圧倒的日常 ヌエストラ・セニョーラ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダー曰く、ちょっと待って私この世界だと何等艦?
深々と雪の積もる街の中、唯一熱波を発して止まぬ場所でラキは汗を拭う。赫灼と輝く熱光を覗き窓から漏らす巨大な高炉の周りで剛人兄弟と共に作業をしていた。換気用の窓だけしか空いておらず、三人とも強い光石の光を頼りに煤臭く熱い空気に身を浸し汗を噴き出す。
ラキは高炉から漏れる光と同等かそれ以上の赤く輝く魔法陣を展開しながら言った。
「ちょゴルディ、ガンツォ、高炉自体が赤い気すんだけどコレ大丈夫か!?」
骸炭を追加投入したガンツォがマジマジと高炉を眺めて。
「いける、いけ……。大丈夫かな?」
「うん、無理だな。ラキ、悪いが魔法中止で、ダメだわコレ高炉の方が溶けかねん」
「えっ、ちょ、え?俺、これ高炉壊した?」
蒼白で問うラキ。
「いやラキ、流石に高炉が溶ける事なんてそうそう無いよ。無いとは言わないけど冗談だよ」
「いや鍛治の冗談とかわかんねーから。こちとら板金とか鋳造とかの初歩しかやった事ねーから」
「わりぃわりぃ、ふざけ過ぎた。まぁ止めていいのは本当だ」
ゴルディの言葉で魔法陣を消すラキ。その伸ばされた手の先には耐火煉瓦に耐火性を上げる塗料を塗った白い筈の高炉がラキの魔法陣に照らされ薄っすら赤みを増している。
パッと消える魔法陣。
白くなった高炉から出てくるのは赤く光る溶けた金属だ。ゴルディの操作で流れ流れて漏斗の先の型に注がれていく。同じような勢いで額を伝う汗を一拭い型の蓋を落とした。
型と蓋の隙間から溶けた鉱石が溢れ出て台の下に流れていく。鯛焼きとかワッフル的なノリの鋳造だ。
「ふぅ、外界鉱石用高炉の刻印版が壊れた時はどうしようかと思ったぜ。ラキがいてくれて本当に助かった」
「師匠と父さんが直してる間にも作業出来たしね。どころか危うく廻葉祭まで仕事をするハメになるところだったよ」
弟のガンツォが骸炭の山にシャベルを突き刺しながら答える。
「廻葉祭くらいはゆっくりしたいもんな。さて、と」
弟の言葉に同意したゴルディは型を乗せた板に付いている鉄鎖を滑車付きクレーンのフックに掛け吊り上げた。剛人の剛力によって引かれたクレーンは天井のレールを伝い、水を溢れさせ続ける大きな水槽の上で一度止まる。
石の様な材質の大きい型十個が二列縦隊を組んだまま水槽に落とされた。ジューッと激しい音を立てて水が一気に蒸発するが水量が減るより早く水が注ぎ込まれていく。
「後は明日でいいな。アダマンタイトの鎧なんざ久々だ。型から出して焼き直しをすれば終わりだな」
「寧ろいつもより早く終わったね。ラキもお疲れ様」
「おう。お疲れ様。てか本当に剛人は熱に強いよな」
熱さでバテそうなラキは水差しを使うのが面倒になり魔法で出した水を飲みながら言う。そして指を振って二人に水の入ったコップを渡す。喉を鳴らして飲む兄弟。
「——プハッ、寒いのは死ぬけどな」
「それは兄ちゃんだけじゃない?」
「ハハッ、そういや師匠も寒いのが苦手だったな。鍛治師って寒がりなのか?」
「流石にクルスビー師匠程じゃねぇよ。アレ足の生えた毛玉じゃねーか」
「ブフォッ!?……プッハハハハハハハハハハハハ……っクク!!」」
「いやラキ、確かに師匠の足出し毛玉状態は面白いけどツボりすぎでしょ。改めて考えると凄い格好だけどね」
「やめ、ちょガンツォ思い出しちまうだろ足出し毛だ……ブハハハ!」
「まぁわかるぜ。クルスビー師匠、寒がり過ぎて廻葉祭の前後一ヶ月くらいは家から出てこないもんな」
「え、あの師匠が!?それ仕事どうしてんの?」
「あー、ラキは今年からだったな。廻葉祭は鍛冶仕事ってか街の大半が休みだよ。俺らも高炉の火を落として休むんだ」
度々会話に出てくる廻葉祭とは年に一度の落葉新葉の期間前後の祭事である。
落葉新葉とは人類生誕の地とされるユグドランドに生えている世界樹の葉が五日、稀に六日をかけて生え変わる現象だ。二日半ないし三日をかけて古い葉が光となって大地に降り注ぎ、同じ時間をかけて新たな葉が生える幻想的な光景。
ってラキの読んだ本の一つには書いてた。
それに合わせて一年の終わりと始まりを祝い人々も歳を重ねる。ラキの把握してる感覚ば言えば正月とクリスマスと誕生日を合わせた感じの祭りだ。
「さて、じゃぁ親父とクルスビー師匠のトコに行くか」
「ほーい」
「へーい」
ゴルディの言葉にガンツォとラキが気の抜けた返事を返して付いて行った。クルスビーの作業場のある棟、即ち魔法関連の物を作る場所へ。
板金加工、鉄板などをプレスして加工する機械が並ぶ。例えるなら活版印刷や果物の果汁を絞る圧搾機の厳つい版の様な見た目で、水車の回転運動でネジを回して鉄板やらを圧し潰す。
代表的な物で言えば板金鎧なんかを作るのに使われるのだが此処に有る物は刻印版など魔法関連の物を作るのに使われていた。
で、その機械の並ぶ奥の扉を開く。
公衆浴場の湯沸かしや上下水道の水を出す為の大きな刻印版を作るのに使う巨大な板金加工機の前で剛人と機人がにらみ合っていた。
「オメッこんなモン書き込んだら高炉がブッ壊れんだろ馬鹿か!!」
「馬鹿つったかポンコッコラァッ!!よりによって馬鹿とはなんじゃッァ!!」
「よりによって外界鉱石溶かす用の高炉溶かそうとしてる馬鹿を馬鹿っつて何が悪いんだクソ髭ヴァァアアアアカ!!!」
「言ったなぁッ貴ッ様ぁああああああ!」
扉を閉めた。
遠くを眺めるチベットスナギツネ顔の野郎三人が微妙な顔で並ぶ。
「……仲良いな」
「うん」
「いやオメーら慣れ過ぎだろ。遂に俺も、あー何時ものか、って思っちゃったけど」
兄弟程に毒されてる訳じゃないらしいラキが辛うじてツッコミを入れた。そんな彼等の背に影。
「何してるの?」
「ん、ディキアナか。親父とクルスビー師匠の喧嘩待ちだ」
「やほー」
「チャッす先輩」
相変らずの美人ぷっりである。肩迄の銀髪にせよ白い肌にせよ輝く様だ。そのくせ猫の様なアーモンド型の大きな瞳、美人で可愛いって反則だと思う。
何がって言われたら答えに窮するけど。
ゴルディの説明にまたかと呆れていたディキアナは、ラキのした敬礼によって顕になった鉄の腕を見て嬉しそうに。
「大事に使ってくれてるみたいね」
「もちろん。てかグレヴァ師匠とコイツらが作ってくれた奴は料理の時には重宝するけど日常だとな……」
「ああ、確かに」
「確かにじゃねーよディキアナ。竜の素材を使った俺たちの最高傑作だぜ?
確かにラキにはあんまり必要ないかも知れねーが。あのーアレえーとガンツォ、なんか言ってやれ」
「竜の素材使った義手で料理って美味しいの?」
「ガンツォ、お兄ちゃん悲しいよ。話通じなくて」
「寒いから蒸篭ごと持ってきたプリン、じゃねーや。プディンと一緒に今日の昼飯の時に分けてやるよ」
カッと目をかっ開くゴルディ。
「プディン!?うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおラキ、お前ってやつぁよぉお!!」
「あ、兄ちゃんが壊れた」
「楽しみね」
「待って。ガンツォはともかく先輩に至ってはリアクションもねーし。……なにゴルディどしたん」
溜息を吐く弟、笑うディキアナ。
「ふふ、ゴルディって甘党だから」
「甘党?」
「うん。兄ちゃんは毎年必ずウチの工房でやってる収穫祭のパイ食い大会に出場するしね。今回はパイ丸々8皿で4位だったよ」
「あ、そんな事やって——8皿!?豊穣祭のパイ超デカいのに!?」
「そ、一皿で四人分のパイ。私達は小さい頃からそんな光景を見てるからあんまり驚きようが無いのよ」
「食べたパイがどこに行ってるのか不思議で仕方ないね。母さんが酒を飲んでる時とそっくりさ。さて」
なんかプディンしか言わなくなった兄の代わりにガンツォが扉を開ける。
「貴ッ様ァアアアア!!魔法はズルいぞ降ろせバーカ、ポンコツ!!」
「姉御にも余計な事しないように見張っとけって言われてんだから黙ってろバーカ」
「・・・・・今回は黙っとく」
天井から蓑虫の様に吊るされたグレヴァが静かになったので4人は入室する。
「おうディキアナもゴルディ達もお疲れさん。丁度、高炉用の型が出来たところだ。後は板金加工機に合うかどうかを確認して明日だな」
「お、もう終わったか。助かったぞラキ、アダマント合金の防楯や穂先は勿論、鎧が無いとイジスも守りようが無いからの。増産ももうちっと協力してくれい」
「魔法使ってるだけなんでバンバン任せてくださいよ」
「助かるわい。ディキアナ嬢ちゃんの方はどうじゃった?」
「水晶球儀は問題無しです」
ラキはニコリと上腕二頭筋をムキッとさせる方のガッツポーズしたディキアナを見ていたがふと思う。
「待って、完全に流してたけど簀巻き状態で平然と話し出すグレヴァ師匠もヤバいけど、この状況に慣れつつある俺はもっとヤバいかもしれない。なんか普通に答えちまった」
「プディン〜」
「畜生、ゴルディに至っては完全にプディン発声機に、ツッコミが追いつかねぇ」
「どうしたのラキ?」
「あ、いや何でもねぇ。師匠達もプディン食べます?」
察して微妙な顔になってるグレヴァを下ろしながらクルスビーは嬉しそうに。
「お、いいな。ご相伴にあずかるか」
「儂等の傑作でプディン作ったんか……」
そんな感じでラキが何変わらぬ日常を噛み締めてる頃、グルム王国首都ドラコー・コエメトリウムの王城。現王即位時に文化館三棟と演劇場を更地に変えて作られた、雪の積もる練兵場に立つアダマティオス四世は不満だった。
この王(?)は自他共に認める戦闘狂で有る。定期的に戦しないと不機嫌になるし、戦の前は楽しみで眠れない。
が、地主侵攻の可能性を提示されて内戦を強行する程、為政者として終わってはいないのだ。
そんな王は練兵場にて威圧を撒き散らしながら兵達を前に闊歩していた。ただ鞘に入れられたままの剣を持って悠々歩く王に兵達が得物を振り上げ群がる。
重装の巨人が先陣を切った。
ユラリ揺れた一槌、フェイントののち巨人の一撃が落ちてくる。王は鼻を鳴らし鞘に入った剣で受け止めると巨人の握る鉄槌の柄を引き足を踏みつけ地に倒す。
一瞥。
「巨人たるお前が小賢しい事をするな。余計な事をし槌を軽くするくらいならば唯力で殴殺しろ」
突如として現れた獣人が目の前に現れ脚と腰に力を入れて一閃薙ぎ払う。その一閃の後から動き始めた筈の王が握る鞘入りの剣が鳩尾を突く。崩れ落ちるネコ科顔の獣人
一瞥。
「獣人がなぜ足を止める。腰と腕で剣を振り速さを生かし辻の様に切り伏せろ。貴様の速さならば造作も無かろう」
祖人が斧を投げ付け後を追従する。王が斧を叩き落とすと一閃。しかし腕を掴まれ止められ、投げ飛ばされた。
満面の凶相たる笑みで。
「今のは良い、とても良い。俺たち祖人は一芸を極められず幅広い技術を持って戦うしかできん。故に考えろ、どう殺すか、どう生き残るか!」
先程倒された巨人が大きく振りかぶった槌を振り下ろした。王は横に逸れる様に避けて地を円状に砕いた鉄槌の長い柄を踏みつけ。
「そうだ。貴様等の剛力を生かさずどうする。この破壊力、素晴らしいぞ!!」
顎を蹴り上げる。
満面の凶相たる笑みで着地した。
同時、王は剣を横に突き出す。次の瞬間、鞘が斬り付けれる。犯人は先程の獣人の兵士だ。
「フハハハハッ良いぞ、今の速さを忘れるなァッ!!」
機嫌良さげに剣を薙ぐ。斬撃が飛び獣化の解けた獣人を吹き飛ばした。
同じ感じでポンポンと兵士達が飛ばされてく。もうデカイ巨人だろうが重い機人や剛人だろうが関係無い。ラキがいたらポップコーンじゃねーんだからってドン引きしてるトコだ。
何してるかってーと地主が出たせいで戦が出来なくなったストレス発散もとい白兵戦の練兵である。
練兵場に集まった兵士百人に助言と一撃を与えボコボコにした王は汗一つ流さず愛馬の元へ。ただでさえ大きな王馬の中でも一際大きく屈強で引き締まった馬に跨った。
王馬か訓練された馬で無ければ狂乱に陥る様な轟音響く試作火砲の試射場へただ一人で入る。
的の方へ。
迫る砲弾。
「へ、陛下!?」
驚く将官。
気合一閃。
「ゼアッ!!!」
短い掛声。
一発の砲弾が叩き落とされた。
王は純アダマントの黒い剣を一瞥して掲げる。
それは何時もの合図。
将官と兵士達が何度やっても慣れぬ指示に滝の様な汗を流しながら敬礼して。
「撃てッ!!」
砲弾に続いて噴煙が。
左右の両輪が回り退がる砲、空割いて鉄球が王に目掛け進む。
泰然と上げられた剣が陽光に煌めき、一条の銀線を置いて素早く振り下ろされた。
王の左右で衝撃と共に雪が弾け飛ぶ。
大砲の弾を真っ二つにした王は鼻を鳴らして剣を鞘に入れてサクサクと将官の元へ進んでいく。
試作大砲の試し打ちをしていた将兵達は完全に固まっている。そのうち剛人の技師を一瞥。王の威圧的な瞳に冷汗を流し震える技師。
「威力が足らんな。バフィウスとラクトアに技術資金を増やすよう伝えておく」
「は、はは。お、お願い致します」
ちょっと、いや九割九部九輪人間辞めてる王は少し遅めの日課を終えて、将兵と技師に見送られ政務室に戻る。
尚、名目上は政務室だが実際はトレーニングルームだ。何せ転がってんのは左右の錘の大きさがオカシイ鉄亜鈴とか、腕立てする時に使う壁みたいな重りとか。
一応、政務用の大きな机の上に書類の類もあるが基本的に政治に関しては宰相と大将軍バフィウスにブン投げて報告書を見るだけなので10枚も無い。
なんなら書類より鉄亜鈴とか樽に入れる重り替わりの砲弾とか無駄に重くした刃の潰れた武器とかってトレーニング機器のが多い感じだ。
執務室ってなんだっけ。
どう見ても鉄板にしか見えない鍛錬用の剣を拾い上げ、ブンブン素振りしながら重ねられていた書類を広げる。睨み付けるように眺め一枚を残してサインを……するのは良いんだけど体幹どうなってんの?
政務を終わらせると鉄板で素振りを始めた。
扉がノックされる。王は鍛錬用の武器を置いて。
「入れ」
「失礼致します。陛下」
「失礼致します」
入室したのは白髪白髭の大将軍バフィウスと隈と疲労感の凄い光人の男だ。光人の方は壮年とは言え八の字の眉と隈のせいで折角の光人の美貌が台無しになってる。
「ラクトア、入港税を上げる事は許さん」
「陛下、しかしそれでは此れ以上の軍備増強は難しいかと。地主に備える必要性は理解していますが既に国庫の半数以上は軍部に使われております」
「王室資金を回せ。ついでに無能な貴族供と胡座をかいた兵を削るとする。即刻、準備しろ」
「は、ははっ!」
一礼の後、足早に王の執務室から出て行く宰相ラクトアを見送ったバフィウスは王へ向き直る。
「陛下、未だラフィランの策動に乗り続ける御積りですか」
「バフィウス、いや爺。これは好機だ。
お前はアーウルムを王として申し分ないと言うが、俺は武によってのみでしか物の判が付かん。
故に、この俺を戦場で殺せるならば三剣と共に譲位するも良かろう」
「それではケルヒィオ様の御立場が。何より殿下は勝敗に関わらず汚名を被ります」
「アーウルムに王の気概があるかを見るだけの話だ。爺が言うのだから予備として生かしておくのも良い。
だが敵を安易に許し軍糧を敵国の民に分けるなどという脆弱な在り方など、この俺を継ぐ者がして良い立ち振る舞いでは無かろう。敵は須らく燼滅し敵に成り得る者共の心胆寒からしめる、それこそが俺の生で学んだ王道だ」
バフィウスは王の発言を痛ましく思いながら頭を垂れた。現王と現王太子二代の教育係を歴任した老人には堪える状況だ。
アダマティオス四世、いや老人に言わせればケルヒィオには闘争が常に付き纏った。
しかし幸か不幸か本人の激烈な資質によって何だかんだ武力で解決してしまう。隣国の甘言に乗った兄弟、大領を持った傲岸な叔父、世に名を轟かせる名将、須らく己が軍略と武略にて斬り伏せてきた王なのだ。
一方のアーウルムは見た目から中身まで王妃似である。その王妃というのが面倒な外戚の誕生を阻止しようとした結果、民と近い生活をしていた滅んだ小国の姫で誰とでも仲良くなれる女性だった。王は王妃の事を溺愛していたが王太子の誕生の際に産褥熱によって死亡。
そんな経緯で生まれた文化と臣民を愛すタイプの彼女の資質を継いだ文官王太子と、万事を戦で片付け戦に全てを注ぐ武官王。経緯にせよ資質にせよ性質にせよ王との仲が拗れて当たり前だ。
その狭間で揺れざる終えない御老人の心労は推して知るべし。
「では地主の脅威が無かった場合、戦を起こす意思は変わりませぬか」
「変わらん」
少しの間を置いて老人は。
「承りました」
そう言った。
己が至らなさに溢れる悔恨を抑え報告を続ける。
「周辺国はユグドラド帝国含め地主の動静いかんによっては援軍を送ると。近々、使者を送るとも申しています」
頷く王。
「ではそのように。続いて170門魔導戦列艦五隻の修復が完了しました。対空飛槍とカルヴァリン砲の砲弾も順次」
「二等艦では不安がある。一等艦を作る余裕はまだ無いか爺」
「はは、財政的に難しいかと」
「ならばせめて砲の威力を増やせるよう費用を捻出させよ。ラクトアと協議し開運商に港の起重機の優先使用権を競売させてやれ。無論、平時のな」
「ハッ」
老人は一礼の後、退室した。
王は戦を待ち望みながら鍛錬を再開する。
彼の内には生死を分ける血肉が湧き踊るような闘争への飢餓と渇望が渦巻いていた。
マジ迷惑。




