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とらわれた妻  作者: 西座屋


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『前編』

〇マンション・リビング(1日目・夜)

  『1日目』の夜。

  マンションの部屋。リビング。

  仕事から帰宅した女性。

  女性は疲れている…。

  リビングのソファに座り…、

  ポツンと一人…。

女性「…」

  リモコンで、テレビを点ける。

  チャンネルをパチパチとザッピング

  する。

  あるチャンネルで止まり、

  それをボーと見る女性……。


  その女性の隣に、唐突に男性がいる。

  女性と男性、二人でソファに座って

  いる。

  男性は、若くてイケメンと呼ばれる

  部類だ。


  女性の妄想スタート。

男性「(女性に)おかえり」

女性「!」

  と声がした隣を見るとイケメン男性が

  いる。

女性「! !」

  男性は驚いている女性に優しい笑顔で

  お出迎えする。

男性「(女性に優しい笑顔)…」

女性「(その笑顔を見て)…」

  女性は安心したのか釣られて笑顔にな

  る。

女性「(男性に)ただいま」

男性「(今日の)仕事どうだった? 疲れてるみ

 たいだけど」

女性「うん、疲れた(と体を伸ばす。ストレッ

 チする)…。なんか、ちょっと…」

  と仕事の愚痴を言い始める。

  それを男性は「うんうん」と聞いてく

  れている。脱線した女性の話も聞いて

  いる…。

女性「(そうだ)! 今日、買ったお惣菜ものだ

 けど良い? (と聞く)」

  女性は立ち上がってスーパーで買って来

  たお惣菜を袋から出して見せる。今日の

  おかずですと。

男性「(へー)! おいしそうだね(と答える)」

  女性は男性の否定的ではない返事に良か

  ったと思う。安心する。


〇同・キッチン(夜)

  キッチンで食事の準備をしている

  女性…。

  スープを作っている。


〇同・リビング(夜)

  ダイニングテーブルに二人分の料理が

  置かれている。

  向かい合わせで座る女性と男性。

二人「(手を合わせて)いただきます(と食べ始

 める)」

  女性は食べながら一緒に食べている男性

  の反応を気にする…。

女性「(男性に)…」

男性「(その視線に)?」

女性「簡単でごめんね」

男性「(うーうん)、疲れてるのに、(食事を)用

 意してくれてありがとう。おいしいよ。ス

 ープは(ちゃんと)作ってくれたじゃん」

  などとフォローするような嬉しい事を

  言ってくれる。

  女性はそれを聞いてホッと安心する。

  食べる……。

    ×    ×    ×

  女性は食べ終わる。スプーンを置く。

女性「(しっかり手を合わせて)ごちそうさまで

 した」

  女性が向かいを見ると、

  誰もいない向かいの席…。

  手付かずで並べられたままの料理…。

  シーンと置かれている……。

  現実を見ている女性……。

  一人でいるリビング。

  さみしく向かい合わせの手付かず

  料理…。


〇同・キッチン(夜)

  そのおかずはラップをして冷蔵庫に

  入れる女性。

  スープは鍋にジャーと入れて戻す。

  蓋を閉める。

  女性は食器を洗って片す。

  お風呂に入りに行く。


〇同・リビング(夜)

  お風呂から上がった女性はリビングの

  ソファで録画したドラマを見ながら洗

  濯物を畳んでいる。

  仕事で疲れているのかだんだん眠くな

  る。

  ウトウトして手が止まっている女性…。

  ソファで本格的に寝てしまっている。

女性「(寝てしまっていて)……」

  すると、

  妄想の男性が掛け布団を女性にかける。

  今の行動で女性は一瞬目を覚ます。

  かけられた掛け布団に気付くが、

女性「…」

  眠たい方が勝って、すぅーと目を閉じて

  寝てしまう女性。


〇同・寝室(2日目・朝)

  『2日目』の朝。

  女性は寝室のベッドでちゃんと寝て

  いる。

  女性、起きて不思議に気付く。

女性「?」

  あのままリビングのソファで寝てし

  まっていたような…。


〇同・リビング(朝)

  女性は着替えを済ませてリビングに

  来る。

  朝食のため冷蔵庫を開けると、

  昨日の夜ラップをしたおかずが入って

  ない…。

女性「…」

  冷蔵庫を閉じて流し台を見ると、その

  おかずが入っていたもう一つの皿があ

  った。

  しかも誰かが食べたような後で、しっ

  かり洗って置かれている。

  鍋のスープも減っている?

  女性はこれらを見て、

女性「…。?」

  あれ…? 私が自分で食べたぁ…? わけ

  ないよなー…。

  女性は不思議に思うが、朝食を食べて

  仕事に出掛ける。


〇同・廊下~玄関内(朝)

  玄関に向かう廊下、

  女性はある部屋の前を通る。

  このマンションの部屋は2LDKのようだ。


  女性は靴を履いて振り返ると、

  妄想の男性がいる。

  女性は当たり前のように男性とお喋り

  する。

男性「行ってらっしゃい!」

女性「行って来ます!」

  女性は男性に見送られて仕事に出掛け

  る。


〇同・リビング(3日目・朝)

  『3日目』の朝。

  風邪が流行っている時期に、

  女性は仕事の疲れで体が弱っていた。

  朝起きると、女性は喉が痛くて喋ると

  ガサガサで声が出にくい状態。

  一目で風邪だと分かる。

男性「大丈夫じゃないと思うんだけど。今日

 休んでも良いんじゃない? 寝てたら?」

  と女性を心配する。気に掛ける。

女性「ありがとう。でも休むほどじゃない

 し、マスクしておけば(大丈夫)。栄養ドリ

 ンク飲めば平気。ありがとう心配してく

 れて。無理しないから大丈夫」

  と気に掛けてくれる妄想の男性に言う。

  女性はマスクをして仕事に出掛けてしま

  う。

    ×    ×    ×

  昼間になると、女性は仕事を早退して

  帰って来る。

  パッと見はいつも通り仕事をしていて

  大丈夫に見えたが、熱が出て仕事を早

  退する事になった。

  やはり大丈夫ではなかった。

  女性は外からなんとか部屋にたどり着い

  て安心したのか、体がよりだるく重く感

  じる…。

  リビングのソファまでたどり着くと、

  だるい体を少し休憩するつもりでソファ

  に体を横にする…。

  一旦、体を休めるだけ…。と思って目を

  閉じる。

  化粧も落とさずにそのままソファでまた

  寝てしまう…。


〇同・寝室(夜)

  夜。

  女性が次に目を覚ますと、

  寝室のベッドでまたちゃんと寝ていた。

女性「……」

  この状況に……。

  いつの間にベッドに移動していたのか。

  記憶がない女性。

  化粧はそのままで、外用上着は脱いで

  ある。

女性「?」

  自力でベッドに移動したのかな…。

  女性は上半身を起こして周囲に目をや

  ると、そばに雑炊、栄養ドリンク、清

  涼飲料水、お茶、水、市販の飲み薬が

  置いてある。

女性「(それに)…」

  全く見覚えがない。

  自分で用意したの…?

  用意したけど食べる前にベッドで寝

  ちゃった…?

女性「?」

  不思議に思ったがなるべく早く正常に

  戻すために、とにかく飲んで! 食べる!

  そして、お風呂で汗を流して、寝る!


〇同・寝室(4日目・午後)

  『4日目』の昼過ぎの午後。

  次に起きた時、体は少し楽になってい

  た。

  妄想の男性が現れる(女性の調子が少し

  戻って来たようだ)。

男性「どう? 具合は」

女性「うん、(少し)楽になってる」

男性「(疑い気味に)ホント?」

  女性は男性に気に掛けて貰えて嬉しい

  らしい。グフフッと笑顔になる。

女性「うん、ホント」

  女性に笑顔が戻った。熱は下がって、

  だるさも軽減して動けるようになった。


〇同・キッチン(午後)

  リビングのキッチンにいる女性。

  少し動けるようになったし、お腹も空い

  たので自分のために食事を作っている。


〇同・廊下~リビング(午後)

  と、廊下の部屋から人が出て来る。

  その人がリビングに入る。

  女性の夫が登場する。


  夫はキッチンで作業する女性(妻)を見る。

夫「(女性に)! もう動いて大丈夫なの? 平気

 なの? 熱は? 下がった?」

  などと寝込んでいた女性を気に掛ける夫。

女性「…!?」


  女性は独身ではなく五年ぐらい一緒に

  暮らす夫がいた。既婚者だった。

  お互い共働きで同じ部屋で生活してい

  ても、あまり顔を合わせる事もなく、

  会話も自ずとなくなり、独身のような

  日々が続いていた…。


  夫に体を心配された女性の反応は、

女性「(えぇっ)…!? 誰っ?」

  と口走る女性。

夫「(へっ)?」

女性「(あなたは)どなたですか?」

夫「! (へえっ)!?」

女性「(夫に)…」

夫「(女性に)……」


  妻は現実の生活と妄想の生活が逆転して

  僕の顔を忘れてしまったようだ…。


  僕の妻は妄想にとらわれている……。


  (タイトル)『(妄想に)とらわれた妻』



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