心のざわめき
「おっきぃお城だね。すごーいでかいお家だ。」
先ほどまでの気持ちを吹っ飛ばすように大きく両手を広げて、驚く。
「そりゃお城だからね。」
そん聖恵を見てやれやれといった感じの保護者目線で聖恵を諭す。
「先生は自由時間って言って、さっさとどっか行っちゃったけど、どうする?お昼食べてから少し散策する?」
「そだねー♪」
聖恵とノノ花が2人で行こうかと思った矢先、1人のクラスメートが2人の前に立つ。
「桜井さん良かったら俺と自由時間回りませんか?」
「えっ?」
「抜け駆けはずりぃぞ。俺もよろしくお願いします。」
「いやいや、こんな2人は置いといて、僕と一緒に回りませんか?」
あれよあれよとクラスメートの3人に声をかけられた聖恵は、いつもなら直ぐにノノ花の後ろに隠れるのだが、今回は少しじっとしている。
「ハイハイ、3バカ兄弟は散った散った。あんた達も諦めわるいわね。」
ノノ花は3人を軽くあしらいながら、手であっち行けとやる。
「待って、せっかく声かけてもらったんだから、私行って来ようかな。」
「ちょっとあんたいきなりどうしたのよ。いつもなら相手にもしないのに。」
「えへへ。たまには行ってみようかと」
「どういう心境の変化なのよ。」
3人をあしらうノノ花を止める。
「おい久地。桜井さん良いって言ってんだからいいじゃねぇか」
「うっさいわよ、あんた達」
「たまにはノノちゃんを私のお守りから解放してあげなきゃね。立川くんよろしくね」
ノノ花に手を振ると、最初に声をかけて来てくれたクラスメートの立川と一緒に歩いて行った。
「ちょっと聖恵、私あんたのお守りしてるなんて思ってないわよ。」
ノノ花が声をかけると、少し離れた聖恵がわかってるよ~っと大声で返事をする。
「まぁあの子が立川と行きたいって言うならそれでもいいか。あんた達邪魔すんじゃないわよ。」
フッと肩の力を抜き、残った2人に聖恵の邪魔をしないように殺気を飛ばす。
勢いでノノ花と分かれた聖恵であったが、立川の話はほとんど上の空で聞いていない。せっかく聖恵と2人になれたのだから、必死に頑張る立川だが、聖恵は右から左に抜けていくということを体現している状態だ。
理由はやはりノノ花が影芝と連絡を取り合い、その返信を嬉しそうに話すノノ花の顔は今まで見たことがなく、女の勘がこれは恋する乙女の顔だと感じてしまったからだ。
聖恵自身が影芝を好きなのかと聞かれたら、正直わからないというのが本音だった。だったらノノ花が影芝を好きでも問題なさそうだが、胸かざわついてしまう。その為今回の自由行動を離れる事にしたのだ。
お昼ご飯を食べた後、城の周りを散策する2人は城門の前の仁王像を眺めていた。
立川が仁王像についての、うんちくを語るも聖恵の耳には入ってこない。
「あなた、愛奈?。うわぁー絶対愛奈だ。久しぶりだね。」
すれ違った女子大生ぐらいと思われる茶髪のロングヘアーに赤い眼鏡をかけた人が聖恵に話しかける。
「えっ?」
「久しぶりだね。会うのはえーっとあの時以来だから5年振りぐらいなのかな。」
赤い眼鏡の女性は肩をバンバンと叩きながら、馴れ馴れしく話しかけてくる。聖恵は一瞬驚くも何かこの感覚に戸惑いながらも懐かしさを感じていた。
「えっと、その~」
「あ~思い出せないの。ショックだわ。紅葉よ。向井紅葉。愛奈と私と影芝と翔とよく一緒に遊んでたじゃない。」
「一緒に遊んでた?紅葉に翔·····」
紅葉と翔。新しく過去に自分が関わっている人物の名前を聞き、黒羽を見ていると急にいくつかの場面が頭の中でよみがえる。
幼少期の聖恵、影芝、紅葉と翔の4人で砂場で遊んでる姿、机に座り、宿題する姿、スポーツをする姿。
どれも聖恵自身が思い出せなかった昔の記憶である。しかし、頭の中に一気に色んな場面が流れてきたことで、パニックになってしまった。
「あぁぁぁぁぁ!」
両手で頭を抱え、叫びながらその場に座り込んでしまう。




