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12本目 騒動が終わって

「あー、思ったより痛てぇ……」


太郎が次の日に目を覚ますと、思いのほか自分の体が痛くなっていた。


「……、おはようございます。起きてますか? もう明日香さんとウエンディさんは出られてますよ」


「お、マジか。いててて」


「……、昨日喧嘩したんですよね……」


「あ、ああ。悪いね。せっかく詩ちゃんは昨日俺の味方してくれたのに、結局暴力振るっちゃってさ」


(やべぇな。詩ちゃんに嫌われるかな……?)


太郎の心配はそこであった。


「……い、いいえ。ウエンディさんとお姉ちゃん、それに明日香ちゃんからも話は聞きました。ウエンディさんが危なくなったから手を出したんですよね。それは正しいとおもいます」


「え、でも詩ちゃん暴力は嫌いなんじゃないの?」


「……、人を怖がらせたり、言うことを聞かせるための暴力は嫌いですけど、誰かを守るために仕方なくすることは、そこまで間違ってると思いませんよ。太郎さん、私そこまでおバカじゃないですから。付き合いはまだまだ短いですけど、太郎さんが意味の無い暴力を振るう人だとは思ってませんから」


「そっか、良かった。つい切れちゃって、手を出しちゃったから、詩ちゃんには嫌われるかもしれないと思っててさ、これで安心したよ」


「……、私に嫌われたら悲しいですか?」


「ああ、もちろん。詩ちゃんは(綺麗な髪を持った)大事な子だからね。仲良くしてたいからさ」


「……、もし私も何か危ないことがあったら、ウエンディさんみたいに助けてくれますか?」


「もちろんだよ。できるだけ手は出さない方向でね。あ、いかんいかん。俺も学校行かないとな」


「……、あそうですね。話し込んでちゃいけません。行ってらっしゃい」


太郎は急いで学校に向かった。



(ふー、嫌われなくて良かった。切れるとつい我を忘れちまうからな。ああいう面倒ごとはできるだけ避けないとな)


太郎は急いで登校しながら、安心と反省をしていた。


(良く考えたら、今回はうまいこと昇華してもらって、うらみ買わなかったけど、最悪集団で復習されてもおかしくなかった。夜に出歩くのは控えよう)


「おーす、おはよう」


太郎は教室に気楽に入る。


ほとんどが中学からの持ち上がりで、高校から入学した生徒はいわゆる転校生に近い状態になる。だが、太郎は同じクラスに明日香とウエンディがいて、完全に1人ではなかったし、進学によるクラスメイトの変更が少ないこの学校では、太郎のような存在はむしろ注目を受ける。


趣味は変わっているが、基本的に社交性のある太郎は、既にある程度友人がいた。


だから、気軽に声をかければ、おはよー、の一言くらいは帰ってくる。


シーン。


「ん?」


ところが、太郎が教室に入った瞬間、クラスのざわめきが治まって、一瞬沈黙状態になった。


「あ、仁志くん、仁志くん」


「聞いたよ。昨日倒したヤンキーって、この辺りを仕切ってた最強のグループのリーダーだったんだって?」


そのうちの何人かが太郎に声をかけてきた。


「え? そうなの?」


太郎はそんなことは知らなかったので、きょとんとするばかりだ。


「ああ、俺の友人もひどい目に合わされたって聞いた」


「でも喧嘩強いし、その割りには対したことしてこないから、警察のお世話にもなりにくくて、面倒だったんだよね」


「でもそのリーダーが倒れて、2番目だった義理堅い人に変わって、面倒ごとは減るって聞いたよ」


「すごいねー、仁志くんまじすげー」


「そ、それほどでもないけどなー」


あまりいいことをしたつもりはないが、やはりクラスメイトから褒められると悪い気はしない。


「それでさー、仁志くんはイーストサイドさんのことが好きなの?」


「へ?」


ところが調子に乗っていたところに、1つ気になるフレーズがとんできて、太郎は止まる。


「だって、大事なもんを傷つけたとか言ってたじゃん。私偶然そこにいたんだよねー」


女子が1人ニヤニヤしながら太郎に声をかけてきた。


「あー、まぁここに来て最初にお世話になった子の1人だからな。そんな子が目の前でひどい目にあってたら、それくらいはするでしょ」


「ふーん、まぁそういうことにしておこうかな。あと皆、お邪魔しちゃ悪いから、みんな席にもどろー」


その女の子が席を離れると、皆がニヤニヤしながら席を離れる。


「はー、疲れる。ん? 邪魔ってなんだ? それになんかいい香りが……? うわぉっ?」


太郎が横を見ると、いつの間にかウエンディが超至近距離にいた。


「タロー、手怪我してマス。大丈夫デスカ?」


しかも右手を両手で持って、顔を近づけていた。


「うわー、太郎うらやましい。あの真っ白でスベスベな手に包まれるなんて」


「俺はあの青色の瞳がたまらないな~」


「いやー、あのスタイルよ。バランスが完璧なお人形さんみたいだもん」


(あー、髪が触れて気持ちいい~)


欧米人の血が入っている大きなブルーアイズ、詩とは違う意味での白い肌、日本人とは明らかに異なるスタイルは男子はもちろん、女子にも人気があった。


もちろん太郎には、そこは問題ではなかったが。


「ああ、大丈夫だ。ウエンディこそ怪我はないか?」


「ううん、大丈夫デス。汚されるところデシタけど」


「なんか言い方が違うような気がするが、まぁ良かったよ」


「ウエンディ、授業もはじまるから、席に戻りましょ」


明日香がウエンディを止めて、席に戻される。


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