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第7話:セシリアさまといっしょ

第7話「セシリアさまといっしょ」


朝食後、「お着替えしましょうね」と、マキを膝の上に乗せた。手慣れた様子でオムツ(マキにとってはこれ以上ない屈辱の象徴だ)を替えようとするリノの指先が、再びマキの精神を逆撫でする。


「……ふふ、見てくださいマキ様。すごくちいちゃくて可愛すぎます。あんなに成熟して、男たちの視線を釘付けにしていた二十三歳の頃のそれよりも、今のこの無垢でちいちゃな方が、断然可愛らしくて私は好きですよ」


マキ(……やめろ……。リノ、その言葉を、口に出すな……っ!)


羞恥で爆発しそうなマキに対し、リノはどこか独占欲の滲む、暗い熱を帯びた瞳で囁き続けた。


リノ「これなら、不潔な男の人のモノなんて、絶対に受け付けさせません。……あはは、そもそも、このサイズじゃ『受け入れられない』ですよね? ずっと、私だけのマキ様でいてくださいね」


マキ『リノ……っ! 貴様、私を一生このままにするつもりか!?』


マキが怒りと羞恥の混じった思念を送った、その時だった。


**ドンドン!!** と、育児室の重厚な扉が激しく叩かれた。


セシリア「リノ! マキ様の様子はどうだ!? いても立ってもいられず、みんなで来てしまった!」


セシリアの声だ。続けざまに、他の女騎士たちの声も聞こえる。


マキ「なっ……!? ま、待て! 今は……っ!!」


マキはパニックに陥った。今、自分は一糸まとわぬ姿で、リノの膝の上で弄ばれ、顔を真っ赤に染めて涎を垂らしているのだ。二十三歳のプライドが、この姿を部下に見られることだけは断固拒否している。


リノ「あら、セシリア様たち。……マキ様、どうしましょうか?」


リノは慌てる様子もなく、むしろこの状況を楽しんでいるかのように、ニヤリと口角を上げた。彼女の指は、あろうことか扉の向こうに部下たちがいるというのに、マキに熱い口づけをしたのだ。


マキ「あ、う……あぶぅっ!! ぁ、あぁぁぁーーっ!!」


(やめろリノ! 開けるな! まだ開けるな……っ!!)


マキの必死の懇願を余所に、リノは片手でマキを抱き上げ、もう片方の手で扉の鍵へと手を伸ばした。


ガチャン、と非情な音を立てて扉が開かれた。


セシリア「マキ様! 失礼いたします!」


勢いよく踏み込んできたのは、副長のセシリア、王国屈指の剣使いフルーレ、そして慈愛に満ちた回復魔法の使い手シルフィの三人だった。彼女たちは部屋に入るなり、あまりにも無防備な光景に目を見開いた。


セシリア「ま、マキ様……!? って、裸ん坊じゃないか!?」


セシリアが顔を赤くして叫ぶ。リノの腕の中にいるのは、衣服を一切纏わず、全身を上気させた一歳半の赤ん坊——マキだ。


リノ「あら、皆様。今ちょうどお着替えの途中だったんですよ。マキ様は赤ちゃんなので、すぐじっとしていられなくなっちゃって。……ねー、マキ様?」


リノはそう言って、マキの尻を、部下たちの目の前でポンポンと軽やかに叩いた。


(……っ、ひぅ……っ!!)


マキは、全身の毛穴が逆立つような屈辱に震えた。


二十三歳の意識は、今すぐ剣を手に取り、この不敬な部下リノを叩き斬り、見ている三人にも「見るな!」と一喝したい。


だが、今の自分は「何もわからない赤ん坊」でなければならない。


マキ(……やるしかないのか。私は……王国の盾なのだ……。これしきのこと……っ!)


マキは涙を堪え、わざとらしく「あー……うー、あーぶー」と、焦点の合わない瞳でリノの顔をぺちぺちと叩いた。


フルーレ「あらら、マキ様、可愛いお顔をされて……。でも、あの凛々しかったマキ様が、このように言葉も解さぬ幼児になられてしまうとは……。シルフィ、やはり回復魔法ではどうにもならないっすか?」


フルーレが悲痛な面持ちでマキのすっかり小さくなった姿を痛ましげに見つめる。


シルフィ「ええ……。これは肉体の損傷ではなく、時間軸そのものの変質ですから……。私の魔法では、この幼いお体を健やかに保つことしかできません」


シルフィがマキの小さな手に触れ、慈しむように魔力を流す。その温かさが、かえってマキの胸を締め付けた。部下たちが自分を「可哀想な、何もわからない存在」として憐れんでいる。


マキ『リノ……っ! 早くパジャマを着せろ! これ以上見せ物にするな……っ!!』


マキはリノにだけ思念を送るが、リノは内心でくすくすと笑いながら、わざとゆっくりとマキの脇腹をくすぐった。


マキ「あ、あふぅ……! ぁ、あぅーっ!!」


リノ「ふふ、マキ様ったら喜んじゃって。セシリア様、マキ様はこう見えて、お腹や……あ、ここ。お尻のあたりを触られるのが、一番お喜びになるんですよ?」


セシリア「えっ!? そ、そうなのか……? マキ様、失礼します……」


マキ『やめろ、セシリア! リノの嘘を信じるな! 触るな……ぁああぁっ!!』


マキの絶叫は、再び空しく無垢な産声のような笑い声へと塗り替えられていく。リノの嘘のせいで、真面目なセシリアまでがその指先を、マキの尻へと伸ばし始めたのだ。


リノ「――はい、シルフィ様。じっくり診てあげてください。マキ様、少しの間だけ我慢ですよ?」


リノはそう言って、マキをベッドの上に仰向けに寝かせ、わざと四肢を大の字に広げるようにして固定した。


二十三歳のマキにとって、かつての部下たちの前で股を割り、一糸まとわぬ姿を晒すのは、戦死するよりも辛い屈辱だった。


シルフィ「……うう。これほど近くで拝見するのは初めてですが、本当に……完全に一歳半の状態に戻っていますね」


シルフィが医療用の魔導具を手に、マキの身体を医学的な視点で覗き込む。


シルフィ「粘膜の状態も、外部組織の発達具合も、平均的な幼児そのものです。……あの、成熟した大人の女性の面影は、どこにもありません」


マキ『――ひ、うっ……! シルフィ……っ、そこまで、凝視するな……っ!!』


マキは絶叫したい衝動を必死に抑え、虚空を見つめて「あぶー、あー」と涎を垂らす演技を続ける。その必死な姿に、リノの思念がクスクスと脳内に響いた。


リノの思念『――ふふっ、流石はマキ様。かつてないほどの屈辱で、部下たちの前で羞恥に堪えるなんて。その凄まじい精神力、心から感服いたします。……でも、我慢しすぎてお顔が真っ赤ですよ?』


マキ『――貴様……リノ! どの口が言うか! この状況を楽しんでいるのは分かっているぞ……っ! 早く終わらせろ!』


マキ「あ、あうぅっ……!!」


フルーレが無邪気に笑い、さらに執拗にマキの胸を突いたり撫でたりし始める。シルフィも医学的調査を終え、いたわるようにマキを優しく撫でた。


部下たちの「善意の愛撫」と、リノの「意地悪な思念」。マキの精神は、二十三歳の誇りを必死に繋ぎ止めながらも、もはや限界を迎えようとしていた。


三人の部下たちの「いたわり」という名の公開愛撫が続くなか、ついに副長のセシリアが、決意を秘めた表情でリノに向き直った。


セシリア「……リノ。一つ、折り入って頼みがある」


セシリアはマキの小さな手を両手で包み込み、まるで聖母のような、それでいて騎士としての峻烈な意志を宿した瞳で告げた。


セシリア「マキ様の世話係、私に譲ってはもらえないだろうか。……二十四時間、私が責任を持ってこの方を守り、育てる。リノ、お前は魔法の研究に専念してくれ。団長は……私にとって、ただの上官ではない。憧れであり、目標であり、命を預けた唯一のお方だ。私は、私の手で……再びマキ様を、立派な騎士へと育ててあげたいんだ! 頼む!」


その言葉を聞いた瞬間、マキの脳内に激しい警鐘が鳴り響いた。


マキ(ま、マズい……! 非常にマズいぞ……!)


セシリアは、二十三歳のマキを最も近くで支えてきた右腕だ。もし彼女と四六時中共に過ごせば、一歳半の肉体から時折漏れ出る「大人の知性」に気づかれるのは、もはや時間の問題。


何より、傍若無人で破天荒でアレな性格である事は誰よりもマキが知っている。セシリアにこの無様な絶頂姿を見られ続けるのは、死よりも恥ずかしい。


マキ『リノ! 頼む、リノ! 断ってくれ! 私の尊厳のために、何としても……っ!!』


マキは必死の思いでリノに思念を飛ばした。しかし、リノはいつになく困り果てたような、今にも泣き出しそうな顔でセシリアを見つめている。


 リノの思念『……っ、マキ様……。セシリア様の言葉には、嘘が一切ないんです。……本当に、真っ直ぐで……。心から、心からマキ様のことを尊敬されていて……。ああ、なんて尊い献身なんでしょう……ううっ……』


マキ『リノ!? 感心している場合か! 貴様のその「演技」で、なんとか言いくるめろと言っているのだ……っ!』


リノの思念『……ですが、マキ様。私も一人の人間として、これほど純粋な想いをむげに踏みにじることはできません。……』


マキ『リノ……? 貴様、何を考えて……』


リノは顔を覆っていた手を離し、セシリアに向かって、ゆっくりと口を開く。


リノ「……セシリア様、それはできません」


リノは震える声で、しかし断固とした拒絶を口にした。その瞳からは大粒の涙が溢れ、床に点々と染みを作っていく。


リノ「マキ様に掛けられた呪いは、魔力の波形が極めて不安定なんです……。私が二十四時間体制で監視し、魔力を微調整し続けなければ、マキ様の精神まで崩壊しかねません。それに……」


リノは溢れる涙を拭おうともせず、声を詰まらせた。


リノ「セシリア様と同じなんです。私も……マキ様をこの手で、今度は立派な魔道士として育て上げたいという気持ちは、誰にも負けません……っ! マキ様がこうなったのは、専属魔道士の私が頼りなかったせいなんです……。だから、離れるのは……離れるのは、嫌なんです……っ!!」


リノの痛切な(演技混じりの)告白に、部屋の空気が一変した。セシリアが「リノ……」と、そのあまりの責任感の強さに気圧されて言葉を失った、その時。


マキ(……ええい、ままよ! リノの変態行為は我慢する! だが、セシリアに全てがバレるのだけは阻止せねばならん!)


一歳半の身体のマキが、決死の覚悟で動いた。


よちよちとした足取りでリノの膝の上に這い上がると、マキはその小さな腕でリノの首にぎゅうっ!としがみつき、あろうことか皆の前で、リノの唇に自分の唇を押し当てたのだ。


リノ「あ、あぅ……! んぅ……!」


必死に「離れたくない」という意志を全身で示すマキ。その姿は、部下たちの目には「献身的なリノを、赤ん坊のマキが慕い、慰めている」という、涙なしには見られない光景に映った。


セシリア「……済まなかった、リノ。私はマキ様の気持ちをそっちのけで、自分の思いだけで無茶な頼みをしていたようだな。……見てくれ。マキ様は、これほどまでにリノを信頼し、お気に入りなのだな」


セシリアはマキの健気な(ふりをした)姿に心を打たれ、清々しい表情で身を引いた。フルーレもシルフィも、感動のあまり目元を拭っている。


だが、リノだけはマキを抱きしめながら、その涙目の奥で、マキにしか聞こえない極上の悦びに満ちた思念を送っていた。


リノの思念『――ふふ。マキ様、自分から私にキスしてくれるなんて。そんなに私との「秘密の生活」が良かったんですか? ……嬉しいです。今夜は、たっぷり可愛がって差し上げますね』


マキ『――貴様……っ、足元を見るなと言っただろうが……っ!!』


マキが心中で毒づいていると、セシリアが思い出したように提案した。


セシリア「だがリノ、お前一人が寝ずに世話をするのは限界がある。せめて、一日に一回、朝のオムツ替えだけは私に任せてくれないか?マキ様への奉仕を、私にも少しだけさせてほしいんだ」


その提案に、今度はマキの心臓が跳ね上がった。朝のオムツ替え――それは、一晩中リノに弄ばれた下半身を晒す、最も危険な時間帯だ。


マキ『リノ! 頼む、それだけは……それだけは全力で阻止しろ!!』


マキの必死の思念を受け、リノは潤んだ瞳でセシリアを見つめ、ゆっくりと口を開く……。


リノ「……分かりました。セシリア様。マキ様への想い、痛いほど伝わりました。一日一回、朝のオムツ替えだけなら……お任せします」


リノが涙を拭いながらそう告げた瞬間、マキの絶望は決定的なものとなった。


シルフィ「それなら朝食の準備だけは私に! 団長の健康管理は回復魔道士の務めですから!」とシルフィが身を乗り出し、


フルーレ「ズルいっすよ! それなら私は朝の部屋の片付けを! 団長の身の回りを整えるのは騎士の基本っすよ!」とフルーレまでもが便乗する。


結果として、毎朝「セシリアによるオムツ替え」を、シルフィとフルーレ、そしてリノという、かつての部下全員に囲まれながら行われるという、マキにとっての公開処刑が確定してしまったのである。


マキ『……リノ、貴様……よくも……! 私をこれ以上、辱めるつもりか……っ!!』


マキの怒りに満ちた思念がリノの脳内を叩く。しかし、リノはセシリアたちには見えない角度で、極上の愉悦を浮かべた。


リノの思念『――ふふっ。いいじゃないですか、マキ様。あなたのその、ちいちゃくて可愛らしい姿を、皆さんもきっと見たいんですよ。……王国一の美女だった団長の「現在の姿」を独り占めするなんて、私、バチが当たっちゃいますもの』


マキ『――「ちいちゃい」って言うな! 何度言えば分かるんだ……っ!』


リノの思念『それよりマキ様……さっき、皆さんの前で私にキスしてくれたなんて……。あぁ、マキ様だーいすきっ! 本当に食べちゃいたいくらい可愛いです!』


マキ『――それも言うなー! あれは状況を打破するための……ぁ、あぐぅっ!!』


怒鳴り散らしたいマキの思いを余所に、リノはマキの尻を、セシリアたちからは見えないように指先でツンと突いた。


マキ「あ、あぅーっ!!」


身体を跳ねさせ、顔を真っ赤にするマキを見て、セシリアたちは微笑ましそうに目を細める。


セシリア「ふふ、マキ様、明日の朝が楽しみですね。私たちが、心を込めてお世話させてもらいます」


セシリアの聖母のような笑顔が、今のマキには悪魔の宣告にしか聞こえない。



知性は二十三歳の騎士団長のまま、肉体は一歳半の幼児。そして、部下たち全員に見守られながらの「朝の儀式」……。


マキ・クロフォードの、プライドをかけた戦い(と羞恥の連続)は、さらに過酷な新章へと突入するのだった。



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