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なんで?

 今日から高校生だ。

 少年の名前は福田春人。スポーツは得意だが、特定の部活に縛られるのが嫌で、帰宅部を選んだ。

 入学式が終わった帰り道。じいちゃんの家に寄るのが春人の日課だ。

 ふいに、ポケットのスマホが震えた。親友の黒崎壮介からだった。

「もしもし、春人か!」

「うん、壮介? どうしたんだよ、そんなに慌てて」

「春人のじいちゃんが、じいちゃんが……っ!」

 受話器越しの声は明らかに異常だった。

「落ち着けって。深呼吸しろ、壮介」

「春人のじいちゃんが道で倒れて……いま、僕が呼んだ救急車に一緒に乗って、病院に向かってる。住所をメールするから、すぐ来てくれ!」

「わかった、すぐ行く!  じいちゃんを頼む!」

 通話を切ると同時に、春人は走り出していた。スマホに届いた地図を叩き込む。 (じいちゃん、死ぬなよ……!)

 全速力。足がちぎれそうなほどの衝撃が地面から伝わるが、構わず加速する。

 道ゆく人々が、弾丸のような速さで駆け抜ける僕を見て、驚愕の表情で振り返るのがわかった。

 走りながら、同級生の千田さきに何度も電話をかける。

「……くそっ、なんで出ないんだよ!」

 呼び出し音だけが虚しく響く。彼女なら、何か知っているはずなのに。

 病院に到着すると、特有の消毒液の匂いが鼻をついた。

 受付で名前を告げると、看護師が素早く病室の場所を指し示してくれた。

 廊下を突き進むと、そこには肩を落として座る壮介の姿があった。

「春人!  遅いよ!」

「悪い……。さきにも電話してたんだけど、あいつ、全然出なくて」

 肩で息をしながら病室を覗くと、じいちゃんは静かに眠っていた。

「医者の話だと、しばらくは入院が必要だって。……でも、春人。変なんだ」

 壮介が声を潜めて言った。

「じいちゃんが歩いていたら、急に、どす黒い影のようなものがじいちゃんを取り囲んだんだ。それで、じいちゃんは崩れるように倒れて……」

「黒い、影……?」

「ああ。でも、周りの人たちに聞いても、そんな影なんて見てないって言うんだ。僕の見間違いなのかな……」

 壮介の震える声を聞きながら、僕はじいちゃんの寝顔を見つめた。

「いや……。じいちゃんが起きたら、さきも呼んで話をきいてみよう。あいつなら、何かわかるかもしれない」

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