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いよいよ船旅

 司と凌久はその後も黒狼の群れや山奥に巣を作り始めていた紅蜘蛛(くれくも)などとも修行と称して死闘を乗り越えてきた、特に紅蜘蛛などは毒あり機動力あり空中戦ありなどでなんとか倒し切った形だった。

 十「よしよし!よくしのぎきったなぁこの地域じゃあもう修行にはなりそうもねぇからそろそろ行くか」

 司「師匠、いきなり強い魔獣選んだね」

 凌「本当だよ。今までは相手が攻撃に転じる呼吸が読めてたからよかったけどコイツは虚実混ぜ合わせて凄くやりずらかったよ」 

 十「まぁそうだろうなぁ、お前らの元の先生が基本を徹底してたお陰なんだからよぉ感謝しとけよなぁ、俺はお前らを見極めてギリギリの奴を選ぶだけなんだからよ?あっはっはっはっは」

 司「くそっ楽しんでるな師匠」

 凌「ああ、どSだな」

 なんだかんだで師匠に出会ってから10日、濃密な魔獣との戦闘での生命のやり取りから学んだ事は多く師匠の的確な指示を素直に聞き、手にした力は二人を成長させていた。

 宿に着くと琴音とルルが待っていた

 琴「今日も返り血だらけじゃの、はよう風呂へ行くえ」

 ル「わたくし達も行きますわよ琴ちゃん」

 琴「そうじゃな、では風呂上がりに食堂じゃな」

 司「ああ、そうしよう」

 凌「だね」

 疲れ果てている様子の二人

 琴「なんじゃなんじゃ辛気臭いの、折角今朝十蔵に今日の修行で無事帰ってこられたらと、いよいよ南の筑前行きの舟券を買ってきたのじゃぞ」

 凌「えっ?確かにこの地域じゃ修行になりそうにないって言ってたけど」

 司「いよいよ新天地かよ、早く風呂行くぞ凌久!」

 凌「ああ!」 

 さっかまでしょんぼりしていた二人だが、一気に元気になりはしゃいでいた。


 時は遡り盗難のあった夜。

 盗賊「森で会ったアイツらが頭目の仰っていた奴等だとは、不覚にも出逢っちまった、だが奴等は今本堂へ手ぶらで入って行ったからな、今なら大丈夫だろう」

 素早く荷物のある小屋に侵入したらこちらを見ている様な嫌な気配がしたので手前にある鞄をサッと手にして素早く去る、すると階段らしきものを駆け上がる音が近づいているが、もう社の外へと脱出していたのだった、そのまま荷物も確認せず脇目も振れず全力で頭目の元へと駆け出して行ったのだった。


 いよいよ船に乗り込み出発の刻を待つ。司、凌久、琴音、ルル、十蔵と十蔵のお付きだと言う山元沙月(やまもとさつき)と言う女性も乗船していた。

 十「司、凌久!浮かれてるトコ悪りぃが常に警戒はしておけよ?この逃げ場の無い空間で襲ってくる奴等も居るしよぉ、しかも海にも魔獣はいるからあんま身ぃ乗り出すなよ」

 司「まぁそうだよな、でも俺達狙われる事って………」

 凌「あるとすればアレだな、盗賊見逃したからアイツらが徒党を組んでくるかもな」

 司「そっか、殺るべきだったか」

 十「そういやぁ剣筋からお前らまだ人間斬ってねぇな、じゃぁ丁度良いかもなぁ、一等強えのは任せとけ、いいか躊躇してたら自分か自分の大切な者の生命が無くなるからよぉしっかりと心に刻んどけや」

 ズラッと五人の黒ずくめの刺客が現れた。十蔵はまた鼻唄を唄いながら一見無防備に相手に向かって歩き出す

 刺客1「なめやがって!うおー」

 十「人のぉ人生〜河のよぉ〜♪あの岸ぃこの岸ぃ越えて行きぃ〜♪滝やぁ岩場をぉこ〜えてゆぅ〜きぃ♪いつしかぁ海へとぉ還るのさぁ♪」

 刺客1すれ違うと、いつの間にか刺客は絶命していた。次はこの刺客の頭領に向かう、残り三人の刺客一人は沙月が相手どり、残りは司達四人で対峙していたが、司と凌久は対人初だとしてももうこの刺客の力量では相手では無かったので司は向かってきた剣を斬り上げ返す刀で袈裟斬りで倒しキチンと胸にとどめを指す、凌久は相手が腰辺りに構えて突いて来たのでヒラリと躱し際に首をはねる、あっという間に終わる。

 沙月も難なく懐刀にて後ろから首元を貫いている、

十蔵も鼻唄が終わる頃には相手が真っ二つになっていた。

 十「んだ歯応えのねぇ奴等だな、さぁて沙月頼んだぞ」

 沙「はっ!」

 沙月は十蔵が倒した者の物色をしている。

 十「ところでお前ら初人斬りだし、初船上だし、よくこの揺れを乗り越えたなぁ、まぁあとは船旅を楽しもうせ!魔獣は基本船員が倒してくれるからよ」

 沙月が調べ終わった遺体を海に流していく、装備品などは珍しい物でも無い限り船側に渡す、船に迷惑をかけたお詫びの品とでも言おうか、血糊は船員が一生懸命洗ってくれていた。

 十「で?どうだった?」

 沙「はっ!彼らへ放たれた刺客のようですね、我々に向けられたのであれば弱すぎますからね」

 十「まっそうなるわな、司、凌久、何者なんだコイツらは、もう結構育てちまったけど不味かったかぁ?まぁでも俺の直感を信じてみるかぁ」

 沙「ふふふ、そうで御座いますね、では私はぐるっと見廻りして参ります」

 十「おぅ!頼むゎ」

 

 ひと騒動が落ち着き見渡すと右は綺麗な水平線左は大和國の山々が連なり所々小さな町や村みたいな集落が見えていた、思っていたより揺れも少なく船員に聞いてみたら運がよかったみたいだった、普段はそこかしこで青ざめながら吐いている人達が沢山いるらしい、船には食堂が備わっていたがお風呂は流石にないようだった、騒動のせいか他の乗船客はあまり近づきたく無いようだったが一人だけ黒豹族のジャルゼさんは話かけてくれた、靴職人をしているようで司と凌久の靴に興味があったようだ、まぁ現代社会の靴だからね、色々と聞かれたが製作者ではないのでなんとなしに話を合わせる程度だった。


 船内へ入り食堂でご飯を食べる、出発から2日目の朝だった。

 凌「そういや師匠は斬る前鼻唄唄うのはなんでなの?」

 司「俺も気になってた」 

 十「あぁ、まぁなんだ一目見て強いか弱いかなんとなくわかるから、よえぇと自然と唄ちまうんだよな、まぁなんだ知らぬ間に唄ってるから気にすんなや」

 船員がそろそろ到着すると伝えに来たので甲板へ出てみると、凄く綺麗な港が目の前に広がっていた、出発した港は小さかったんだなと思った。

 司「ここが筑前か、どんな旅になるか楽しみだな」

 凌「そうだな、強そうな魔獣狩って強くならなくちゃな」


 影7「ばり強そうなヤツがおるようね」

 側仕え「はい、そのようです」

 影7「まあよかばい、うちん刺客ば簡単に倒す腕前は認めるわ、ばってん、うちんテリトリーで好き勝手はしゃしぇんばい。わかっとーよね?」

 側「勿論でございます!私めにおまかせを」

 影7「たのんだっちゃん」


 船を降りて背伸びをしながら、あまり揺れなかったけれどもやっぱり地面って安心するなと思う。

 十「悪り〜けどよ、チョイと野暮用が出来ちまったから一日外すけどまだ魔獣とは戦うなよ?とりあえず街をブラブラしててくれや、じゃぁな!」

 と、十蔵が一旦用事ができたらしく、沙月さんと出掛けて行った。

 司「まぁそうだな、新天地と言えばまずは名物の食べ物じゃないの?」

 凌「いぇ〜い!」

 琴「そうじゃな、船で食うたかりーなる食べ物も美味かったのじゃが、街に足を踏み入れた途端なんだかいい匂いがしてきての、はよう行くえ」

 街の人におススメを聞いてみると水炊きとモツ煮と豚骨ラーメンまであると言う、なんだか食に関しては現代に近い感じがしている、港が発展しているからかもしれないが。

 食べ歩きをしていると黒縁眼鏡の真面目そうな男の人がこちらへ近づいてきた。

 男「こんにちは、私、久留島雲雀(くるしまひばり)と申します、この街は初めてですね?」

 司「そうですが?あ、俺は御影司です」

 凌「俺は蓮見凌久です、こんちわ」

 琴「妾は葛葉琴音え」

 ル「ルルミラ・ヴァーユです」

 四人はなんだか少し怪しんでいる。

 雲「決して怪しい者ではありません、私は初めてこの街に来てくださった方々へ、より楽しんで頂きたく地元を案内させて頂いておる者でございます。ところで皆様は名物料理はいかかでしたでしょうか?」

 凌「そりゃ美味かったですよ?」

 雲「それは大変嬉しいお言葉で御座いますね、で御座いましたらば、温泉などはいかがでしょうか?旅の垢を落とされて一息ついては如何かと思いまして」

 琴「ふむ、腹も膨れた事じゃし良いのではないかえ」

 ル「ええ、ええ!温泉で疲れを癒やして、琴ちゃんで目を癒してきますよ?」

 司「最近一緒に依頼とか受けてなかったけど、ルルはヤバい奴になっちゃったの?」

 ル「失礼ですよ司、私は温泉で目を潤そうとしていただけですわよ?決して琴ちゃんで目の保養などとは考えてもおりませんわ」

 司「うん、心の声ありがとう、琴音はいいのか?」

 琴「うむ、信仰とはこうゆう事なのじゃ」 

 司「言ってる意味が少しわからないけど、まあいいか」

 凌「話もまとまったみたいだし、温泉行くぞー」

 雲「畏まりました、では手荷物など私がお預かり致しましょうか?」

 凌「いや、それは遠慮しておきますよ、盗賊さん」

 雲「なんの事でございましょうか?仰っている意味がわかりかねますが」

 司「んー、師匠との修行の日々で魔法はてんでやってこなかったから上達しなかったけど、怪しい奴の気配は分かるようになったんだよね、て事であんたは何者だ?」

 雲「くっくっく、これはこれは私とした事がまだまだですね、こんな簡単な事もこなせないとは」

 司と凌久は刀を抜く、ルルも弓を肩からはずす。

 周りの一般人「おいおい、逃げろ!」

 女性「キャー!」

 出店の店員「警ら隊を呼べ!」

 凌「あらら、大騒ぎになっちゃったよ?」

 司「船で襲ってきたのもアンタの差し金か?」

 雲「まぁ大体お察しの通りですよ。では捕まる訳には行きませんのでこの辺でお暇させて頂きますね」

 雲雀は正面を向いたまま、後方へ大きく飛び屋根の向こうに消えていった。司と凌久とルルは臨戦体制を解き武器をしまう。

 凌「みなさん大変お騒がせしましたが、これは演技の練習でした、突然スミマセンでした!」

 一般人「なんだ人騒がせな」

 出店の店員「本当かよ?」

 周りに司、凌久、ルルが頭を下げて回る。

 琴「まぁ早うここを去るほうが良いえ」

 司「そうだな、しかし何で俺達を狙ってくるんだ?」

 ル「………」

 そそくさとその場を去る、今日泊まる宿に温泉が付いてる所を探し決める、モヤモヤした夜が更けていく。


 久留島雲雀「大変申し訳ありませんでした、巴奈々様」

 小野咲巴奈々(おのさきばなな)「失敗したんね、まあしょんなかばい、次ん作戦ば考えんしゃい」

 雲「はっ!必ずや例の物を手に入れてみせます!」

 巴「雲雀ん事は信頼しとーけん、まかしぇたばい」


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