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254話 焔の鬼2

「では、まずは〈第一の時(アイン)〉!」

「ガァア!」


 私は再び〈第一の時(アイン)〉を自身へと撃ち込んで動きを加速させ、その状態のまま今度はこちらからオーガに向けてと接近していきます。


 何故私から近づいているのかというと、先程使用した〈第八の時(アハト)〉はリキャストタイムがあるせいで少しの間は使えないので、それの代わりとして私が意識を向ける必要があるからです。加えて私の分身もすでに消えているので、ここからは一人で対応するしかありません。


 一応ここまでの攻防であちらの動きはある程度把握してますし、〈第一の時(アイン)〉による加速を活かせば躱すのも問題はないと私は考えています。まあそうだとしても油断は出来ませんし、警戒は怠りませんけどね!


「ゴガアァ!!」

「おっと、考えるごとをしている暇はありませんか!」


 近づいてきた私目掛けて、オーガは手に持つハルバードを横薙ぎに振るってきましたが、それに対して私は姿勢を限界まで地面に伏せることで避け、続けて振るわれた地面から掬い上げるような一撃に対しても、横に半歩ズレることで回避します。


 …あちらからの攻撃にはなんとか対応は出来ているのですが、どうしてもハルバードに纏わりついている青い炎のせいでHPが削れるため、そこが少々心配になりますね。私のインベントリにはポーションがありますし、この双銃のスキルで少しだけ回復は出来るのですが、流石にこの攻撃の嵐において使用する暇がなさそうであり、ちょっとだけ焦ってしまいそうです。


 一応私には【HP自動回復】のスキルがあるので今のところはまだ危険ではありませんが、それでも長期戦になれば危ないかもしれませんね。まあ今回のこれは、倒すのではなく生き残るのが目的なのですから問題はないかもしれませんけど、それでもそう思ってしまうのは仕方ありません。


「…なら、やはりあのハルバードに気をつけてつつ注意を引きつけないとですね」


 そう呟きながら、私は次々と振るわれるハルバードの青い炎には極力触れないようにしつつ、〈飛翔する翼(スカイ・ステップ)〉とフェイントを織り交ぜた動きで空中を飛び交い、それらをなんとか回避していきます。もちろん、そこに反撃の攻撃も加えて、です!




「…やっぱり、レアさんは凄いなぁ…」


 私、宮里葵もといアオイは、今まさに行われているレアさんとオーガによる戦闘に意識を向けつつ、思わずそうこぼしてしまいます。


 私も、一応は隙を見せたオーガに向けての攻撃には参加はしているけど、それでもレアさん程活躍しているとは到底言えないんだよね。レアさんは私なんかよりも遥かに危険で重要なポジションで動いているから、そんなレアさんのサポートをしたいけど、私ではそれを行うのは厳しいのだ。


「アオイ、大丈夫か?」

「あ、アリエスさん。うん、私は大丈夫だけど、レアさんに任せっきりで少しだけモヤモヤしちゃうんだよね」


 私にもう少しだけ実力があるのならこんなことにはならなかったため、アリエスさんが私のことを心配することもなかったんだけどね。


 というか、本当にどうしたらいいかな?このまま時折攻撃をするだけでは意味がないし、レアさんの足を引っ張っているだけで何もしてないことになっちゃうけど……レアさんとオーガの戦闘を見るに、私が本格的に参加することは確実に無理だからねぇ……だから、何かレアさんの手助けになれることがあれば良いんだけど、私なんかで出来ることがあるのかな?


「…アオイさん、ここは思いが力となる場所です。であれば、貴方のその純粋な思いをぶつけてみるとよいですよ」


 私がそう悩んでいると、そこにクロノスさんによる声が頭の中へと聞こえてきました。思いが力となる場所、かぁ……この思いをぶつけるといいみたいだし、こんなところでウジウジと悩んでいないでレアさんのサポートに動くことにしよっか!


 確かに足を引っ張ってしまう可能性はあるけど、それでも何もしないよりはマシだよね!やられる可能性も大いにあるけど、それを怖がって動かないのはもっとダメだし、この思いをぶつけてみるよ!


「レアさん!私も参戦するよ!」

「アオイさん!?大丈夫なのですか!」


 私のかけた言葉に対して、レアさんはオーガによるハルバードの一撃をゆらりとした動きで躱しつつ、そう返してきました。大丈夫かどうかを聞かれたけど、レアさんに任せっきりではいけないのだから、怖くても参加はさせてもらうよ!


 流石にレアさんのポジションに参加するのは難しいけど、それでも私の役割は攻撃なんだから、そっちを重点的にやることにするよ!レアさんだけではダメージを与えるのは厳しそうだし、このポジションが最適なはず…!


「大丈夫!流石にタンクの変わりは無理だけど、ここからの攻撃は任せて!」

「…わかりました。ですが、気をつけてくださいね!」

「うん!」


 よし、レアさんからも気をつけるように言われたのだから、その言葉を裏切らないようにオーガの攻撃には気を付けておかないとね!ここでやられてレアさんの足を引っ張るわけにいかないんだから、集中して攻撃に移ることにしようか!


 とりあえず、攻撃をするのはオーガの隙をみて、だね。タンクの役割は相変わらずレアさんがするから、私はその隙を逃さずに行動するようにしないと!レアさんに任せっきりではいけないからね!


「では、残り時間もわずかですし、ここからは一気にいきますよ!〈第零(ヌル)第十一の時(エルフ)〉!そして〈第六の時(ゼクス)〉!」


 私が武器である槍を構えてそんな思考をしていると、そのタイミングでレアさんがそう声に出したと思ったら、いきなりその動きが速くなりました。


 名前からしてレアさんのユニークスキルだとはわかるけど、相変わらず凄い速さだよね?今も私のそばにいたアリエスさんも驚いてるし、やっぱり初見では驚くみたい。まあなんにせよ、レアさんはそのスピードを存分に活かしてオーガを撹乱してくれているのだから、ここはその隙を見逃さずに攻撃をしないとね!


「アリエスさん、いくよ!」

「おう、任せろ!」


 よーし、ここからは私たちも全力で攻撃をしていくよ!このままレアさんだけに任せてないで、キチンと役目を果たしてみせないと…!私はレアさんよりも劣るとはいえ、これでに様々な経験をたくさん積んでいるのだから、それを活かしてしっかりとレアさんのサポートをしないとね!




「…さて、これなら生き残ることは出来そうですけど……油断は最後までダメですね」


 そうして私ことレアは、なんとか見つけた隙にポーションを飲みながらアオイさんとアリエスさんの力も借りてオーガとの戦闘を続けており、今はクリア条件である"五分間生き残る"が完了するまで残り一分を切ったところです。


 この調子ならクリア条件は達成出来そうですけど、倒すまでいくのは難しそうですね?まあ生き残るのが本来の目的なので、別に構いませんけど。それに、このオーガはまだ何か隠している力があるかもしれませんし、最後まで油断は厳禁、です…!


「グルゥ、ガァアアァ!!」

「む、何かするつもりですか…!」


 私はオーガの持つハルバードによる攻撃を空中までも足場にした不規則な動きで避け続け、反撃として弾丸を返していたのですが、あと少しでクリア条件が達成出来ると思ったその直後、いきなりオーガが雄叫びをあげました。


 HP的にはまだ七割を切ったくらいですが、この状態からして発狂モードとみて間違いなさそうですね?全く、このオーガはその状態になる前ですら強かったのに、そこにそれが加わってしまえばかなり危なそうに感じます…!オーガが生まれたのは偶然なのでしょうけど、思わず運営に問いただしたい気持ちですよ…!何故今の私たちではキツすぎるモンスターを出したのか、ってね!


 というか、ここからは流石にアオイさんでは危険すぎるので、一旦離れていてもらいますか…!もしやられてしまったらクエストが失敗してしまうのですし、生き残るのが大切ですからね!


「アオイさん!ここからは危険すぎるので、少しだけ離れていてください!」

「わかった!…けど、レアさんは大丈夫なの!?」

「俺も手伝うぞ!」

「私はクリア条件の時間になるまでこのオーガの気を引いておくので、こちらは構わずに!アリエスさんも、ここは私に任せてください!」


 私のことを心配しているのがありありと伝わってきますが、ここは私がやらなくては誰がやるのですか!まず間違いなくアオイさんでは一瞬でやられてしまうでしょうし、アリエスさんでもキツそうなため、私がこのオーガの気を引くしかありません!


 幸いにも残り時間はあと三十秒を切っているので、それまで生き残れば良いだけであるため、おそらくは問題はないはずです…!ですから、アオイさんは私のことを信じて待っていてください!必ず生き残ってみせますよ…!


「…さて、それでは私は時間稼ぎをさせてもらいますよ!〈第零(ヌル)第七の時(ズィーベン)〉!」


 私はそう呟いてキャストタイムが終わっていた無数の幻影を生み出す武技を自身へと使用した後、周囲に溢れた幻影と共にオーガに向けて駆け出します。


 これの効果時間は三十秒ですが、残りの時間も同じくらいなのでちょうどいいですよね…!オーガがこれから何をしてくるかはわかりませんが、それでも何があっても良いように警戒を強めて攻撃を捌いてみせます!


「ゴガアアァ!!」

「…っ、まさかの範囲攻撃ですか…!」


 そう意気込んで無数の幻影と一緒に接近した私だったのですが、オーガは突如ハルバードを構えたと思ったら、次の瞬間には一気にそれを振るうことで飛びかかる姿勢で周囲にいたほとんどの幻影を消し去られてしまいました。


 本体である私は警戒を強めていたのも相まってなんとか躱すことが出来ましたが、それでもその攻撃には驚いてしまいます。明らかに発狂モードになったせいの行動だとは容易に想像がつきますが、それにしたって強すぎませんか…!?操作が間に合わずに幻影のほとんどが一瞬にして消されてしまいましたし、流石にその攻撃は予想外ですよ…!


 というか、これはどうしましょうか?幻影のほとんどは消えてしまいましたし、このまま近づいてしまえば私ですら簡単にやられてしまいそうですが……本当に、このオーガは今の私たちでは相手をするのが辛すぎます…!

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