生徒会室へ
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「……、…………、なあ由井?」
放課後、俺はとある物体の隣で、そのさらに隣にいる由井に問いかけた。
「ん~?」
ふあっ、と伸びをしてこちらに向きつつ由井――その顔があーあとでも言いたげな表情になる。
「無理無理、私は嫌だかんね?」
「俺だって嫌だ……っと、岬は?」
イスの上で振り返ると岬は笑っていた――うん。
「聞くまでもなかったですね、はい、いえその、申し訳ありませんでした」
その笑顔が何を聞こうとしているの? 死にたいの?とでもいっているように見えて、正直恐ろしかった。
「まあ冗談はさておいても……それ、起こさないとダメでしょうね」
ぐるりと再度それに向き直り……かわらずそれはそこにあった。
「一応いっとくけど、それ寝起きはものすごい機嫌悪いから……っとごめん神野、そういえば私たち今日一緒に下の商店街のケーキ屋さんにいく約束してたの!」
「ああ……そういえば今日が前に話してた特売の日だったわね、ごめんね神くん――そういう訳で私たちは行くわ」
そう言って本当に教室からでて行った岬達……それはいい、いやよくはないけどそれはいい!
それを見る……熟睡している。
6時限目の半ばからSHRの最中もずっと寝ていたそれ――御堂修介が目の前にいた。
気持ちがよさそうに寝ており、人が少なくなり静かになった教室では小さな寝息が聞こえている。
起こさずに済めばいいなとは思うものの、この寝方はそんな気配を微塵も感じさせない。
……起こすしか、ないのか?
いやでも放っておけばそのうちおきるという可能性も――ダメか、今日は見回りについていく約束がある。
起こすか……起こすしかないか。
ではどうやって起こす?
軽く揺さぶってあたかもなにもしてなかったようなそぶりをして自然におきたんだよー的なことを装おう……ダメ、だな。
信一先生にSHR中に大声で呼ばれても起きなかったようなやつだ。
と、なると普通に起こすしかないか?
ない、よなあ。
「おい修介、起きろ――生徒会室にいくぞ」
肩を揺さぶり修介を起こしにかかる――果たして修介はそれだけで体をびくりと震わせ、二三回身じろぎをした後こちらを向いた。
「チッ、アアッ?」
こちらを見据える表情はまさに猛犬のそれ。
だから起こしたくなかったのだ。
自分が起こされる場合機嫌が最悪になるから放置したかったのだ。
「チッ、クソ、でなんだよオイ?」
「だから、今日生徒会室によばれてるだろ?」
「アー、アーアー、そうな、確かにあったなァ、そんなのがよ……チッ」
「ああ、だからいくぞ割と時間くっちまったしさ」
チッと舌打ちをした後、わあってるよと言った修介は鞄に道具を詰め込み、それを持ち上げ、
「アアークソ、んじゃさっさといくとするか?」
彼の不機嫌な時間は終わりを告げたようだ。
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生徒会室、修介と並び立ち、扉をノックしようとしたところで。
「……ふむ」
逆に扉が開いた。
合わせて下がった俺たちの視界には斉藤先輩が。
「丁度いいタイミングにきてくれたな。
差支えがなければ鞄を生徒会室において早速見回りにいこうか?」
今回はちょっとだけ日常パートを。
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