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ほんの香る、夏のしおり。  作者: もふもふ博士


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7/7

ほんの香る、夏のしおり。

 それから一年後。

 俺の小説は、書籍化された。

 あっけないくらい、現実は進んでいく。

 賞も取った。

 評価もされた。

 夢のはずだったのに。

 どこか、現実感がなかった。


 ――夏だった。

 また、あの匂いがする季節。

 俺は墓の前に立っていた。

 久遠秋の墓。

「……わりい、遅くなった」

 そう言って、本を取り出す。

 自分の書いた、小説。

「……読んでくれよ」

 やさしく置いた。

 そのまま。立ち去ろうとする。

 ふと。

 何かとすれ違った気がした。

 思わず、振り返る。

(いい匂い――)

 あのときと、同じ匂いだった。

 紙と、インクと。

 ほんの少し、甘い香り。


 ――風が吹く。

 本のページが。ぱらりと開いた。

 偶然かもしれない。

 でも。

 そこは、あの一行のページだった。


『面白かったよ』


 ――喉が、詰まる。

 声にならない。

 なんで言えばいいのか、わからない。

 ただ一つ、言えることがあるとすれば。


 ああ――

 ほんの香る、夏のしおり。


 本当に俺は、小説家になってしまったみたいだ。

 本物の。

「ありがとう――秋」

 いつか、俺もそっちに行く。

 だから。

 その時はまた。

「君の声で、感想を聞かせてくれ」

 今更だけど。

 やっと言える。


「俺は、秋が好きだよ」

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