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 北門につくと衛兵さんにギルドカードを見せて門を通る。

 三十メートルほど先には森が広がっていた。

 森への入り口は人が作った林道があるだけの様だ。

 これもプレイヤーが開拓していくのがゲームの目的の一つなんだと思う。

 私達の目的は開拓ではなくて採取と討伐なので林道を進んでいく。


『ぁ、シュティナさんが言っていたデメリットを防ぐ方法って何ですか?』


『調、アクアのやってた方法』


『あぁ、アレが有効なら浮遊砲台になるのか。一応これはアクアフェアリーのプレイヤーのやってる事だけど、水生成で水球を作って念力で自分の周りに浮かすんだそうだ。それで水分が欲しくなったら突っこんで補給らしい。注意するのは組み合わせではなく生成だって所だな』


『何かあるんですか?』


『組み合わせで生み出した水属性魔法は時間経過で消えるんだけど水生成の場合は浮かせてるだけなら消えなかったからそれを利用してるそうだ』


『私の場合氷生成で作ったモノを自分の周りに浮かせておけばデメリットが消せるかもしれないんですか?』


『可能性があるとしか言えないな、サービス開始してまだ皆試行錯誤中だしな。あぁ、一応街中ではやらない方が良いかもしれん。街中で魔法を使って衛兵さんのお世話になってるヤツがいるみたいだ』


 できても街中ではダメなのかぁ…。

 とりあえず外だけでも可能性があるならやってみた方が良いよね。

 保冷バッグから飛び立ち宙へ浮く。

 森に入ってもHPが減り始めたのを確認した。

 うん、ちょっと蒸し暑いもんね。

 氷生成を選択して氷柱をイメージする。

 MPを3消費して3本の氷柱を作った。

 落ちて地面に突き刺さった氷柱に私の周りで浮けと念じる。

 すると氷柱は私の左右と後ろで漂うように浮いている。

 HPを確認すると減少が止まっている。

 成功かな?


『おー!やったよ、お姉ちゃんHP減ってない!』


 私のHPゲージを見ていたルナが嬉しそうに声を上げる。

 それを見て私も嬉しくなる。

 ルナの方へ飛び頬に触れる。


『お姉ちゃん冷たい』


『気持ちいいでしょ?』


『私はお姉ちゃんに抱きつく方が良いかなぁ』


 ルナとそんな会話をしていると。


『じゃれ合うのは良いけど後にしてくれー。先行くぞー?』


『『ごめんなさい』』


 私達は謝って調さんの後を追う。

 あれ、シュティナさんは?

 何故か木の枝の上に立っていた。


『アングル的な問題です』


 私の視線に気づいたのかそう言ってきた。

 アングル…?


『ぁ、さっきの写真!良い感じだから保存安定だね』


『当然ですね。きちんとルナさんが写ってるのも有りますので送ります』


 思い出した。

 カメラ機能!

 また撮られてたのかぁ…。


『お姉ちゃんにも後で送るから!』


『うん、ありがとう』


 ケーキ屋で見せて貰った写真は綺麗だったし期待は有るのでお礼は言っておく。

 このアバターは可愛くできたと思うから気に入ってるしね。

 私もちょっと風景とか綺麗だし撮ってみようかな。

 しばらく歩くと道が三方向に分かれている。


『今回は東北の動物系が目当てだから右の道を進むぞ』


『左は虫ですよね。真ん中は何がでるんですか?』


 そういえば北に進むと出る敵は聞いてなかったので聞いてみる。


『植物系の敵が出る。βで実装されていたルートの一つで変わってなければボスはトレントだったはずだ』


 植物の敵…。

 食人植物とかいそうだよね。

 トレントって言うと大きな木に顔があって手みたいな枝のあるモンスターだったかな。

 どうやって攻撃してくるんだろ。

 ちょっと見てみたいかも。


『気になってるみたいだけど今はクエスト進めるぞー』


 表情で考えを読まれたみたい。

 恥ずかしい。

 頷いてついていく。

 PTの隊列は先頭に調さん、次にルナで私は三番目。

 最後尾にシュティナさん…のはずなんだけど……。

 時々シュティナさんが横にある木の枝で立ってたりする。

 写真撮ってそうだな。

 特に迷惑掛かってるわけじゃ無いから言うつもりは無いけどね。

 どんな写真が撮れるのかちょっと気になるし。


『そういえばお姉ちゃん、飛んでるのってどんな感じ?』


 私を見て気になったようでルナに飛んでる感覚を聞かれる。


『それは確かに気になるな』


 調さんも会話に参加してくる。

 私としては説明が難しいんだけど、うーん。


『水の中で泳いでるんだけど抵抗はないみたいな感じかな?』


 やっぱり上手く言葉にはできないね。

 羽を動かして飛んでいるのではなくて魔法で飛んでるような感じだからなのかな。


『へー、そういえば飛んでるけど羽動かさないんだね』


『うん、羽は飾りみたいなモノだって言われたよ』


『えー』『マジか…』


 チュートリアルの時に言われた羽が飾りらしい事を伝えると二人とも驚いていた。

 実際フェアリー以外のキャラがどうなのかわかんないんだよね。

 やったわけじゃないし。


『そうなるとフェアリーは魔法かそれに関する力で飛んでるのかもな』


『だったら魔法で飛べるようになるかもね』


 ルナと調さんが魔法で飛ぶ事に関して話し始める。

 二人とも思った以上にノリノリで意見を出し合っているね。

 そんな感じで話をしながら緊張感がない状態で森を歩いて行く。


『あー、そろそろエリアが変わるから敵が出てくると思う。βと変わってなければウサギとイノシシにニワトリがメインかな。植物とか虫も少し出るかもしれないけど遭遇率は低いだろ』


 そう言って辺りを見渡す調さん。

 続いていた獣道は細くなっていき低い木や蔓植物でわからなくなっている。

 鬱蒼とした森はならされた道などなく、草木が少ないところは高低差がある場所も見える。

 足場はあまり良くないようだ。

 飛んでるから私には関係ないけど。

 3人は少しでも歩きやすいところを選んで森を進む。

 通ってきた道は視界の右上に表示されたマップで確認できた。

 迷子にはならなくてすみそう。

 マップを見ていたら赤い点が表示される。


『いたいた。ウサギだな』


 草木が多くない場所があり、そこにいたのは茶色い毛のウサギだった。

 ジッと見ているとウサギの上にホッピンラビットと言う名前と赤いゲージが一つ表示される。

 アレが敵なんだね。

 ちょっとデフォルメされてて可愛いかも。

 そう思った次の瞬間、ホッピンラビットが体勢を低くする。


『跳んでくるぞー』


 調さんが緩い声でそういった瞬間、跳んだ。

 一瞬で調さんの上数メートルに到達して落下してくる。

 調さんのいる位置に赤いサークルが表示されると、それを見て範囲から出るように横に移動した。

 ホッピンラビットが落ちてくる時にはそこには誰もおらず地面に落ちる。

 それに合わせてルナが前に出ており剣を振り下ろす。

 ホッピンラビットの上に表示されていたゲージが一気に無くなる。

 死体は残らずに光になって消えていく。


「消えた…」


 ゲームと言うのがわかる光景だと思う。

 つい声に出して呟いていた。


『ゲーム自体が初心者だったか』


『はい、現実にしか思えない感覚に街並みや自然が綺麗で新鮮です』


『まぁ、VRに慣れた奴でもこのゲームはリアル過ぎるところがあって驚くな。次ウサギが出たら攻撃して貰うとしてアイテムボックスを開いて見てくれ』


 言われた通りメニューからアイテムボックスを開く。

 横10マス縦10マスのウインドウが開く。

 赤い小瓶、緑の小瓶、黄色い小瓶のアイコンと毛皮のようなアイコンがあった。

 ウインドウの右下に4/100と有るから100種類持てるのかな。

 多いのか少ないのかわかんないな。

 小瓶のアイコンはどれも右下に10と書いてある。

 手持ちに10個あるみたいだ。

 説明を見てみると赤が初心者用HPポーション、緑が初心者用MPポーション、黄色が初心者用SPポーションとある。

 回復量はどれも+50の様だ。

 私はHPとSPが少ないから50でも大きいけど、MPが50はちょっと回復量が少ない気がする。

 きっとこれは人それぞれなんだろうな。

 HPが多い人には初心者用HPポーションじゃ足りないのだろう。


『倒した時に出るドロップは自動で各プレイヤーのアイテムボックスに入る。敵を倒したメンバーがいるPT全員に入るけど戦闘に貢献した人の方が当然ドロップは良いものになるし数も多い』


『私は毛皮とお肉が一つずつだったよ』


 調さんの説明に続いてルナが教えてくれる。

 何でもドロップが全員に入るのは取り合いにならない様にって事みたいだ。

 素材集め系のクエストにもPTのと個人のがあるみたい。

 PTのは必要数が多くて報酬はメンバーで割って分配されるそうだ。


『ユキさんは魔法攻撃が主体になると思う。とりあえず組み合わせでいくつかパターンを作って登録しておくと良い』


『最初は[形状]を玉や矢、槍にして[種類]は攻撃を選択しておけば良いかと』


 調さん、シュティナさんに言われた事を実行するためにメニューを開く。

 魔法の氷属性を選んで組み合わせをタッチする。


[氷属性魔法][未選択][玉][氷][攻撃]→[保存][使用]


 選択できる項目が多いけどとりあえず最低限?で設定してみる。

 グレーだった使用欄が白に変わり選択できるようになった。

 最低でも[属性]一つ、[形状]、[種類]の3つは選択がいるらしい。

 私が氷属性を使う場合[状態]も選択が必須みたいだ。

 と言っても[状態]は雪か氷の二択だったんだけどね。

 雪って何に使えるんだろう。

 時間ある時色々試してみないと。

 保存を押してから使用を押してみる。

 ターゲットの選択が出たので木の一本を選択。


『試しに木に撃ってみますね』


『え、ちょっとま…』


 え?

 調さんが止める前にすでに決定していた。

 私の下に魔法陣が表示される。

 口は呪文のような何かを唱えている。

 氷でできた球体ができていく。


 《魔法の名前を》


 そう表示される。

 えっと、ゲームをやった事がなかったからこういうのわかんないんだけど…。

 とりあえずそのままだけど。


「《アイスボール》」


 そう言うと氷の球体は勢いよく木に向かって飛んでいく。

 着弾。

 凄い音がする。

 続いてミシミシと鳴って木が倒れてくる。

 私達の方へ。


「えっ」


 呆然としてしまった。

 木が倒れてくるなんて思わなかった。

 どうしようどうしよう。

 テンパった頭は答えを出せない。

 その時、私の前にシュティナさんがでる。


「アーツ《スラッシュ》」


 両手で持った剣を数度振るうと倒れてきていた木は輪切りにされていく。

 立ち止まったシュティナさんの横顔を見ると口を動かし続けて何かを唱えているようだ。

 それに続くようにルナが走って前に出る。


 「同じく《スラッシュ》!」


 ルナは両手に持った剣でシュティナさんと動きに違いはあるけど同じアーツを使って倒れてくる木をさらに切って小さくするとすぐにバックステップで下がる。

 シュティナさんはルナが下がったのを確認したからか、足下に展開していた淡く光る魔法陣の力を解き放つ。


 「《トルネード》!」


 小規模だが放たれた風の力は一瞬だけその力を振るう。

 生み出された風は切られ小さくなっていた木を巻き上げ吹っ飛ばす。


『とりあえず移動するぞー。今ので雑魚が集まってくるかもしれん』


 移動する3人にふらふらと飛んでついていく。

 やってしまった。

 私のせいでみんなを危険に…。

 少し離れた茂みに身を寄せる。


『悪い、先に言っておくべきだった。モンスターは倒すと光になって消えるけど木材とかは開拓で使えるからか光にならないんだ。持ち運ぶ時はアイテムボックスに入れるか荷車などの輸送手段がいるかな』


『気にしてるみたいだから言っておくけどスキルや魔法試そうとしてやる人多いから気にしなくて良いよ。今回はお姉ちゃんが倒れてくる位置にいるのにテンパって避けれないと判断したから攻撃しただけなんだよ』


『テンパった妖精さんも可愛かったです』


 3人とも私を気遣ってくれてるのがわかった。

 うん、シュティナさんの発言も多分きっと。

 ルナの差し出された手に乗って気持ちを落ち着かせていく。


『魔法の方は問題ないどころか威力高かったな』


『私達みたいな引き継ぎ組と違って初期装備であの火力は十分だよね。使ったMPも少なそうだし』


 二人に言われて少し安心する。

 現状では足手纏いにはならなくてすみそう。


『気を取り直して今度はユキさんが倒してみよう。丁度獲物が集まってきたみたいだしな』


 調さんが言うと同時に指を向けた方を見る。

 さっき倒した木の近くにホッピンラビットが集まってきていた。

 すぐに離れたのは音に反応してくるホッピンラビットを警戒しての事だったみたいだ。


『そうだな…。氷の矢か槍を上空からウサギに落とせるか?』


『やってみます』


 返事をしてからメニューの魔法を開く。


[氷属性魔法][未選択][矢][氷][攻撃]→[保存][使用]


 先ほど同様一応[保存]してから使用する。

 魔法陣が展開され呪文を唱える。


「《アイスアロー》」


 上空から矢が降り注ぐのをイメージしながら魔力をさっきよりも多めに消費する。

 ホッピンラビットはこちらに気づくが上空にできていた多くの氷の矢が降り注ぐ。

 集まってきていた八匹のホッピンラビットを全て光に変える。


『間違いなくオーバーキルだな。しかも範囲か…』


『流石お姉ちゃん!』


 二人は感想をくれるけどシュティナさんは忙しそうにしていた。

 何となくだけどアレは写真じゃなくて動画を撮ってそう。


『範囲魔法はどうやったんだ?』


『さっきよりMPを多く消費して沢山降ってくるのを思い浮かべてみたんですけど…』


『なるほど、消費MPで範囲が変わる事があるのかイメージが大事なのか。検証することが増えたな』


 そう言って調さんは納得したみたい。


『さて、予定とは違うがウサギ討伐が後一体か。採取は個人クエストだからそっちを進めつつ残りの敵を探すか』


 調さんの提案に三人で頷いて採取を進めていく事にした。

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