報・連・相 ~協同~
普段は人のいる気配のない、学園内の小じんまりとしているが手入れの行き届いたチャペルの中にある神鳴響子先生の部屋でカトリと響子先生はミーティングをしていた。
「カトリはCIAとの共同活動について、困ったことはありませんか?」
響子先生は自分のイスに腰掛けて、木製の丸イスに座るカトリに話しかけた。
「ヨーコはとても協力的だし物資や支援体制も充実しているから、今のところはとてもやり易いわ。ただ、ハヤトは今回の任務にはどう見ても適材とは言えなくて、なんでCIAがわざわざ彼を選んだかがわからないのよ…」
カトリは手をアゴにあてながら首をかしげた。興味深そうに響子先生は身を乗り出した。
「例えば、どんな所かしら?」
「ハヤトが一生懸命に取り組もうとして努力しているのは分かるの… だけど、知識の面ではワタシ以上に詳しいところがあるかと思えば、意外に基礎的なことを知らなかったり、体力の面では身のこなしが良い時よりもダメな時の方が断然多いのよ」
気になるところを口にし始めた途端、カトリの一人でしゃべる勢いは止まらない…
「それに精神的な面ではガッツがなくて… 中学生の時のトラウマのせいらしいけど、ひ弱っていうか腰抜けっていう感じで
カトリのふと見た響子先生のあぜんとした表情がカトリのおしゃべりと手振りや身振りをその位置で停止させた。
“ワタシったら、つい言わなくてもいいことまで…”
それからゆっくりとカトリは姿勢を正してからイスに座り直しお行儀よく再び話をし始めた。
「ワタシがヨーコの立場だったら、ハヤトはまず不採用ね」
「それは放っておけない話ですね… では、こちらからCIAに要員の交代を正式に申し入れをしましょうか?」
真顔で響子先生はカトリにたずねた。
「いいえ、それはしなくて大丈夫よ。CIAでもハヤトに訓練をするって言っていたから」
響子先生の言葉に隼人を自分と一緒にする任務から外される脅威を感じたので、あわててカトリは否定的な発言を取り消しにかかって話題を変えた。
「キョーコ、最近、検邪聖省からは何か連絡はあった?」
「ああ、私たちとCIAとの関係についてなんだけれども」
持ち前の真面目さと誠実さが表れた顔で響子先生がカトリに話し始めた。
「CIAと言うよりアメリカは、プロテスタントやピューリタンが多いから、カトリックへの不信が根強いところがあるのは知っているわね。共通の敵がいるときには手を差し伸べてくるけれど、特に政治や金が絡むと、裏では自分たちの利益を最優先に考えているでしょうね。まあ、それは私たちも同じでしょうけど… 今は共同して歩調を合わせていてもCIAには注意を怠らないように、って言うことだったわ」
「CIAには注意を怠らないように、って言うことね…」
カトリはオウム返しをしたが、響子先生は真面目な表情のまま話を続けた。
翌日、サトーヨーコ先生から呼び出されたカトリは保健室の相談室に向かった。
「カトリ、顔色が悪いけど、大丈夫?」
緊張したカトリの顔を見てヨーコ先生は少し心配そうにした。
「今度のオリエンテーション合宿の宿泊先の近くに廃墟があって、そこにバベルが金や武器を運び込むという情報があるの。目立たない山奥だけど近くに海もあるし、アジトとしては絶好の場所なのは間違いがないわ」
「それはいつなの?」
カトリは身を乗り出して話を聞いた
「それが5月2日の夜22時。そう、あなたたちのオリエンテーション合宿中なのよ」
「なんだか狙ったような感じさえするわね… その情報は信用できるの?」
「情報の信頼性については安心してちょうだい。こちらとしてはバベルに打撃を加える貴重なチャンスだから逃したくないのよ。それにバベルがこちらの学校行事のこととかを知る手立てはないはずだし…」
“上司は私の進言どおりにコチラに情報を流してくれている。それに議員への成果を示したい上司の顔も立てなければならないし、結果を出さない訳にはいかないのよ”
ヨーコ先生はヤル気でいた。
「カトリと隼人の荷物はコッチで出発までに用意してバスに乗せておくから。必要な装備の使い方は行く前に教えてあげるから心配しないで。あと、現地に直行する別動隊がいる点は知っておいてね」
ずいぶんと準備が良いことね、とカトリは呆れてしまった。
「それと、私は合宿には行けないの。合宿中も学校に残っている別の学年の生徒達の面倒を見なくてはいけないから、合宿には別の看護士が行くことになっているの。ごめんなさい」
「ハヤトへの連絡はヨーコがしてくれるの?」
事務的にカトリはヨーコ先生に聞いた。
「ええ、私から伝えるわ。装備の使い方も隼人に教えるけど、まとめて教えた方が効率的だから、カトリと一緒にしていい?」
カトリは満足そうに大きく首をタテに振った。




