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四代トラブルメーカー  作者: かいり
#君をつくっているもの
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10話―①【side L】『仕事』

「今日も白夜は可愛いね!」

「今日もお前は気持ち悪いな」



 一体このやりとりを何回繰り返しただろうか。ただでさえ車酔いするっていうのに、拍車をかけるように気持ち悪さ増しやがって。こいつ本当は私のこと嫌いなんじゃねぇの? あー絶対そうだわ。ならこっちもとことん嫌ってやる。



「相変わらず直人はブレないな」

「拓夜も相変わらずお一人様か」

「お前もだろ!」



 隣に座る『拓夜』が、助手席に座る『直人』を指差す。直人は「チッチッチッ……」などと言いながら、人差し指を立てた。



「オレは白夜と結婚するから違うよ」

「しねぇから。お前も私もお一人様だよ」

「照れちゃって」

「この顔色の悪さを見てそんな風に思うのか?」



 ガタンと車が揺れる。ルームミラー越しに運転手と目が合った。運転手に軽く謝られ、少しだけ罪悪感が沸いた。

 魔獣退治から一週間。午前だけで特訓を切り上げた私は、真っ直ぐ家へ向かった。親から、「仕事」の依頼をされたからだ。蘭李も「仕事」に呼ばれたみたいだし、今日はワークデーなのか? 子供も労働に駆り出される日なのか? それなら給料をちゃんとくれ。無賃労働なんて嫌だ。

 ………なんていう冗談は置いといて。

 我が家に着くと駐車場では既に、直人と従兄の拓夜が待っていた。その時、どうやら今回は三人でやるらしいと判明したのだけど……。



「紀本、あんまり揺らすなよ?」

「申し訳ありません。直人様」

「お前まだ付き人雇ってんの? いい加減解放してやれば? 紀本さん可哀想」

「それはどういう意味だ? 拓夜」



 ――――――正直、不安かない。

 何故か私を気持ち悪い程好いている直人と、感覚人間拓夜。二人とも実力はあるけど、それ以上に性格に問題がありすぎる。まさか母さん、私にこの二人を押し付けたんじゃないだろうな……恨むぞ母さん。

 思わずため息が溢れた。拓夜とぎゃんぎゃん言い合う直人を、私は制止した。



「ところでさ、お前この間、蘭李のこと勧誘したらしいじゃん」



 直人は不敵な笑みを浮かべて、私を横目で見た。恐ろしく整ったその顔立ちに、若干の苛立ちを覚える。



「そうだよ。それがどうかした?」

「どうかしたじゃねぇよ。何でそんなことした」

「単純に、戦力になるからだよ。それに白夜だって、彼女が入ったら嬉しいだろう?」

「……嬉しくないに決まってるだろ」



 隣の拓夜が「蘭李って誰? お前の彼女? お前男勝りだとは思ってたけど、中身まですっかり男だったなんて知らなかったぜ! 応援するぜ!」などと言ってくる。

 色々言いたいことはあるがひとまず「友達」とだけ伝え、直人を睨んだ。直人は腕を組んで、前方を向いていた。



「蘭李まで軍のしがらみに囚われる必要なんかない」

「もうとっくに囚われてるじゃないか。彼女も」

「……お前、何が狙いなんだ?」



 車が赤信号で止まる。横断歩道を渡る人達を眺めながら、直人は小さく口を開いた。



「………白夜は一緒にいすぎた」

「は?」

「変則的な魔力継承に魔具持ち、幽霊からの余命宣言に「異常魔力者」との繋がり。極めつけは、事件のあった年の(・・・・・・・・)シルマ学園(・・・・・)に在籍していた」



 こんな魔力者がいると聞いて、普通は「異常だ」と思うはずじゃないか?



「な? 拓夜」



 直人に話を振られ、一瞬ポカンとする拓夜。しかしすぐに「……あぁ!」と何かに納得したように、淡紫色の目を光らせた。



「その『蘭李』って奴がそうなのか?」

「ああ。異常だろ?」

「まぁたしかになぁ。詳しくは知らないけど、最後の『事件のあった年のシルマ学園に在籍してた』ってのが特に気になる」



 事件のあったシルマ学園―――たしかそれって、校内の人間全員が不審死を遂げたっていう、あの……?

 待てよ。その時に蘭李が在籍していただって……? たしかに、短期の学校に通っていた時はあったって言ってたけど……まさかそこだったのか……⁉



「……ん? でもあの事件って、皆死んだんだよな?」

「それはあくまで推測だ。実際本当にそうだったかは分からない」

「ちょっと待てよ。それどこで手に入れた情報だ?蘭李に確認したのか?」

「証拠も持ってるしその真偽も確認した。彼女は確実にシルマ学園に通っていたよ」



 車が発進する。直人はくるりと振り向き、私に小さく笑った。



「少し怖くなった?」

「………別に」



 逃げるように顔を逸らした。びゅんびゅんと走り去る車達が車窓から見える。高速道路に入っていたみたいだ。


『シルマ学園』に通っていたと聞いても怖くない―――というのは嘘だ。ぶっちゃけ怖いよ。

 あの学園は、夏の間だけ開かれる特別な魔法学校。新設された翌年にはもう、優秀な学校として人気を博していた。

 だけど、同時に変な噂も立っていた。


 ――――――シルマ学園は、魔法に関する人体実験を行っていると。


 どこからそんな噂が立ったのかは分からない。ただの噂だし、嘘の可能性の方がよほど高い。だけど、私はそれが本当だと信じてやまなかった。

 何故なら、卒業生を一人も見つけ出すことが出来なかったからだ。

 当時小学生だった私にさえ、シルマ学園の評判は耳に入ってきた。だから私はそれに興味が沸き、自分なりに調べてみた。

 だけど、何もかもが謎だった。どんなカリキュラムなのか、どんな教員がいるのか……。本当に生徒を募集しているのか疑うくらい、情報が全然得られなかった。

 それは、事件が起きてからも同じだった。どうして事件が起きたのか、何が起きていたのか。シルマ学園に通っていたという魔力者も見付からない。

 もしかして、噂は本当なんじゃないのか。シルマ学園の生徒達は皆、人体実験に使われてしまったのではないか―――ついさっきまでは、そう思っていた。

 だが、蘭李はシルマ学園に通っていたという。

 直人は言動こそ気持ち悪いが、嘘を言うような奴じゃない。

 でも、もしそうだったら、そうだとしたら……。



 蘭李は、一体何者なんだ?



「ちなみに、今オレ達が向かっている所も、シルマ学園だよ」



 拓夜と同時に、直人を見据えた。「良くないもの」が溜まっている廃墟での仕事とは聞いていたが、まさかシルマ学園だなんて……。



「今回の仕事が終われば、恐らくシルマ学園は完全に取り壊される。だから……」



 直人は薄暗い紫色の瞳を光らせた。



「くれぐれも、油断しないように」


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