1日目:基地着任
原作ゲーム、「サバイバル・ロボットマーチ改」販売サイトにて販売中!
成人向けなのでご注意ください。
今宵、語らせていただく物語は、
勇者と魔王がいなくなり、幾年もの年月が経った後の話。
小さき人々は、大いなる脅威にさらされていた。
・・・
7年前、突如として現れたモンスターたち。
世界は瞬く間に奴らに破壊され、
人類の安全な生存圏は失われた。
人類はモンスターに対抗するため、
巨大人型装甲兵器、通称「機体」を実戦に導入した。
その機動力、攻撃力から
人類は局所的に勝利を収めることができた。
しかし、機体パイロットの圧倒的不足により、
物量差で負けてしまっている。
機体パイロット適性のあるものは、即席の訓練を受け、
実戦に投入されることとなった。
・・・
春の風薫る頃、モンスターの侵攻で傷ついた街で原型を保っている建物があった。
そのかつての学び舎には、もう学生の喧騒は響かない。
聞こえてくるのは、鋼の巨人を整備する重厚な音だけだ。
訓練学校を卒業し、おろしたての新しい制服に身を包んだ少年は、快晴の青空の下、ここ学園前哨基地の正門で着任の挨拶をした。
「芥一、ただいまより着任いたします!」
「ご苦労、貴官の着任を歓迎する。」
訓練学校で鍛えられた少年と、同じく訓練学校を卒業したばかりであろう上官の少女は、しばらく見つめあった。
そしてどちらからともなく、噴き出した。
「ぷふっ!なんか真面目にすると笑っちまうな!久しぶり、委員長!」
委員長と呼ばれた優れたプロポーションを持つ少女、久遠美月は、腰まで届く黒髪をなびかせ、呼吸を整えた。
「あなたがこんなに真面目になるとは、訓練学校のパイロット科カリキュラムは相当優れたものだったのね。」
訓練学校には指揮科、パイロット科、整備科の3つの科がある。美月は指揮科、一はパイロット科で別れたものの、同期ということで交流があったのだ。
「学年首席の委員長が、どうしてこんなへんぴなところに?」
「配属先を決めるのは、上層部の仕事よ。それとここでは全権を握らせてもらっているわ。」
「今日もお美しい美月様!肩をお揉みいたしましょうか?」
「結構よ。それとこの基地に所属しているのは、私とあなた含め4人だけよ。そんなに偉いものではないわ。上層部としては、この場所で自由にやれということでしょう。」
最低限の学園前哨基地の設備、不足している人員、いくら美月が優秀とはいえこれではできることに限りがある。いったい何の目的があるのだろうかと美月は暗澹たる気持ちになった。
それでも気持ちを切り替えて、彼女は続けた。
「まずは、部屋へ案内するわ。積もる話はそれからにしましょう。」
こうして何事もなく話し終え、歓迎会が開かれ、硬いベッドで眠りにつく。
そうなるはずだった。
しかし、この世界は安寧を許さない。
空を裂く音が聞こえた。
焦燥感をあおり、危機感を植え付ける警告音だ。
「「緊急警報!?」」
憎むべき人類の敵、モンスターが出現したのだ。
「芥君!ついてきて、格納庫に案内するわ!」
「おう!」
・・・
地下格納庫、そこはこの基地で一番頑丈に作られている場所。
人類の剣たる機体が、その意義を果たせと静かに眠る場所。
この地下格納庫の主、メカニックの元宮理沙は、同期の芥との再会に一瞬喜ぶも、すぐに己の職務を果たさんと行動した。
「芥さん!今使えるのは『烈風』だけです!そちらで出撃してください!」
元宮のポニーテールと恵体が揺れる。彼女にできることは、戦士に最高の状態の武器を提供することだけだ。
「了解!」
芥は烈風のコクピットに滑り込む。すでに敵は迫ってきている。
「システムチェック開始」
烈風の目に光がともる。獲物は今かと待ち望んでいる。
「コンディション、オールグリーン。さすが元宮。」
最高の整備をしてくれた元宮に感謝する。これで人類の敵を誅殺できる。
「烈風、出撃する!」
全身に響く重厚な音が襲い来る。全体的に丸みを帯びたフォルムが動き出す。緑色の塗装が施された射撃特化型の機体が大地を蹴った。
「聞こえている!?芥君、応答して!」
美月から通信が入る。
「弓波さんが先行しているわ。ただ、深入りしているの。すぐに援護に向かってちょうだい!」
「弓波のやつも、ここにいるのか!?わかった、直ちに向かう!」
烈風がひび割れた道路を急いで進む。
弓波との合流地点までは、そう遠くない。
はやる気持ちを抑え、着実に進む。
しばらくすると鋭角的なフォルムの赤い機体、格闘特化型の業火がモンスターたちと戦っているのが見えた。
「おらぁ!」
業火の長刀、近接一式が中型モンスター、木の化け物のトレントを叩き潰す。
「はっ!ざっとこんなもんよ!」
「油断するな!弓波!」
業火の死角から現れた小型モンスター、緑色の醜悪な化け物、ゴブリンたちが烈風の射撃により、ハチの巣になる。
「あ、あっぶね~。大丈夫か、弓波?」
「いや誰?」
「俺だよ!芥一!同期だし覚えてんだろ!?」
「えっ!芥!?うわー久しぶり、ナツいな~!」
「話はあとだ!今はバディを組んでモンスターを殲滅するぞ!」
「おっし!やってやるか!」
記憶の中の彼女、弓波奈保を思い出す。
金髪のショートヘアに肉感的な体の持ち主の彼女は、訓練学校時代、一部の層から人気があった。
王子様的魅力から、女子に人気があったのだ。
彼女の特徴は、驚異的な身体能力とそれによる高い操縦技術。
ただし、勉学は苦手で毎回補修を受けていた。
一瞬、今の状況を理解せずに戦っているのではないかと、芥は冷や汗をかく。
「俺がフォローしなくちゃな・・・。」
しばらくして・・・。
小型のゴブリンと中型のトレントを一体ずつ確実に倒していった芥たち。
のこりわずかというところでその時は起きた。
カチ、カチッ。
「しまった!弾切れ!?」
運の悪いことにトレントが芥に標的を定める。
「弓波っ!フォロー頼む!」
「っ!すまん!間に合わねえ!」
またしても深入りしていた弓波は、バディの危機に何もすることができない。
トレントの腕が烈風に振り下ろされる。
「うわぁぁぁ!」
烈風はトレントの腕に体をへこませられ、移動ができなくなってしまった。
「死ぬのか・・・?おれ、このまま・・・?」
トレントが第二撃を放とうとする。
忌々しい鋼の巨人の息の根を止めるために。
「ふぅー!ふぅー!ふぅー!」
極度の緊張状態に陥る。
だが、体は訓練を覚えていた。
リロードシークエンスを一つ一つ着実に行う。
トレントの腕が迫る。
「くたばりやがれっ!」
何とかリロードし、襲ってきたトレントを撃った。トレントの体には多数の穴が開き、そして崩れ落ちた。
「芥!大丈夫か!?」
戻ってきた業火から、弓波の声が聞こえる。
「あー。移動するのは無理っぽいな。基地まで乗せてってくれ。」
「わりぃ・・・。ホントごめん・・・。」
通信から美月の声が流れた。
「状況終了。敵モンスターはすべて排除したわ。」
終わったことに安どのため息をつく。
「ただ、こちらは烈風が一機大破。弓波さん、あとで「お話」があるから。」
「・・・はい。」
「大破した烈風は後で回収するわ。二人とも帰投して。」
戦果は中型と小型の群れの殲滅、ただし烈風の大破。
あまり喜ばしい戦果とは言えないな・・・。
弓波のやつ無事だといいな・・・。
・・・
帰投後、美月に首根っこをつかまれ奥に消えた弓波をよそに、芥は元宮と話していた。
「災難でしたね・・・。」
「いや、ああ、まあ、不幸な事故だったよ・・・。」
芥は一泊置いた後、頭を下げる。
「すまん、元宮。せっかく整備してくれた機体をああしちまって。」
「あ、頭を上げてください!戦闘をする以上、いずれああなる運命でしたから!」
元宮はあたふたしながら、話を続ける。
「人的被害はなかったのでよかったです。それに・・・。」
「それに・・・?」
「ふふ~ん!こんなこともあろうかと!というプランがあってですね・・・!」
「(あ、やばい、これ機体オタク魂に火が付いたな)」
その後、芥は元宮の機体談話に付き合うこととなった。
情熱は伝わるが、技術的なことはさっぱりだった。
翌日。
「朝早くからありがとう。さっそく本題に入るとしましょう。」
司令室に集まった基地の3人。
弓波だけがいなかった。
「あれ、弓波は?」
「彼女なら特別な個室で心身を整えているところよ。」
「あ~、営巣ね。すてきな言いかえだこと。」
「こほん。さて、今から本学園前哨基地の目的と、この基地であなたにお願いしたい仕事を説明するわ。」
美月がホワイトボードに書き込んでいく。
「本基地の目的は、100日間後方を守ることよ。後方の民間人の避難と物資の移動のためにこの日数がかかるわ。」
目的!と赤ペンで書かれる。
「次にあなたに頼みたい仕事について。一つ目はモンスターとの戦闘よ。これは言うまでもないわね。」
モンスターの絵にバッテンが描かれる。ちょっとかわいい。
「必要なら戦闘シミュレーターも起動できるわ。いつでも言ってちょうだい。」
司令室にある戦闘シミュレーターを指さす。人が入れるくらいの筐体だ。
訓練生時代にさんざんお世話になったものだ。あとで起動してみよう。
「二つ目は物資の探索よ。この辺りを探索して物資を調達してちょうだい。物資は後で説明する基地の復興に役立つわ。このあたり一帯は無人地帯よ。遠慮なく徴収しなさい。」
物資探索!と書かれる。
「最後は本基地の復興よ。今、この基地はあらゆるものが足りてないわ。」
美月がわなわなと震える。
「お風呂にすらまともには入れないのよ!これは由々しき問題だわ!」
「今まではどうしていたんだ?」
「かろうじて水の出るシャワーを使っているわ。けれどこれでは士気も下がる一方よ。」
バンッ!と美月はホワイトボードをたたく。
「物資があれば、将来迎撃装置も作れるわ。基地の復興は急務よ。」
基地の復興大事!と美月が力を込めて書いた。
「さて、最後に。いいニュースと悪いニュースがあるわ。」
「それってたいていどっちも悪いっていうオチだよな。」
「いいニュースから行きましょう。元宮さん、説明をお願い。」
「はい!わっかりました!」
さすが元宮、機体のことだとすぐわかる。
「こほん。先日の烈風、あれは修復不可能でした。」
「あ~、他の機体に乗れっていうこと?」
「まあまあ、最後まで聞いてください、芥さん。」
そういってわざとらしく元宮は続けた。
「昨日の時点で、この基地には乗れる機体が弓波さんの業火と壊れた烈風しかありませんでした。」
「な、なんだって!?」
「搬入予定だった他の第二世代機体も、パーツだけしか届いていないというありさま!」
「もうおしまいだ~!」
「でも考えてみてください!なければ作ればいいじゃない!」
「おおっ!」
「そこで私が作りました!芥さん専用機、第二.五世代機体を!」
「いよっ!さすがは元宮!」
「何なのかしら、このテンションは・・・?」
「第二世代機体すべての特性を兼ね備えた進化型の機体、その名も・・・」
デケデケデケデケデ~ン!
「『陣風』!」
「きゃ~、元宮さん素敵!抱いて!」
「まあ、初期能力、どの機体にも及ばないんですけどね・・・。」
「いやダメじゃん!」
「落ち着いてください、芥さん。まだ続きがあるんです。」
「はぁ、ここからは私が話すわ。」
「ああん!いいところだったのに~。」
「陣風は、追加改修パッケージを使用することで能力を上げることができるわ。これが進化型と呼ばれるゆえんね。」
「ほうほう。ちなみにその追加改修パッケージはどうやって手に入れるの?」
「物資を消費して追加改修パッケージを作るわ。つまり探索が大事ということ。」
「悪いニュースってもしかして・・・。」
「たくさん探索に出てね、ということよ。」
「よ~し、物資探索がんばっちゃうぞ~!」
ちくしょうメ~!そう言って芥はゴミ箱を蹴った。
・・・
場所は変わって地下格納庫。
そこにはショップのコンソールがあった。
通常ショップのAI音声は無機質なもの。しかし「それ」には確かな知性があった。
「この気配は・・・、ご友人?いやまさか、そんなはずは・・・。」
「それ」は静かに考えこむ。
「見極めるしかないようですね、私のご友人たり得るか・・・。」
誰もいない格納庫で、その声だけが静かに響いた。
・・・
7年前
モンスター出現。
6年前
第一次モンスター侵攻 被害甚大。
第一世代機体「日輪」実践投入、小型・中型モンスターに有効。
5年前
大型モンスターを確認。日輪精鋭部隊、大型モンスターに対抗可能。
4年前
第二次モンスター侵攻。超大型モンスター出現。日輪、対抗不可。
第二世代機体「風林火山」シリーズ、超大型モンスターに対抗可能。
3年前
第三次モンスター侵攻、邪神出現。
第三世代機体「水雷」シリーズ、邪神の撃退が可能。
第三.五世代機体「闘人」開発成功。
2年前
第四世代機体「大紫」シリーズ開発開始。
1年前
「大紫」シリーズ先行試作機完成。最前線にて運用中。
「XX」完成間近。
そして現在・・・。
芥一、学園前哨基地に着任。
サバイバル・ロボットマーチ、開幕。
人物能力表
芥 一
指揮:C 体力:B 整備:C 操縦:B 知性:C
ご友人力:ご友人!!!
新任パイロット。やたらとキモい存在に絡まれるのは、まだ先の話。
久遠 美月
指揮:A 体力:B 整備:B 操縦:B 知性:A
カリスマ:A
訓練学校を首席卒業した万能の才媛。部隊の指揮官。
元宮 理沙
指揮:B 体力:D 整備:A 操縦:C 知性:B
機体オタク:A
機体の整備に高い適性を持つ。機体オタク。
弓波 奈保
指揮:E 体力:A 整備:D 操縦:A 知性:E
運動神経:A
優れた運動神経を持つスポーツ少女。
・・・
はじめまして、ギンユウシジンと申します。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
このサバイバル・ロボットマーチは、元は成人向けゲームでしたが、
この度全年齢版の小説にしてみました。
更新はゆっくりですが、お付き合いいただければと思います。
面白かった、応援してもいいよという方はブックマークをお願いいたします。
執筆の励みになりますので、お待ちしております。
ちなみにこの作品のジャンルは、「ファンタジー」です。




