エピソード26
癒物レベルが高い事を指摘されてしまった。
「その癒物レベルが高いと何か支障でもあるの?」
マーフィーさんは少し考え俯く素振りをしながら、「……あの、えーっとね……」と続けた。
「その癒物レベルが高いと色々とメリットがあるのよ」
へー、そうなんだ。
「もし、良かったらうちのもふカフェに譲ったり、寄付することも出来るし、うちに居るもふもふとの親愛度も上がるの」と教えてくれた。
「寄付は……もっと働いたらにしたいと思います」
分かったわというようにマーフィーは頷いた。
「多分、もっと癒物レベルは上がると思うし、期待出来そう」笑顔で私を後押しした。
「それで、どうして癒物レベルがそんなに上がったのかしら?」
疑問に思われても仕方ない。興味深そうに私を覗きこんだ。
「仲間との戦闘、一人で戦闘したけどゲームオーバーだらけ。恥ずかしいけど、それらが積み重なったんだと思う」と頬を赤く染めながら口からポロポロと言葉を紡いだ。
マーフィーさんは面白おかしそうに思わず、苦笑する。
「そうなの。森子ちゃん。森子ちゃんらしいわね」
「でも、癒物レベルが高いのは役に立つから自信持ったほうがいいわよ」
「初心者でここまで成長させるなんてすごいわ」
などと褒められた。
癒物を出してくれないかしらと言われたので、癒物を控え室から出した。
そしたら思うことか、ここにいるもふもふ癒物と癒物語を喋り?仲良くしだしたのである。
もふもふ達は尻尾を揺らし、戯れている。顔は満面の笑みならぬ心地良さそうな顔だ。
「すごく楽しそうにしているね」
ここまで自分の癒物が場に和むとは思っていなかった。
「ほんと、仲良さそうで可愛い!」
もうお昼過ぎだ。後から来た大人しそうな女性・メグミも入店直後、驚いていた。
そして「……可愛い」とボソッと呟いた。
「可愛いよねーこれ、ここの一部は全部森子ちゃんの癒物なのよ」
「そうなんですか」とメグミが言った。
「あはは。実はそうなんです」と私も付け加えた。
癒物達は今も楽しそうにしている。
「レベル高いです、ね」
考える事は同じのようだ。
「こんなに癒物いて、踏み潰したりしないんですか」
疑問が生じた。
だが、「もふもふは勝手に避けてくれるから。あと幽霊みたいで足が当たっても平気」とマーフィーにより解決された。
さて、午後の仕事。
「森子ちゃん、もう働かなくていいのよ」
マーフィーに止められた。
「あとは私がやりますから」とメグミも任せてと口で示した。
「私、まだ働けます!」
周りは怪訝そうな顔をしていた。
“ローズヒップティーとアップルティー、一つずつ”
“ダージリンティー、一つ”
次々とオーダーが入ってきた。
私はせかせかと走るように動き回っていた。
そんな私を、「無理しなくていいから」とマーフィーさん含め、先輩達がせき止めた。
「でも……」私は口ごもってしまった。
「なんで、そんなに頑張ろうとするのかしら。いつでも良いから、出来たら教えてくれる?」
優しく肩から背中を擦ってくれた。
前の職場ではそんな優しさなんてなかった。
気づいたら、私は涙を流していた。先輩達は驚いて心配してくれた。
「もしかしてですけど、森子さんって転生者ですか?私も実は日本から転生してきたんです」
そう言ったのはメグミだった。通りで名前が自分と似ていると思ってたんだ。
私の性格を理解してくれた。仕事上でも雑用を押し付けたり、タダ働きさせたりするんじゃなくて、優しさを教えてくれた。
それが味わえるのは異世界だけだった――。




