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 ギルドを出ると日の光が眩しく感じる。

 それに少し熱いのはギルドには空調の魔道具があるからだろう。

 ルナも落ち着いたみたいに見えるからしばらくは大丈夫だとは思う。

 落ちたら抱きしめてあげた方が良いかな。

 気にしちゃうところあるからね。


「とりあえず昼食かな。どこ行こうか?」


 時間はもうすぐお昼のご飯時。

 どこのお店も混んでそうだ。

 そういえば…。

 メギーアー女王様との口約束のケーキだけど依頼扱いになっていた。

 クエストとして今は表示されている。

 ただ報酬が???となっているのは正規依頼じゃないからって事になるのかな。

 メギーアー女王様がギルドに行って依頼してる姿なんて想像できないな。

 命令してそうだもんね。


「私達が泊まってた宿は?」


 ルナがそう聞く。


「ん~」


 シュティの方から可愛らしい声が響く。


「ファエリ起きましたか?」


「しゅーてぃー」


 シュティが首の後ろに指を持って行き引っ張るとファエリが出てきた。

 ギルドにいる間ずっと静かにしていたのは寝ていたからだったみたいだ。

 目を擦りながら周りを見るファエリ。


「そろそろごはん?」


「そうですね。何が食べたいですか?」


「前泊まってたところのスープ!」


 シュティが聞くと目が覚めてきたのか元気よく答えた。


「決定だな」


 反対意見はないようでラギさんがそう言うと歩き始める。

 場所がわからないスノウさんとリグさんは集団の真ん中にいる。

 プリメラさんはラギさんに熊肉を持ってきてるか聞いている。

 シュティはアエローちゃんと話をしていた。

 私とルナ、ボルグさんが一番後ろにいる。

 ボルグさんはルナの頭をぽんぽんと叩いてから手を掴んで掌に何かを置く。

 ルナに渡したらいつも通り何も言わずにさっさとラギさんの隣まで行ってしまった。

 その手にあるのは陶器のように見えるものだ。

 中に入っていたのは琥珀色をした何かだった。


「お姉ちゃんこれ…」


 鑑定してわかったのは蜂蜜で作った飴だと言う事。

 効果も何もないただの飴。

 容器の中には形は歪だったりするけどそれがいくつも入っていた。


「ボルグさんなりに心配してくれてるんだよ」


「うん」


 ルナは1つ手にとって口に含み蓋を閉めアイテムボックスに入れた。


「甘いくて美味しい」


 ちょっと気にはなるけどサイズ的に口に入らないのが残念。

 甘い物を口にしてホッとしたみたい。


「お姉ちゃん」


「んー?」


「これからは気をつけるね」


「気にしなくても良いよ」


「えっ?」


 不安そうな顔をして私を見る。

 また何か悪い方に考えちゃったのかな。


「ルナがミスしても私達がついてるから大丈夫って事。誰かがミスしたときはルナも助けになれれば良いんだよ」


「うん、ありがと」


 それに答えるように頬をペチペチと叩く。

 反撃のつもりか指でつつこうとしてきたから、掴んではむっと甘噛みしてみる。

 はむはむと何度かやってるとルナの足が止まってる?

 顔を見るとちょっと赤くなってた。

 恥ずかしかったかな。

 指から手を放してもまだこちらを見ていた。


「こらルナ。何してるの」


 そこへ容赦なくアエローちゃんのチョップがお見舞いされた。


「痛っ。何するの!」


「立ち止まってたルナが悪い」


「違うよ!可愛すぎるお姉ちゃんが悪いんだよ!!」


 えっ、私のせいなの?


「はいはい、馬鹿な事言ってないで行くよー」


 そう言ってアエローちゃんはルナの手を引いて進んでいく。

 その間も何が可愛かったかをルナが語って適当に流されていた。

 しかし此所は住人や異人が普通に歩いてる人の通行が多い通りである。

 私はちょっと恥ずかしい思いでルナにしがみついていた。

 宿に入ると女将さんがいた。


「久しぶりだね。連れの連中はあそこにいるよ」


「お久しぶりです」「おひさー」「こんにちわ」


 私、ルナ、アエローちゃんと返事をする。

 奥のテーブルではラギさん達が席についてこちらに手を振り見ていた。


「そういえば私達でチームを組んだんです」


「へぇ、何て名前だい?」


「雪月風花と言うチームです」


「覚えておくよ。何かあったらよろしく頼むよ」


 頷いてから皆のところに合流する。


「遅かったな」


「ルナが色惚けしてた」


「ち、違うよ!」


 アエローちゃんがからかってるけど、色惚けではないと思うんだけどなぁ…。

 そもそもそう言う事はしてないと思うし。


「あー、それよりもユキさん、先に何品か頼んだけど食べたいのはあるか?」


 話を変えるようにラギさんがそんな事を言う。

 私は特になかったので首を横に振る。


「あ、私は何頼もうかなー」


 ルナはメニューを確認し始めた。

 メニューが載っているのは黒板のように消したりできる小さめのボードだ。

 いつも6~8種類ぐらいのメニューが書かれている。

 その間にテーブルに降りて近くに氷像を置く。

 しばらくすると女将さんが飲み物を運んできてくれた。

 ラギさんとボルグさんのはお酒っぽい。

 他のメンバーは果実水だ。

 私とスノウさんで冷やしたり氷を入れたりする。

 全員に飲み物が行き渡ったのを確認して。


「今日私達のチームが無事に結成できました。これから色々あると思いますがよろしくお願いします。乾杯!」


「「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」」」


 私達が乾杯したのを見てか次々と食べ物が運ばれてくる。


「ん、こんなんメニューにあったか?」


 ラギさんが運ばれてきた料理の1つを見てそんな事を言う。


「目出度い事があったんだろ?あたしからの祝い料理さ」


「ありがとうございます」


 私がお礼を言うと各々お礼を口にする。

 ラギさんは口では文句を言いながらもせっせと皆に料理を取り分けている。

 やっぱり面倒見が良いよね。

 後気づいたのはボルグさんが意外に色々できると言う事。

 はちみつ飴を作ったのはボルグさんだったのだ。

 はちみつは私が分けたのを使ったと言ってた。

 入れてあった容器は街で買ったらしい。

 それにしても思ったよりお客さんがいないのかな?

 周りを見るとちらほらと空いている席がある。


「うちは宿屋だからね。食事目当てに来る客はアンタ達ぐらいだよ」


 私がキョロキョロしてるのに気づいたのか女将さんがそう笑って教えてくれた。

 迷惑ではなかったようでちょっと安心する。

 女将さんは料理を置くとまた厨房の方へ戻っていった。


「お、きたきた!」


 ラギさんが嬉しそうな声を上げると皆がそれを見る。

 熊肉料理みたいだ。

 ファエリはスープを貰って美味しそうに飲んでいる。

 私もお肉はまだ食べるつもりはないから野菜炒めを食べる。


「そういや」


 みんながパクパク食べてる中、ラギさんが思い出したように言う。


「このゲーム食い過ぎると太るらしいぞ」


 そう言った瞬間アエローちゃんとルナが固まってラギさんの方を見た。

 それを見てプリメラさんは面白そうに見てる。


「空腹ゲージは存在しないけど空腹が長く続くとデメリットがあるように、食べ過ぎても吸収できる量に上限があってデメリットが発生するんでしたか」


「お、シュティナさんは知ってたか」


「えぇ、それより呼び捨てで良いですよ。皆さんも」


 シュティは知ってたみたい。

 だからルナやアエローちゃんみたいには固まらなかったんだね。

 それと呼び方もさん付けじゃなくて良いと伝えていた。

 皆もそれに頷く。


「私も最初に聞いたときは恐怖を感じたわー。ゲームでもダイエットが必要なのかって」


「一瞬本気で食べて良いのか迷いましたよ…」


 プリメラさんは食べ過ぎでなければデメリットは無い事を把握したからか気にしてないみたい。

 アエローちゃんはびっくりしたみたいでちょっとビクつきながらも食べている。

 そういえばスノウさんは気にならないのかな?

 私が見ると視線に気づいたようでスノウさんが口を開く。


「わたくしは人族じゃないのでお肉がついたらこっそり捨てますわ」


 何でもないようにそう言った。

 と言うかお肉がつく事あるのかな。


「魔力的なモノは付くらしいですわ」


 一応チュートリアルの時に教えて貰ったそうだ。

 それにしても取って捨てれるって、何かの素材にできそうだよね。

 そんな事を考えながらラギさんの方を向く。


「何でそんな話をしたんですか?」


 気になったので聞いてみる。


「あぁ、掲示板で話題になってるプレイヤーがいてな。そいつ美人だけど日に日になんつうか…。ぽっちゃりしてきたって話題になってたんだよ」


「その人はダイエットしてるんですか?」


「イヤ、今でも色々食いまくってるらしいぞ?付いた二つ名は暴食だ」


「女性としては喜べない二つ名だね」


 ラギさんの教えてくれた情報を聞いてアエローちゃんが顔をしかめる。

 最初美人だったって事は現実でもそれに近い背格好だったんじゃないかと思うんだけどなぁ…。

 ルナもそこまでおもいっきり盛ってないし弄れる限界がある気がするんだよね。

 そう思ってルナの方を見ていると。


「お姉ちゃんなんで私の方を見たのかな?」


「何でもないよ」


 相変わらず鋭いなぁ…。

 視線を逸らして止まっていた食事を再開する。

 うっ、この野菜結構苦いかも。

 口にした毒々しい紫の野菜が凄く苦かった。

 時々ゲーム特有の野菜に罠がある気がする。


「それでその人はどうしてるんですか?」


 アエローちゃんが気になったようで聞く。


「食べ過ぎてお金がなくなったから、自分で材料集めて作って食ってるらしい」


「食べるのはやめてないんですね…」


「暴食だしな。出禁の店も増えたのも原因だとか何とか言われてたか」


「食べ過ぎで、ですか?」


「それ以外考えられねえな」


 その人ある意味凄いよね。

 食べるために全力でやってるんだもんね。

 何がその女性を食べる事に執着させるかちょっと気になるかも。

 それからは食べ終わったらどうするか話をする。


「俺とボルグは家具を見てくる予定だ」


「ついて行っても良いか?」


「おう、いいぜ」


 リグさんも一緒に行くようだった。


「私は拠点でファエリとゆっくり過ごします」


「ほんと?やったー」


 シュティとファエリは拠点で過ごすみたい。

 残った4人に目を向ける。


「私はお姉ちゃんと買い物!」


「わたくしも同じくですわ」


「面白そうだしついて行く」


 ルナ、スノウさん、アエローちゃんは一緒に買い物だね。


「ん~、私は懇意にしてた生産職の人に挨拶してくるわ。これからはスノウちゃんに頼む事が増えそうだし」


 プリメラさんは服を作ってくれていた生産職の人に挨拶に行くのかな。


「プリメラさん、今度私に紹介して下さいませ。その方とは熱く語れそうですわ」


「良いわよー。でも熱くなりすぎて溶けないでね」


「ユキ様のおかげで大丈夫ですわ」


 スノウさんとそんな冗談を交わしていた。

 とりあえず私はルナ、アエローちゃん、スノウさんと行動だね。

 行くところはケーキ屋は確定として。

 以前行った本屋と魔道具屋も見に行きたいな。


「「「「「「「「「「ごちそうさまでした」」」」」」」」」」


 話ながら食事を済ませた私達は片付けをしていく。

 と言っても私とファエリは直接運ぶ事ができない。

 それに念力を使うと危ないかもしれないとやる事は殆どないんだよね。

 やろうとすると止められるし。

 片付けが終わりお店を出ると決めてあったメンバーで行動する事に。

 一応ラギさん達に一緒に行かないか私が聞いたんだけど遠慮すると断られてしまった。

 女性の買い物は長いからだそうだ。


「じゃあ、私達も行こうか!」


「「おー」」「はい」


 ルナの言葉で私達は歩き出す。

 とりあえず私の方でクエストにもなってるケーキを買ってから商店街を回る事に。

 メギーアー女王様には時間までは指定されてないから多分大丈夫のはず。

 いつもケーキを買っているお店でホールケーキとカットケーキを買っていく。

 量はちょっと多いかなと思うぐらい。

 お金も結構飛んでしまうけど、ルガードさんに渡されたお金が結構あったのでここから出す事にした。

 一応ガイさんはいなかったけど食事中にケーキを買う事は伝えてある。

 依頼分以外にも妖精達の分だ。

 今は悪戯とワツシワのお世話だけしか頼んでないけど色々手伝って貰えたらと考えてる。

 私達が食べる分もあるけどね。


 ケーキ屋を出るといろいろなお店を回る事にした。

 殆どが冷やかしになっている。

 時々屋台でスノウさんやアエローちゃんが買い食いをしていた。

 ルナもモノを見て買って食べていて、私も食べれそうなものなら少し分けて貰った。

 気にしてなかったんだけど周りの人が可愛いとか言ってるのを聞こえてしまったのがいけなかった。

 ルナに分けて貰って食べてるところって人から見れば小動物に餌をあげてるように見えるんだと思う。

 肩に乗ったリスが両手で餌を持って食べてるようなイメージになるのかな。

 そのリスを私に置き換えたのがその時の状況だったんだと思う。

 それに気づいたら恥ずかしくなったのでルナにお願いして久しぶりに保冷バッグを使わせて貰った。

 最初は渋ってたルナも必死にお願いしたら納得してくれたみたいで頷いてくれた。


 途中で前に本を買ったお店が近かったので寄って貰ったんだけどお店は開いていなかった。

 しばらく休むと張り紙がされていたので年が明けて落ち着いてからまた来ようと思った。

 魔道具屋につくと私は飛び店主のところへ行く。

 ルナが付いてきて2人はお店のモノを見ているみたいだ。


「いらっしゃい、可愛らしい妖精さんとお嬢さん。何をお探しかな?」


 店員さんはモノクルを付けた髪が長めの優しそうな人だ。

 恰好は白いローブを羽織っていてこれぞ魔術師って感じなのかな?

 私はあまりそういうの詳しくないから何となくだけどね。


『ルナ、練習で作ったの売ろうと思うんだけど』


 私がそう言うと頷いてアイテムボックスから練習で作った魔水晶で作った魔道具を出す。

 どれも最初の方に作ったヤツを出してくれたみたいで出来は良くない。


「これは買い取りして貰えますか?」


 ルナがそれを差し出すと店員さんは一瞬目を細めた。

 調さんが鑑定したときと同じに見えた。


「確認させて頂きます」


 そう言って引き出しからテーブルにクッション代わりなのか布を敷きそこに置いていく。

 そして1つずついろいろな角度でから見たりして全部確認した。


「買い取りをできるか否かですと是非買い取らせて頂きたいですね。しかしこれほどのモノをどこで手に入れたのでしょうか?」


「そんなに良いモノなんですか?」


 思ったより店員さんの反応が良かったからルナが聞く。


「そうですね。まず魔水晶製という点が素晴らしい。ですがそれよりも魔道具の刻印というモノは表面にするモノなのですよ」


 ルナも言われて取りだした練習品を見る。


「内部にありますね」


「えぇ、それをするには固定した状態で一回の刻印で加工しないとできません。分ければ必ずズレますからね」


 なるほどだから普通は表面に下書きをして刻印していくって書いてあったんだ。


「通常の表面に刻印されたモノは使用していくと欠けてしまい使えなくなってしまう事が希にあります。しかしこれは内部に加工されているので割れない限り使い続ける事ができるかと思います」


「と言う事は高いんですか?」


「そうですね、確かに加工は荒く品質で言うなら下に含まれるでしょうが魔道具としては上と言っても良い。理由は表面を手直ししても魔道具として使えなくなると言う事が無いからです」


 そう言ってこちらをジッと見てくる店員さん。


「もう一度聞きますが、これをどこで?」


『お姉ちゃんどうする?』


『私が話してみるよ』


『わかった』


「作ったと言ったら信じて頂けますか?」


 そう言うと私の方をジッと見てからフッと力を抜き微笑む。


「もちろんです。その可能性は考えていましたしね。少々お待ちを」


 店員さんはそう言うとお店から出て何やら札をかけて扉に鍵をかけ中が見えないようにして戻ってくる。

 そしてテーブルに置いてある魔道具らしきモノにフレ起動させる。

 何となくギルドにあった防音の魔道具が起動したときと似てるかも?


「お待たせしました。あぁ、防音の魔道具も起動させて頂きましたがよかったですか?」


「あ、はい。大丈夫です」


「それでこれらを持ち込んで妖精さんはどうしたかったのでしょうか?」


「え、お金になったら良いなと…。チームを立ち上げたのですが資金不足なので」


 ルナとシュティはお金を持ってるけどチームとしてはまだまだ資金不足だからね。


「なるほど…。多分ですが持ち込まれたモノと同じように刻印されていればどこでも高く買い取って頂けますよ。他の店に持ち込んで競わせれば値段も上がるでしょう」


 んん?

 何でそんな事を教えてくれるんだろうか。

 安く買って高く売れば利益が出てお店としては良いんじゃないかな?

 そう思っていると。


「もし良ければうちのお店と懇意にして頂けたらと考えています。なので交渉ができないかと思いましてね」


 そう笑って言ってくる。


「それは契約のような形でしょうか?」


「契約して頂けるならそれが理想ですが口約束程度で。妖精さんも信用できるかすぐには判断できないと思いますので」


 そう言われルナを見ると判断できないようで首を振っている。


「もし私が他の魔道具の魔法陣や構造などが知りたいと言ったら?」


「ふむ、少々お待ち下さい」


 そう言っておくに引っ込むと沢山の本を抱えて戻ってきた。


「これが今店にある魔道具の本ですね。こちらから空調に冷蔵、これは鍛冶屋の魔道炉だったかな?これは何だったか…」


 そう言って並べて説明しようとする店員さん。

 途中からわからなくなってるところはちょっと不安に思える。

 あれ、でも普通こう言うのって秘密じゃないの!?


「む?お嬢さん、何を驚いているのですか?」


「イヤ-、こう言うのって秘密なんじゃ?」


 ルナも同じ事を思ったようで思わず聞いていた。


「あぁ、そうですね。しかし私が作った魔道具では妖精さんの作ったモノに遠く及びません。と言うかこれは私では無理です」


 そう言って練習で作った魔水晶を掲げ見る。


「はっきり言って雇いたいほどですね。というかですね、人間の魔力量では内部刻印はほぼ不可能なのですよ。ポーションを飲みながらでも魔力欠乏症になるでしょうね」


 そう言われて思い出すのは刻印していたときの魔力消費。

 私はMP特化と言うのにしているから余裕があったけど普通なら一回でやるのは確かに不可能だ。

 以前ルナに聞いたらMPは200もないって言ってたからだ。

 確か減って少ない状態が長く続くと慢性の魔力欠乏になる。

 それにポーションの連続使用も一定回数を使い続けると回復量が落ちるデメリットがあるんだっけ?

 何かポーションに関してはあやふやだから後で確認した方が良いかも。


「そちらのメリットとしては知識が増える事でしょうか?あぁ、売るときは3:7で売らせて頂ければありがたいですね。もちろんこちらが3割です」


「それってそちらにメリットがあるんですか?」


「もちろんです。ちょっと荒いところを手直しすれば品質を少しは上げる事ができますので高級品としても問題ないでしょう。これほどのモノを扱えれば貴族の方にも売り込んでいけます」


 そう話す店員さんの言葉に嘘はないように思える。


「あぁ、でも貴族に積極的に売り込むつもりはありません。厄介事が増える可能性もありますからね。売ってもお得意さんぐらいでしょう」


『どうしようか?』


『お姉ちゃんが良いと思えば良いんじゃないかな』


 私が聞くとルナは反対ではないようだ。

 印象は多分同じで悪くないんじゃないかな。


「私は悪くないと思うのですが…」


「そうだ。とりあえず答えは保留にして、これらの品は預かり売らせて頂く。売れた物は先ほど言ったように3:7で、売り上げの持ち逃げを避けるために本の方は妖精さんに預けると言うのはいかがでしょうか?」


 何やら閃いたとばかりに店員さんはそんな事を言う。


「私が本を持ち逃げする可能性があるとは思わないんですか?」


「確かにそうなったら痛手ですね。かなり貴重なモノですので。しかし、それで信用が少しでも得られれば今後に期待できると思いませんか?」


 そういえば忘れてたけど魔水晶って出荷しても大丈夫なモノなのかな…。

 ばれたら拙いモノなら私またやらかしちゃってる!?


「ぁ、そういえば魔水晶って手に入りにくいんですよね?」


「あー、そうでもないですよ。気になるなら見えないように加工しちゃえば問題ないでしょう。魔水晶を沢山売るなら年が明けて王国からの船が来てからが良いかもしれません」


 問題は無さそうなのにちょっと安堵する。


「王国からの船が来た後が良いのは何故ですか?」


「此所でまだ未発見の素材は本土から運んでいるんですよ。もし良ければ魔石の加工をして貰っても良いですか?」


 加工か。

 見せても多分真似できないだろうし問題はないんだろうけど。

 迷ってルナを見上げる。


『やってみたら?』


『わかった、やってみる』「失敗しても良いなら」


「ははは、魔石なんて石を拾って魔力を込めれば作れるので問題ないですよ」


「「えっ?」」


「おや、知りませんでしたか。魔具工の初歩は石ころに魔力を流して魔石にする事なんですけどね。えーと、モノはこれですね」


 そう言って引き出しから取りだしたのは指輪に付いてる宝石くらいの透き通った石。


「これは先に形を作っておいて魔力を流して魔石にするんです。魔石にすると魔力によって色が変わり透き通ってくるのですぐわかりますよ」


 魔石を受け取って何となく手をかざす。

 魔法陣は水を出す魔法陣で文字はこちらの。


「《刻印》」


 モノが小さかったからか時間はそこまで掛からなかったけど消費したMPは魔水晶よりも多かったように感じる。


「流石ですね。形成は上手くいったんですが小さくなりすぎて手に余ってた魔石だったんですよね。これも売り上げは3:7でいいですか?」


「はい。もし良ければ小さくて加工できなかったの全部預かっても良いですか?」


「お願いできるなら是非。そういえば自己紹介がまだでしたね。この店の店主で魔具工をしているサロユです」


「チーム雪月風花のマスターで雪妖精のユキです」


「チームメンバーのルナです」


「アエローでーす」


「スノウと申しますわ」


 離れてた二人も話は聞いてたみたいで近くに来ていた。

 また今度来る事を約束して今日は帰る事になった。

 もちろん本と魔石は預かって、魔水晶は少しだけ売ってみると言っていた。

 拠点に戻ると待っていたガードにケーキを渡すとお礼を言われすぐにガードは帰って行った。

 妖精達もケーキを配ると嬉しそうに食べていた。

 買ってきていたお茶を入れて私達もケーキを食べつつ話をして過ごすとこっちで夕方になったので私は落ちる事にした。

 ルナも一緒にログアウトするみたいだった。

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