実技 流していこう
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五時間目は授業の時間である。
俺は修介と校庭南西で模擬戦をしている。
「しっ!」
気合と共に一打――氷柱を破砕。
「――生成を繰り返し、出現場所を変更」
修介の詠唱、吸い寄せられた魔力は通常――ようするに威力を加減した魔術だ。
生み出された氷柱は4、しかしそれは恭介を中心に10メートルほど離れた場所に四角形上に設置されており、そのサイズは以前に比べ格段に小さく1メートルほど。
「ま――ずっ!」
「――同時射出」
彼我の距離は20、つまりこれは。
――攻撃の方向を散らばせて捌かせないつもりか――っ!
ならばと身体を翻しつつ迎撃をしようとして、
「っ」
身体が重い――これは避け切れないかっ!
体が崩れたまま捌きに入り、しかし避け切れず捌かねばならない数は3。
右手左手を総動員し、捌けるか――否、不可能。
そう判断し、両手は動きつつも結果は見えていた。
「づっ」
左肩に氷柱が直撃し、吹き飛ぶ。
背中から地面に追突する直前、受身を取りすぐさま起き上がる。
だが拳を構えはしない、変わりに口を開く。
「はっ、はっ……まいった、俺の負けだ」
「…………、いや、今のはノーカンだ。
試しにやってみたはいいが、あんなモン実践に耐えうるレベルで出来る訳がねえ。
っていうよりも全力で戦闘してればあれくらいは避けられただろうが?」
修介のいいたいことは分かる。
これは両者の生命的な安全を取り計らった上での模擬戦で、つまるところお互い同じ程度まで魔術を制限して戦っていたのだ。
だが、だからこそ全力だったらという言葉はいいわけにはならないと思う。
「今回の全力はアレだったんだから、やっぱりあれは俺の負けだよ。
例えあれをやり過ごせたとしても次弾はもっとやり過ごすのが難しくなってただろうしね」
「アー、クソ。だからそもそも全力なら――ってんなこといっても仕方ねえか。
案外難しいもんだな、対等な条件ってやつは」
頷いて、ほうと息を吐く。
「悪いけど体力があんまり残ってない、今回はこれで終わりでいいか?」
40分ほど走りまわりつつ戦闘を行っていたのだ――魔力的な限界ではなくとも肉体的には既に限界にちかい。
もっとも魔術もイメージを具現化するというものである以上精神的に疲れていくのだけれど。
「アー、構わねえよ――神野とやるのはスリルがあって楽しいが、その分精神的に疲れるからな」
「俺は楽しいっていうより一杯一杯だけどな」
「アン? お前男ならツエエやつと戦えたら楽しくなんねえか?」
苦笑。
「分からないでもないけど、あいにくそんな余裕はなくてさ」
今回喰らった氷柱だって、実戦レベルの威力だったら戦闘不可能なレベルのダメージを負っていたかもしれないのだ。
そう考えると余裕なんてものはどこにもない。
「ハッ、まあいいけどよ」
言って修介はどこか一点を見つめる。
その視線を辿るとそこには岬と由井がいた。