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337話 欲するは貪欲なる静寂1

「…ここ、でしょうか?」

「多分、そうだろう。ここが最上部だし、他に行くところもないしね」

「ついに、あいつと戦うのか…」


 あれからもお城の中を練り歩いて上層を目指していた私たちでしたが、そこからしばらく歩くこと数十分でついに最上部と思われる、天井がなく空が綺麗に見える広場となっている空間までやってきました。


 マリアナさんも口にしていますが、間違いなくこの場にて静海のリーブトスとの戦闘が始まるのだとわかります。空間の広さもおよそ百メートル近くはあり、かなりの広さをしているので戦闘に関しても狭いと感じることもないはずです。


 …それに天井がないということは、そこから静海のリーブトスが現れたり攻撃をされる可能性もあるので、少しだけ注意をしておくべきかもしれません。


「んじゃ、皆。再度聞くが、準備はいいかい?」

「バッチリです!」

「私たちも大丈夫。いつでもいけるよ」

「俺たちも問題ないぜ!」

「…よし、それじゃあいくよ!」


 そんなマリアナさんの合図と共に目の前に広がっている広場の中まで進んでいく私たち。すると、次の瞬間にはどこからともなく激しい咆哮のようなものが聞こえてきたと思ったら、空が急に暗くなりました。


 なのですぐさま空に向けて視線を向けた私たちでしたが、その視線の先には巨大な体格をした大型の鮫……つまり、静海のリーブトスの姿がありました。 

 …やはり、最初に考えた空から現れるであろうとの予想は当たっていたみたいです。ここは静海のリーブトスのテリトリーと言える場所なのでそれは当たり前だとは思いますが、それでも少しばかりは驚いてしまいますね。


 まあそれはともかくとして、ついにワールドモンスターである静海のリーブトスと対面することになったのです。であれば、今ここで倒すためにも動かせてもらいますよ…!


 突然、ここに来るまでの道中にて作戦は決めているので、まずはその通りに、ですね!その作戦では、私があのメガロドンと戦った時と同様に回避盾として動き、それによって生まれた隙に皆が攻撃する、といった具合です。


 それでは、早速行動開始です!手始めに私が敵の注意を惹きつける必要があるので、先手はいただきます!私のユニークスキルを活かして、貴方の意識を向けさせますよっ!


「いきますっ!〈第一の時(アイン)〉ッ!」

「ガアアァ!」


 私は即座に手元に取り出した双銃を構え、そのまま左手に持つ短銃で自身に動きを加速させる武技を撃ち込んだ後、空中にて泳いでいる静海に向けて駆け出します。

 そしてそれと同時に、静海も雄叫びをあげて近づきたくる私へと意識を向けてきたのがわかりました。


 相手は空中を泳ぐかのように動いているので、ここは〈飛翔する翼(スカイ・ステップ)〉を組み合わせた三次元的な動きで攻めるのがベストでしょう!…まあメガロドンと同じように近接戦闘が主だとは思うため、常に空中にいるわけではないと思えますが。


 とはいえ、今の戦闘開始時点では空中に浮かぶかのような状態になっているので、空中を蹴らないと攻撃には移れませんけどね。


「まずは動きを遅くします!〈第二の時(ツヴァイ)〉!」


 そうして、こちらへと視線を向けてきている静海の周りを〈飛翔する翼(スカイ・ステップ)〉を加えた不規則な動きで飛び交いつつ、私はそこに動きを遅くさせる効果を持つ武技を右手に持つ長銃から静海に向けて撃ち込みます。


 この武技は耐性などを考慮しないで確実に動きを鈍くさせる効果があるので、こうした場面においてはかなりの有効な手段になるはずです…!


 そのうえ、相手は巨大な体格をしているのです。であれば、私のような小さい者によるピンポイントな攻撃は完璧に躱すなんて芸当、出来るはずがありませんよね!

 

「ガルアァ!」

「まだまだ!攻める手は止めません!〈第零(ヌル)第七の時(ズィーベン)〉!」


 私による武技を受けて動きが鈍くなった静海は、そんな状態にも関わらず一番近くにて攻撃を繰り出した私に向けてその巨大な口を開き、噛み砕こうとしてきます。


 が、もちろん本調子ならいざ知らず、今の動きが鈍くなっている静海の攻撃を私が受けるはずがなく、その噛みつきを身体の捻りを存分に活かした回転軌道で半歩ズレながら踏み込み、容易に躱します。


 そしてそのタイミングで一つの武技を自身に使用することで無数の幻影を生み出し、それによって生まれた幻影と共に静海に向けて本格的に攻撃を開始します。

 とは言っても、幻影ではダメージを与えられないので隠蔽系のスキルを使って幻影に紛れ込んだ私が中心となって、ですけどね。


 加えて、その幻影たちと共に近づいてきたマリアナさんやカスピアンさんも、です!それらのメンバーも数が多いため、攻撃が出来る隙に与えておくべきでしょう!


「ダメージを稼がせてもらいます!〈第三の時(ドライ)〉!」

「あたしたちもいくよ!〈流水刺突(コリエンテ・ランス)〉!」

「なら、私も参加しないわけにはいかないな。〈スピンスライサー〉!」


 幻影に紛れる形で静海の頭上をとった私はそこから攻撃系の武技を静海の頭部に向けて放つと、それに続くようにマリアナさんやカスピアンさんたちも攻撃を繰り出します。


 それらの攻撃は、私のユニークスキルによって動きが鈍くなっているせいで完璧に躱しきることが出来なかったらしく、隙だらけの身体に命中して赤いポリゴンを撒き散らしているため、いい感じにダメージを与えることは出来ているみたいです。


 しかし、ワールドモンスターだからなのか前に戦った天災のゾムファレーズと同様にHPゲージが四本もあるので、そう簡単に倒し切ることは出来なさそうですが。まあこれは想定内なので、気にすることでもありませんね、


「グガァアアッ!」

「っと、やはりワールドモンスターなだけはあって幻影で惑わし続けることは出来ませんか!」


 そんなことを考えつつも幻影に紛れて攻撃を繰り返していた私たちでしたが、そこで静海が雄叫びをあげながらその身体を一回転させることで、周囲に無数にいた幻影たちの全てが消し去られてしまいました。


 むぅ、メガロドンの時もそうでしたが、身体が大きい敵を相手にすると私の生み出す幻影は一瞬で掻き消されてしまうみたいですね?

 前に戦ったカムイさんや悪魔とかと比べると、どうしても攻撃範囲が大きくて幻影を維持しておくのが厳しいとわかります。


「…であれば、基本は分身を使うことにして、こちらの武技はわずかに生まれた隙や気を引くために使うのがベストでしょうか」


 私のユニークスキルである〈第零(ヌル)第七の時(ズィーベン)〉のリキャストタイムは装備している懐中時計のおかげで三十秒と短いので、常に使うのでなく相手が忘れた頃に使う、という感じが良さそうにみえます…!


 では、幻影や分身を生み出すユニークスキルはそのように使うとしますが、その武技のリキャストタイムが終わるまではもう少しだけかかります。

 そのため、再び使えるようになるまでは敵である静海の意識をこちらに向けさせつつ、使えるようになったらすぐさま使用するのが今の状況には合っているはずです…!


「さあ、攻めの姿勢は緩めません!〈第一の時(アイン)〉、〈第零(ヌル)第十一の時(エルフ)〉!」

「グルアアアッ!」


 そう瞬時に判断した私は、そのまま加速系の武技を二重に発動させてから両手に双銃を構えながら静海に向けて駆け出します。


 それを見た静海も私へとその殺意を秘めた視線を向けてきつつ、その巨大な顎を開きながら迫ってくるので、私は加速した動きのまま静海へと跳び上がります。


 …当たり前ですが、食べれるために突撃したわけではありませんよ?私は相手の気をこちらに向けるために近づいてはいますが、当然攻撃を受け止めるために踏み込んだわけでもなく…


 すぐ目の前に静海の大きな口が迫ってきたタイミングで、私は即座に〈飛翔する翼(スカイ・ステップ)〉を使用して空中を蹴り、そこからさらに身体を捻ることで静海の身体をギリギリ掠めるような動きにて噛みつき攻撃を回避します。


 そして、そこでグルグルと静海のすぐ頭上で回転しながら細剣と短剣に変えた両手を一気に振るい、静海の身体を次々と切り裂きつつ静海の後方に向けて進んでいきます。


「グガァアア!」

「ふふん、効果覿面、ですね!」


 その攻撃を受けて派手に赤いポリゴンを背中から撒き散らしながら咆哮をあげた静海でしたが、静海はすかさず踵を返すかのように動きを変え、私に向けて怒りを秘めた視線を送ってきながら再び迫ってきます。


 しかも、明らかに先程の動きには警戒しているように見えるため、再び同じようにして攻撃をするのは難しそうです。何故なら、その身体からはなんと無数の触手らしきものを生やしているからです。


 おそらくはあれが、マリアナさんが見つけてきた本にも書かれていた"奪ったもののスキルと特性を得る能力"というものなのでしょう。

 元から生えていたわけでもないですし、明らかに静海には不釣り合いなものなので、この想像は的外れではないはずです…!


 なんにせよ、ここからは静海も自身の特殊能力を使うみたいですし、油断は禁物ですね…!今もその触手を構えてこちらへと迫ってきているのですから、それらには気をつけて躱さなくては…!


「…ですが、すでにリキャストタイムも終わっているのです。ならば、ここで使わせてもらいますよ!〈第七の時(ズィーベン)〉!」

「グガァアッ!」


 私はそれを見て、速やかにリキャストタイムが終わっていた分身を生み出す武技を自身へと撃ち込んだ次の瞬間。

 こちらへとどんどん近づいてきていた静海の触手に青い光が纏わりつき、そのままその触手が振るわれることで私目掛けて無数の水の刃が飛んできました。

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