第八章 ゼロムの涙と、始まりの約束
闇が晴れた場所に、一人の小さな存在が立っていた。
そこには、先ほどまでの巨大な影はなかった。
黒い外套も、恐ろしい光も消え、ただ、寂しそうな瞳だけが残っていた。
「私は……何をしていたのだろう」
ゼロムは自分の手を見つめた。
「私は、何も生まれなければ、悲しみもないと思っていた」
その目から、一滴の涙がこぼれた。
「だが、何も生まれなければ、喜びも、出会いも、愛することもなかったのだな……」
アマネは、そっと近づいた。
「あなたも、悲しかったんだね」
ゼロムは驚いたように顔を上げた。
「私を許すというのか」
「許すかどうかは、これから一緒に考えよう。でも、あなたにも新しい道を歩いてほしい」
ニジも続けた。
「間違えたことをなかったことにはできない。でも、これから誰かを守ることはできるよ」
クロノスは、静かにうなずいた。
「私も同じ道を歩いている。過去を背負いながら、未来へ進むことはできる」
ゼロムは長い沈黙のあと、深く頭を下げた。
「私は創世海の番人だった。だが、命の誕生を恐れ、すべてを終わらせようとしてしまった」
アカシアは、その言葉を静かに受け止めた。
「ならば、今度は創世海を守る者として歩みなさい」
ゼロムは、初めて小さく微笑んだ。
その表情には、まだ迷いがあった。
しかし、その迷いの中に、小さな希望の光が灯っていた。




