぞれに避ける。さらに別の影から鳥や一角獣のようなものも現れ、襲いかかってくる。

 狼があたしとコノハを追いかけてきた。魔力で必死に逃げる。一般人が誰もいなくてよかったと思う反面、もし見つかったらどうしようという不安は拭いきれなかった。



「しつこいなあ……!」

「僕がやる!」



 コノハが急停止し振り向いた。そのまま駆け出す。あたしも止まって背後を見る。狼に斬りかかったコノハだが、影は切れ目から二つに分かれ、手の形となってコノハに掴みかかった。あたしは急いで拳銃を取り出し、影に発砲する。五発程撃った頃に、やっと影は溶けるように消えた。



「大丈夫⁉ コノハ!」



 あたしはすぐさま駆け寄った。コノハの首や腕には、掴まれた黒い痕が残っていた。



「痛そう……大丈夫?」

「ごめん。力不足で……」

「え? 大丈夫だよ。銃もあるしさ」

「………そっか」



 コノハが項垂れる。なんだかいつもより落ち込んでいる気がする。そんなに気にしなくてもいいのに。どんな敵にも勝てるわけないんだしさ。



「コノハ、大丈夫だよ。それより早くハク達の所に戻ろう?」

「………蘭李にはさ」



 コノハが顔を上げる。緑色の瞳があたしを捉えた。



「いざとなったら銃があるもんね」

「え? ああ、うん。そうだね」



 なぜか辛そうに笑うコノハ。何か様子がおかしい。あたしはコノハの肩に手を乗せた。



「コノハ? どうしたの?」

「…………」

「魔警察のこと? あたしはコノハを見捨てたりしないからね?」

「…………ホント?」

「当たり前じゃん! あたしは絶対、コノハの味方だから!」

「…………………ならさ」



 その時、何が起こったのか分からなかった。一瞬の出来事であり、予想だにしなかった出来事であったからだと思う。



 あたしは口から血を吐いた。その血は、コノハの服にかかった。服がじんわりと赤く染まる。

 おそるおそる、視線を落とした。胸に刺さる緑色の刃。その刃をたどっていく。途中から人間の(・・・・・・・)腕に変わり(・・・・・)、黒い袖から伸びていた。



 そして、その袖を持つ服を着ているのは、紛れもなく、コノハだった。



「コ、ノハ………?」

「蘭李は僕の味方なんだよね。ならさ……」





 僕と一緒に、死んでくれるよね。





 刃は勢いよく引き抜かれた。激痛が全身に走る。コノハは、真っ赤に染まった腕を振り上げた。

 ――――――何をどこで間違えた? どうしてコノハはあたしを殺そうとしているんだ?





 ――――――他人の全てを理解している者などいませんよ。





 コノハだけは、コノハのことだけは分かってるって思ってたのに………!





「なんでッ⁉ コノハァッ!」





 刃は、振り下ろされた。



* * *



10話side R 完


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