一勝 ー僕の夢ー
第1章 ~僕の夢~
僕にはどうしても叶えたい夢がある。“彼女が欲しい”だとか“ゲームでレベル300突破する”だとかそういうんじゃない。そういう夢も、確かにいいかもしれない。その夢はきっと叶えられるから。
僕の夢、どうしても叶えたい夢。それは“陽太と同じ高校でバスケの試合に出てインターハイで優勝すること”。これが僕の夢。この夢を叶えたいと思ったのは小学校の頃だった。
―遡ること小学校6年生―
「ねぇねぇ涼ちゃん!僕ね、高校生は帝明高校に入ってバスケがしたいんだ!」
「ふぅん...。」
「ふぅんって、涼ちゃんも一緒に入ろうよ!帝明高校のバスケ部!超強豪校なんだから!」
「強豪だから、もしかしたら試合に出ることもできないかもしんないね。それに他にもたくさん高校はあるのになんでひと山向こうの高校なんだよ。」
「だってそこの高校、毎年たくさんの強いバスケの選手出してるんだよ!僕、涼ちゃんと一緒にバスケずっとしてたいもん!入るなら強い所で!」
「まぁ、どうせ行きたいところもないし、母さんに聞いてみるよ。」
「ほんと!?やったぁ!!!」
その時は、僕も軽い気持ちだった。でも、小さい時から一緒だから、なんとなく陽太の隣に居なきゃという使命感があった。陽太は、明るくて素直だけど、結構なドジで、すぐ風邪ひく。だからほっとけないっていうか、そばにいてあげなきゃっていうか...物心ついた時からそうだった。
そんなある日、僕は1人で留守番しているとき突然意識が遠くなって倒れた。目が覚めたら僕は病院に居た。白い天井しか見えなかった。
(...なんで僕ここに居るんだろう...)
「涼太くんは、○○○○という病気です。あまり科学的にもはっきりと解明されていない病気なので...完治というのは...難しいでしょう。」
(...僕、そうだ。倒れたんだ。...病気...なのか。バスケ...できるかな...)
先生と話し終えた母さんは...泣いていた。
「涼太...落ち着いて...聞いてほしいの...」
「僕、バスケ...できるの?陽太と約束したんだ。」
すると、先生が優しく僕に言ってきた。
「バスケは続けられるよ。今のところは。だけど、成長していくにつれて病気も悪くなっていく。その時は...もしかしたら厳しいかもしれないね。」
「そんな...僕、陽太っていう友達と帝明高校で一緒にバスケやろうねって約束したんだ。その約束、出来なくなちゃうってこと?」
「毎日、ちゃんとした生活を送って元気に過ごせていたら、その病気もよくなっていくかもしれない。だから、十分に気をつけるんだよ。」
「わかった。ありがとう、先生。」
「病気に負けるなよ!自信をもって、いつも健康な生活を送ってね。」
「うん。」
その時僕は、陽太との約束を叶えたいと思った。