一番大事なモノは『食』
なんか疲れた、巻いて行こう。
お茶の準備。
適当に入れる。
紅茶? 日本茶以外、飲みませんから。
次、洗濯。
実家には洗濯機が無かったので懐かしい気持ちになったよ。
洗濯板………同士よ!!!
昼休憩、ひま~。
礼儀。
まったく分からんかったよ。
日本の礼儀はそれこそ叩き込まれてはいるが………
西洋のそれは分からん。
着物を寄こせ!
以上、ダイジェストでした。
そしてベットイン!
「あ~、疲れた~、温泉入りてぇ~」
この世界は基本タオルで体を拭くか川で水浴び、ちょっと豪華でシャワーを浴びられる程度の水道設備しかない。
温泉が湧いている所も探せばあるかも知れんが、天空の城に水道設備は期待できない。
温泉は年内に見つけられればいいが、シャワー設備は出来るだけ早く欲しい所だ。
料理については、朝から研究しよう。
ダシは欲しい。
魚介系は割と上手く行ったので、今日の余りに色々足してみよう。
小麦粉に似た物はあったので麺類を作ってもいいかもしれない。
ラーメンやうどん、でも肝心の醤油が無いんだよな。
米はあったし、味噌ぐらいならあるかも知れん。
何か大事な事を忘れている気もするが、今日は疲れた。
合格発表は明日の朝らしいので、今日はもう寝る事にしよう。
「お姉ちゃんまた負けたの?」
大の字で畳に転がっている私を見下ろす妹。
妹よ。ボロ雑巾のような姉を見て、そんな笑顔で言う事かね。
この感覚だと、左腕……3日は使い物にならんなぁ~。
「抗ってないで、身を任せちゃえばいいのに」
その感覚が分からん姉に過度な期待はしないで欲しい。
「紗希、次はお前の番だろう」
「あ、ホントだ! 教えてくれてありがと、お兄ちゃん」
兄がいつものシケた面で私の横に腰を下ろす。
「またボロ雑巾か」
悪かったな、どうせ落ちこぼれですから。
「お前は本家では唯一まともな人間だからな、出来るなら家を出た方が良い」
実の妹にそこまで言いますかこの兄は。
「勘違いするな、善意で言ってやってるんだ」
善意の押し売りは迷惑だよ。
私だって才能が欲しい。妹の半分でいいから。
「お前、血の衝動が無いだろ」
あ~、やっぱり分かる?
無いんだよ、まったく、これっぽっちも。
「潜在能力ならお前の方が上だと思ってたんだが、それを活かす才能が無いんじゃ笑えないな」
悪かったな、才能なくて。
「妹は100年に1人の天才だとか言われちゃいるが、俺でさえ壊れてるとしか言いようが無い」
可哀想だよ、と呟く。
体を起こし、妹の戦いを見る。
それは試合では無く死合、稽古では無く殺し合い。
それでも、妹は楽しそうに、愉しそうに笑っている。
何だろうね、この劣等感は、人外魔境だよ。
「お前は家を出ろ。まともでいられる内に、こんな壊れた血筋とは縁を切った方が良い」
その後は、他愛もない雑談。
意識が霞む。
ああ、夢か。