包囲殲滅戦
アレンが教会の暗部を物理的かつ経済的に削ぎ落とし、エリアナが圧倒的な民衆の支持と医療システムを確立したことで、王都を蝕んでいた保守派の貴族・教会勢力は完全に息の根を止められた。
内部から背中を撃たれる心配、あるいは無能な将官から横槍を入れられる懸念は、完全に消滅した。国家と軍の全権は、事実上、作戦会議室に座る若き『国家の歯車』の手に委ねられたのである。
「これでようやく、煩わしい政治ごっこ抜きで純粋な『戦争』ができる」
フリーハンドを得たルキウスは、枢軸国軍の主力が陣取る南部戦線において、長年温めていた大規模な殲滅作戦をついに発動させた。
後世の戦史に『包囲殲滅戦の最高傑作』として刻まれるその作戦は、極限まで計算し尽くされた【欺瞞工作】から幕を開けた。
ルキウスは、内陸部の砂漠地帯に無数の「偽の野営地」を構築させた。
数万の空のテントを張り、夜には無人の焚き火を燃やし、魔導通信を用いて意図的に「偽の進軍命令」を垂れ流し続けたのだ。
枢軸国軍の司令部は完全にこれに騙され、大軍が内陸から攻めてくると信じ込み、防衛線を内陸へと大きく移動・分散させてしまう。
「愚かだな。僕がわざわざ、最も防御の固い正面から叩くはずがないだろう」
敵の戦力が内陸に偏った瞬間、ルキウスは手薄になった『海岸沿いの一点』に向けて、全砲兵と歩兵による飽和攻撃を叩き込んだ。
薄い防衛線はわずか数時間で粉砕され、巨大な「穴」が開く。
そして、ルキウスはその穴に向かって、温存していた高機動の魔導装甲車輌と騎兵部隊のすべてを一気に雪崩れ込ませた。
突破した高機動部隊は、海岸線から大きく迂回し、内陸に布陣していた枢軸国軍の『背後』へと回り込んだ。退路の遮断。完璧な包囲網の完成である。
前後を挟まれ、パニックに陥り逃げ惑う枢軸国の主力軍に対し、ルキウスは容赦なく航空魔導大隊による徹底的な絨毯爆撃を命じた。
空からの死の雨が、敵の主力を文字通りチリ芥へと変えていく。この戦いにより枢軸国の主力軍はほぼ消滅し、大戦の趨勢は王国連合軍の優位へと傾けられた。
自軍の損害を最小限に抑え、敵主力のみを盤面から消し去ったこの途方もない戦果により、ルキウスは大佐から『准将』へと異例の特進を遂げた。
もはや名実ともに、軍の最高中枢を動かす実質的なトップは、二十代の若き准将となったのである。
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