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追放された無能修復師、実は世界そのものを直せるチートでした  作者: 山奥たける


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第20話 全部、直す

 空の裂け目が、ゆっくりと広がっていく。


 青空のはずの場所に、黒い線。

 それが、音もなく開いていく。


「……あれ、やばくない?」


 ミアが小さく言う。


「やばいな」


「軽いな!?」


「事実だ」


 軽く返す。


 だが、視線は外さない。


 あれは、さっきまでの“下”とは違う。


 もっと――


「……上だな」


 構造が違う。


 流れじゃない。

 “干渉”だ。


「……来るぞ」


 次の瞬間。


 裂け目の奥から、“それ”が降りてきた。


 ゆっくりと。

 だが、確実に。


「……」


 誰も言葉を出さない。


 形が、はっきりしている。


 人型。


 歪みがない。

 無駄がない。


 “完成されている”。


「……綺麗」


 ミアが、思わず呟く。


「……確認」


 そいつが口を開く。


「対象、検出」


 視線が、こちらに向く。


「お前だな」


「流れを改変した個体」


「そうだ」


 即答する。


「問題あるか」


「ある」


 迷いがない。


「是正対象」


「……直す側じゃなくて?」


「違う」


 一歩、前に出る。


「お前は“逸脱”だ」


「よく言われる」


 軽く返す。


 だが。


 ミアが、小さく呟いた。


「……ねえ」


「なんだ」


「直したら、ダメなの?」


 その一言で、空気が止まる。


「……」


 そいつは、迷いなく答える。


「変化は歪みを生む」


「なら、止めるべきだ」


「……」


 ミアが、少しだけ俯く。


「でもさ」


 小さく言う。


「さっき、ご飯食べたじゃん」


「……」


「美味しかった」


「……」


「止まってたら、あれもなかったよね」


 そいつは答えない。


 ただ、こちらを見る。


「……」


 少しだけ、考える。


 そして。


「……いい」


 一歩、前に出る。


「俺は直す」


「……」


「壊れてるなら」


 手を伸ばす。


「直すだけだ」


 踏み込む。


 距離を詰める。


 触れる。


 ズレはない。


 だが。


「……そこか」


 見つける。


 “固定点”。


「……触るな」


「無理だな」


 押す。


 カチ。


「――!」


 そいつの動きが乱れる。


「……やっぱりな」


「止めてるだけだった」


「なら」


 もう一度。


 押す。


 カチ。


 空間が、わずかに揺れる。


「――!」


 歪みが、初めて生まれる。


「……ありえない」


「そうか」


 軽く答える。


 だが。


 そのとき。


 裂け目の奥が、さらに揺れた。


「……」


 もう一つ。


 “影”。


「……増えるな」


 ミアが小さく言う。


「……ねえ」


「なんだ」


「これ、全部来るの?」


「来るな」


「……」


 一瞬、沈黙。


 そして。


 ミアが、顔を上げる。


「じゃあさ」


「なんだ」


「全部、直すしかないじゃん」


 思わず、少しだけ笑う。


「そうだな」


 その通りだ。


 止まるか。

 動くか。


 選ぶだけだ。


「……行くぞ」


「うん」


 ミアが隣に立つ。


 震えている。


 だが、逃げない。


 いい。


 それでいい。


 裂け目の向こう。


 歪みの先。


 まだ見えない“何か”に向かって。


「……全部、直す」


 その一言と同時に。


 俺たちは、踏み込んだ。


 止まっていた世界は、ゆっくりと動き出していた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


止まる世界か、動く世界か。

その中で「直す」という選択を続けた話でした。


この先もきっと、全部は直しきれません。

それでも、直し続けるのだと思います。


少しでも心に残るものがあれば嬉しいです。

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