再会
タクと一馬は朝食を食べると、宿を出て電車に乗り、埼玉に向かった。
川口駅に着いてタクシーに乗る。
「荒川運動公園まで」
行き先を運転手に告げたタクは、不思議そうにこっちを見てる一馬に言った。
「フィナーレさ」
「?」
タクシーは荒川運動公園の土手の上に着いた。
グランドを見下ろすと、バックネット前にバッグを持った男が1人立っている。
タクは一馬を連れてグランドに降りた。
男との距離は約50m。他に人影はない。
川口警察署捜査本部
{犯人が人質を連れて現れました!}
カズヘーは声を張り上げた!
「みんな気を抜くな!チャンスは一回だ!金の確認でバッグを開ける時、人質からナイフを離した瞬間を狙え!」
バックネット裏には警官隊、SITの狙撃班が対岸に1人、土手に2人、待機している。
カズヘーは無線で確認を取る。
「狙撃班、準備はいいか!」
{こちらアルファ、準備完了!}
{こちらブラボー、準備完了です!}
{こちらチャーリー、いつでも撃てます!}
「よし!指示があるまでそのまま待機!」
荒川運動公園
タクはジャックナイフを出すと、一馬の喉元にあてた。
「え!自首するんでしょ?」
「自首はしない。捕まりもしないさ。一馬、たった一泊だったけど、楽しかったし、嬉しかった。
ありがとう。この思い出を、冥土のみやげに持っていくよ」
ボッサンは、偽物の2億円が詰まったバッグを持って、タクと一馬に近づいていった。
一馬はタクに言った。
「え?何言ってるの?」
「今、この俺をスナイパーが狙ってるはずだ。このナイフを首から離した瞬間、俺は撃たれる。
今思えば、俺はとんでもない事をやらかしちまった。死んで当然だ。
これで、和真のところにいける‥」
ボッサンはインカムで状況を伝える。
「タクと一馬まで、あと20m」
カズヘーは、無線で様子を伺っている警官に聞いた。
「様子はどうだ?」
{まだ人質の首にナイフが当てられています!}
一馬は必死になってタクを説得する。
「死んだら和真くん、悲しむよ、きっと!死んじゃだめだよ!」
一馬の目から涙がこぼれ落ちる。
ボッサンはタクと一馬の様子がおかしい事に気づいた。
「ん?あの2人、なんか様子がおかしいな」
「一馬、お父さんは忙しいから遊んでくれないかも知れないけど、子供を愛してない親なんていやしない」
タクのナイフを持った手が、徐々に下がっていく。
一馬がその腕を首もとまで上げる。
{ブラボー、今の見たか?}
{はい!人質が自らナイフを首に当てた様に見えました。}
「余計な事は言うな!そのまま指示を待て!」
ボッサンは、タクと一馬の5m前に来て足を止めた。ここでバッグをタクの足元に投げる予定だったが、投げなかった。
ボッサンは、この2人がもはや犯人と人質の関係ではない事に気づいた。
ボッサンは、マイクのスイッチを切った。
「おいタク。そのままこっちへ来い。ナイフを下げるな。下げると撃たれるぞ!」
{荻野目刑事がバッグを投げません!向き合ったままです!}
「何やってるんだ、アイツは!」
「じゃあな、一馬」
タクがナイフを振り上げた!
ボッサンは両手を降って叫んだ!
「撃つな~!!」
『死んじゃだめ~!!』
一馬はタクを思いっきり突き飛ばした!
{ナイフを振り上げました!人質が刺されます!}
「撃て~!」
{こちらアルファ、外した!装填!}
{こちらブラボー、肩にヒット!装填!}
{こちらチャーリー、外しました!装填!}
カズヘーは確認を取る。
「やったか?」
{いえ、まだです}
「息の根を止めろ!撃て!」
{こちらアルファ、撃てません}
{こちらブラボー、同じく撃てません}
{こちらチャーリー、同じく撃てません}
「どうした!」
{人質が‥一馬くんが、犯人の上に覆いかぶさって犯人をかばっています}
「SITだろ?隙間から当てろ!」
{撃ちません。撃ちたかったらご自分でどうぞ}
{自分も撃ちません}
{同じく、自分も撃ちません}
「きさまら~!」
一馬は、肩から血を流して倒れているタクの上に覆い被さっていた。
「おじさん、死なないで~!」
「今、和真の声が聞こえた‥ 和真‥、ごめんよ~!和真~!!」
2人抱き合って泣いている姿を、ボッサンは見守っていた‥




