見回り――生徒会長
――――――――――
「とはいえ、だ」
見回りの開始から十分、屋上から順に、四階、三階、生徒会室のある二階、と見ていき、まさに生徒会室の前まできたとき斉藤先輩はそう言った。
修介と二人、その背中を追いながら話しを聞く。
「見ての通り、格別何かがあるわけではない。
実際俺がこの見回りをするのは二年目だが、何か事件を目にしたことは数えるほどだ。
まあ、生徒会が受け持つのはSHRなどの中心となる北西棟のみ……だということも理由のひとつかもしれないがね。
無論、見回りとは名ばかりのものではないのだが――ふむ、丁度いい実例があった」
そういう斉藤先輩の顔は窓――いや、その先へ向いていた。
その方向へ俺も顔を向けた。
目を凝らし見据えると、なるほどそういうことかと理解できた。
「へえ?」
隣で聞こえた修介の声は楽しげなものだ。
「だがまあ……二階と一階の見回りが終わっていない、あそこにいくのはそれからでいいだろう」
そしてそういう斉藤先輩の横顔は優しげに微笑んでいた。
――――――――――
一階の見回りまで終えると、斉藤先輩と共に件の場所――体育館脇の室外プールへとやってきていた。
聞こえてくる声――楽しげなそれらを聞きながら、俺たちはプール前の鉄格子の前に達、斉藤先輩がマスターキーでそれを開けた。
備え付けのシャワーがある通路ではなく、その隣のプールへと直接つながる階段を上ると――そこには予想通り複数人の男女がいた。
「げっ!」
その中の一人、こちら側に一番近い場所で泳いでいた男子がそう漏らすと視線がこちらに集まった。
そこにうつるのはすべて同じで、しまったとでもいいたげな表情。
「何が、げっ、だね?」
そう訊ねる斉藤先輩に、最初にうめき声を上げた坊主頭の男子が、
「あっははー、何がだろうなー?」
しらじらしい声色でそういう彼に、斉藤先輩は、はあとため息をつき。
「で、許可はとっているのかね?」
問われた坊主頭の男子は再度あっははーと笑うと、
「取ってると思うか?」
「いや、全く思わんな――で、許可はとっているのかね?」
「いやはや慧眼の通り、全くとってないわけですなこれが!」
「……ふむ、そうか――ならば仕方がない、罰則を与えよう」
「三時間以内にこのプールを掃除し、俺に報告してくれ。
この後俺は生徒会室で雑務をこなす予定だからおそらくはそこにいるだろう、でなければ北西校舎の職員室だ。
ああ……そうそう俺はこう見えても忙しいからな、こちらで多少の騒ぎをしてもこれないかもしれないので注意してくれ」
後ろにいる俺たちには斉藤先輩の背中しかみえない、だが聞こえる声色のそれは、生徒会室まえで聞いたときと同じものであり、隣の修介のほうをみると、修介もこちらを見据えており、ふっ、と笑って肩を竦めた。
あくまでも好意的な雰囲気で行われたそれに、俺は修介は良いやつなのだなあとあらためて思った。
普通に考えればこの時期にプールに水がはってる訳がない――何故ならば今が五月だからだ。
あるいははってあったとしてもそれは汚れきった水だろう。
だというのに彼らが入っているプールは当然水がはっており、なおかつ清潔だった。
恐らくは魔術、だろう。
何をしたのかまでは分からないが、ここに清潔なプールがある以上は片付けも容易だろう。
時間にして10分かそこら――それに対して三時間の猶予と最後の言葉。
ようは片付けさえすればお咎め無しであそんでもいいぞと、そういうことだろう。
「さっすが生徒会長殿!
懐が深い!」
坊主の男子が今までの表情を取り払って、喜色にそまった顔でそう言った。
続くように他の人たちが斉藤先輩をたたえる言葉を言い、それに斉藤先輩は苦笑した。
「何をいっているかが分からんな――俺はただ罰則を与えただけだぞ?」
「ともかくありがとー斉藤クン!」
そう言ったのは女子生徒、どうやら話しの間にこちらのほうへ寄ってきていたらしい。
プールサイドちかくまできた、茶髪でショートカットの彼女は白いビキニタイプの自らの水着を指差し、
「ところでこれ似合ってる、かな?」
それは、隠している面積が一般のビキニと比べ少ない、扇情的なもので――俺だったら答えに困るだろう。
だが斉藤先輩はふむとつぶやくと。
「似合っている、似合ってはいるのだが――如何せんボリューム不足ではないかね?」
……大真面目な声でそういった。
反射的にショートカットの女子の胸を見る――確かに、と思わずいいそうになった。
Bはあるだろう、だがCはない。
「あははー、言うと思った!
いやもう本当斉藤クンって正直だよねー。
それが美点なんだけどさ」
笑っていう彼女は初対面であろう俺から見ても魅力的だった。
……キレイとかそういうんじゃなくて、自然にわらってるからだろうか?
「ありがとう。
そろそろ見回りに戻ろうと思うが、くれぐれも掃除のことは忘れないようにな」
くるっと反転し、俺たちのほうへと向いた斉藤先輩。
苦笑をしつつも、まあこんな感じの仕事がメインだと言い、一間を空けて行こうかと促した。
「あ、すいません一つだけいいですか?」
「……む?」
「ああいえ斉藤先輩にではなくて、先輩?方になんですが」
「おー?」
坊主の男子がそう答えた。
ずっと気になっていたことがあるのだ。
「寒くないんですかー?」
今は五月だ――暖かくなってきたとはいえ水温はまだまだ低いだろう、さむくはないのだろうか?
そう思って訊ねると、肩をポンポンと叩かれた――修介だ。
顎で示されたのはプール。
「水をよく見てみろ」
境界線、そこを注視してみると、なるほど。
俺が頷くと、坊主の男子はそうそと笑って。
「これ温水なんだよ、まあぶっちゃけ魔術つかって最初に暖めただけだけどな?
と、斉藤と見回りしてるってことはお前ら噂の一年坊か?
ま、いろいろと大変だろうががんばれよなー」
坊主の男子、改め坊主先輩の言葉に俺と修介はありがとうございますと言った。
俺のものは多分ちょっと恐縮がまざり、修介のものは照れがまざっていた。
「さて、そろそろ次に行こうか?」
「はい」
「うっす」
一つお尋ねしたいことがあるのですが、この物語に登場する人物は人間味があるようにできているでしょうか?
それが気になっています。
と、いつも通りご意見ご感想、誤字脱字報告お待ちしております。




