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13本目 雑談

「太郎はイーストサイドさんの目が良く見れるよな」


その後に、他の男子クラスメイトに話しかけられる。


「目って何だ?」


「ほら、あの大きなブルーの瞳だよ。イーストサイドさんは、可愛いのに、とてもいい子で、相手が誰でも目を合わせて話してくれて、しかも微笑んでくれてるんだぜ。とてもじゃないが、直視できない」


「そんなに気にすることか?」


「何かあの綺麗過ぎる目に見られると、ずっとは目を合わせてられないんだよ。吸い込まれそうで、それで、自分の中身を見られてるみたいでさ」


「俺は別にやましいことは考えてないからな、目を逸らす用件がない」


太郎にとって、ウエンディの青い瞳はそこまでポイントではない。彼の目線は目よりやや高いので、正確には直視していないのもある。


「イーストサイドさんが、あれだけ男子に触れてるのも珍しいしな」


「そうか?」


「女子は可愛い子がいると、結構抱きついてるのを見るけどな。あれはあれで眼福だからいいけど」


「そういうことを言うから駄目なんじゃないのか?」


「まぁいいんだよ。あれだけフレンドリーなのに、男子に対しては割りとガードが固かったんだ。だから、仁志はすげーなって思うんだよ」


「はー、そっか」


太郎はウエンディにとりあえず嫌われていないことだけに安心していた。


「いやー、銀次郎と話し込みすぎた。あいつのツインテールへのこだわりはすごいな。はやく喜多の写真をとってやりたいところだ」


時刻は下校時間ギリギリ。もう部活終わりの生徒もほとんどいないのだが、太郎はまだ学校にいた。


髪フェチ仲間の銀次郎と語っていたら、ついこの時間になってしまったというわけである。


「ウエンディと詩ちゃんの写真なら撮らせてもらえたんだけどな。やっぱり写真じゃ限界はあるが、眺めるのが好きな俺にはなかなかいいものだ。まぁいいや、とりあえず帰って勉強すっか」


「はぁ~」


太郎が意気揚々と帰ろうとすると、近くからため息が聞こえてきた。それが知らない人なら、太郎は別に気にも止めなかったがその対象が知り合いで、しかも教師であれば気にならざるを得ない、


「軟瀬先生? どうされました」


「あ、仁志くん、な、何でもありませんよ」


しかもその相手は、太郎のお気に入りヘアーを持つ、うぐいすであればなおさらだ。


「何でもないってことは無いんじゃないですか。明らかに聞こえるため息をしてるんですから」


「で、ですけど、大人の悩みですから! 仁志くんは気にしないでください」


そう言って、うぐいすは走っていってしまった。


(うーん、でも何か調子が悪そうだな。しゃべるときにゆらゆら揺れるシルクヘアーの揺れが悪い)


太郎は髪を見ればその人の調子が大体分かる。これで、相手の感情もちゃんと分かればアンジャッシュ状態にならなくていいのだが、そこまでうまいことはいかないのである。


「まぁ実際、先生の悩みは俺が力を貸せることもないだろうしな。あまり踏み込まないほうがいいか」


そう思って、太郎は時に気にせず帰宅した。


「あ、詩ちゃん、もし良かったら、俺にも今度家事手伝わせてくれない?」


夕食の席で、太郎は詩にそう提案した。


現状、この寮での食事当番は週4ほど詩で、残りの3日を明日香、ウエンディ、うぐいすでローテーションしている。太郎は男ということもあって、料理には参加していない。


「……、え。でも」


「どういう風の吹き回しかしら?」


明日香が疑いの眼差しを向ける。


「別に他意はねぇよ。ただ、離れにいるとは言っても、ほとんど皆と同じ条件で住んでてさ、俺だけサボってんのもどうかと思っただけだよ」


「別に大丈夫よ。ねぇ、詩ちゃん、ウエンディ」


「…………いえ、もしよければ、一緒にお料理とかしてみたいです」


「買出しとかタローも知っておいたほうがいいデス。誰か体調を崩したときとか便利デス」


「え……。2人とも賛成なの? 男がこの女子寮に入る時間が長くなるのに?」


「普通の男の人なら嫌ですけど……。太郎さんはいい人ですから」


「タローなら大丈夫デス。明日香もいうほど嫌ってないはずデス」


「で、でも~。あ、先生、先生はどうです? いくら私たちが言っても、ここに仁志くんを住ませてる先生の許可が下りないと……。先生?」


「……、ああ、はい。何でしょうか?」


「あのー、聞いてました?」


「ご、ゴメンナサイ。聞いてませんでした」


「大丈夫デスカ?」


(うーん、やっぱ調子悪そうだな)


うぐいすの調子の問題があり、結局太郎が食事の準備を手伝う話は保留となった。



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