第40話 ラッキーの決断 (生後53日目)
前回のあらすじ
水精霊の話を聞いたことで、今回の事件の真相を知ることができた。だが、問題はその後に発生した。眷属化、------するかしないか、俺はどちらを選ぶのが正解なのでしょうか?
☆☆☆
------さて、どうしたものか。
水精霊は、目を細め、じっと俺を見つめている。
多分、試されてるな。
------俺は有希ちゃんと出会って、まだ日が浅い。それに、陰陽師の事をよく知らない。軽々しく判断するものじゃない。有希ちゃんや陰陽師のことをもっと深く知る時間が必要だ。現状、有希ちゃんは信頼に値すると思うが、陰陽師が怪しい。眷属化のスキをついて、俺自身が利用される可能性もある。
(考える時間をくれませんか。)
有希 「どうして!ラッキーは私といるのが嫌なの?」
そんな悲しそうな顔をしないでくれよ。
(眷属化すれば、アリー母さん・レオ・リル・カイ・ランド・タロウ、これまでに会った色々な動物たちと、同じ時間を生きれなくなる。それを考えると、あと一歩踏み切れないんだ。それに-----、いやこれはいいや。)
有希 「あ!ごめんなさい、自分のことしか考えてなかったわ。」
明希 「それで良いのよ、ラッキー。いかがですか、精霊様。」
水精霊
「うむ、ラッキーは合格だな。自分本意ではなく、物事をきちんと考え、正しい答えを出している。」
(あのどういうことですか?)
水精霊
「あのまま即決していたら、2人とも不合格で眷属化は、なしになっていたということだ。」
えー、何それ!
水精霊
「そんな簡単に眷属化出来るわけないだろう。眷属化で最も重要なのが、主人との絆だ。まず、それを試した。ラッキーは主人だけでなく、物事を良く考え、答えを出した。合格だ!だが、有希は自分本意でしか考えていないため、今回は不合格だ。」
それって、始めから不合格ということじゃないか。まさか、有希ちゃんが不合格とは。有希ちゃんは、この世の終わりのような顔をしている。
有希 「ラッキーごめんなさい。私のせいで-----」
でも、待てよ。あの言い方だと。
(ちょっと待って下さい。今回はということは次があるんですか。)
明希
「いいえ、眷属化の試験は、通常、人生に於いて1回のみ。」
水精霊
「今回は、ラッキーという規格外の犬の陰陽師が現れた。寿命のことを考えれば、15年で死なすのは惜しい。精霊一同、皆、眷属化を願っていたが、ラッキーの本質を知りたかった。それと、現時点で契約可能なのは有希のみ。有希の本質も知りたかった。まあ、いわば前試験のようなものだな。」
なるほど!それで、俺は合格、有希ちゃんは不合格てことね。有希ちゃんの喜怒哀楽が激しいな。さっきから悲しんだり、喜んだりを繰り返している。
有希
「精霊様、自分ばかりでなく、周りの事を考えて、物事の本質を見抜ける様、精進していきます。」
有希ちゃん、小学生の話し方じゃないよ。しっかりしてるな。
水精霊
「うむ、2年後の3月、私が南条家に行くから、眷属化の返事を聞かせてくれないか。眷属化したい場合は、本試験を行うこととする。」
(はい、わかりました。)
有希 「猶予を頂き、ありがとうございます。あの精霊様、なぜ2年後なんですか?」
水精霊
「簡単な話だよ。明希から聞いたが、ラッキーは前世の記憶を引き継いでいる。そのため、今現在、身体と精神が不安定な状態となっている。この身体と精神のバランス、完全に一致するのが2年後なんだ。だから、警告をしておく。君を死なせたくないからね。
生身の身体の状態では、絶対に念話や憑依系以外の言霊を使ってはいけない。
使えば、必ず死ぬ!君も薄々気づいてるはずたよ。今わかっていることを征次郎に話してある。詳しい事は、彼に聞けばいい。」
(はい、わかりました。ありがとうございます。)
有希 「ありがとうございます。」
やはり、そうか。索敵を創った時、妙な違和感を感じたんだ。生身で、今回の術を使ったら-------考えるの止めよう。想像したくない。
水精霊
「眷属化については、精霊一同、良い返事を期待している。あと、これはプレゼントだ。ラッキーの精神と身体を安定化させる補助具となっている。生身の身体でも3回の言霊に耐えることが出来る代物だ。ただし、身に付けるのは、南条家に引っ越してからだ。オマケとして、役立つ機能も付けておいた。ラッキーは通常の動物と違って、人間の記憶があるからね。そのまま普通に眷属化した場合は、かなり酷な状況となるだろう。オマケの機能というのは、それを補助するための物だ。その機能を使いこなし、眷属化の事を考えればいいだろう。そうそう、前世の記憶を引き継いでいる件だが、私の方でも調べておこう。では、2年後に会おう。」
水精霊は、スーと消えていった。
身体と精神を安定化させる補助具か、ありがとうございます。生身の身体でも、言霊を3回使用可能か、嬉しいな。オマケの機能が気になるところだ。水精霊は、俺が思った不安をわかってくれてたんだな。そして、前世の引き継ぎの件、精霊が直々に調査してくれるのはありがたい。原因がわかるといいんだけど、俺と同じような転生は皆嫌だろうから。さて、気分を切り替えよう。
(明希さん、この箱、開けてもいいですか。)
明希 「もちろん、開けていいわよ。何かしらね?」
明希さんの笑顔が気になるな。中身を知っているのかな?
依澄 「精霊からのプレゼント、補助具て何かな?ラッキー、早く開けて。」
和葉 「依澄、ラッキーへのプレゼントなんだけど。」
(う、精神体だから開けれない。有希ちゃん、お願いします。)
うおー、何かなー、何かなー。
有希ちゃんに開けてもらった。中身は、----なんと首輪だった。
なんだ、この雰囲気、期待させといて首輪かよと、誰かが突っ込んでいる気がする。
和葉 「あら、手紙があるわ。」
依澄 「首輪とオマケの機能か。ラッキーの事を考えてとしたら、-------多分。」
どんな機能かな?
有希 「それじゃあ、手紙を読みますね。」
ごく、なんていう 内容なんだ。早く教えて、有希ちゃん。
有希ちゃんの手がプルプルと震えている。なんで!気になって見に行こうとしたんだけど、なぜか止められた。和葉ちゃん、依澄ちゃんが、明希さんも見に行ったら、有希ちゃん同様、プルプル震えていた。
なに、なんなの、なんで震えてるの!
読み終わったみたいだ。有希ちゃんの顔を見ると、今までに見たことがない程の満遍の笑みがあった。和葉ちゃん、依澄ちゃんも同じだ。
何が書かれているんだ。どんな内容で、あそこまでの笑みになるんだよ。
有希 「これいいですよね!これで、ラッキーと色々なところで遊べます。」
和葉
「良いわね!ワクチン接種が終わる前でも、綺麗な場所なら散歩して良いらしいよ。2回目のワクチン接種が終わったら、有希ちゃんの家に連れて行こう。そこで、試しにはめればいいしね。」
依澄
「待ち遠しい----かな。2回目のワクチン接種はあと20日ぐらい先か。」
(ちょっと、みんなで何を話し合っているの?手紙の内容を教えてよ。)
有希
「駄目よ。近いうちに、私の家に来ることになるから、その時までのお楽しみよ。」
え、家に行けるの!それは嬉しいけどさ。なんで、内容教えてくれないの?俺は明希さんの方を見た。
明希 「とても良いプレゼントよ。私達の家に来るまでは内緒ね。」
結局、なにも教えてくれなかった。俺のプレゼントなんだけど。落ち着いたところで、明希さんが話し出した。
「さて、有希、眷属化の件、不合格と言われた以上、もっと精進しないといけないわね。」
有希 「はい、自分の精神をもっと鍛えていきたいと思います。」
和葉
「2年後に眷属化をするかどうかの是非を決める。する場合は、本試験か。頑張ってね、有希ちゃん。」
依澄
「私は、陰陽道のことはわからないけど、それでもなにか手伝えることがあったら言ってね。」
有希 「はい、頑張ります。」
有希ちゃんが満面の笑顔で答えた。有希ちゃんは、不合格のことを受け入れたようだ、一回り大きくなった気がする。
俺も強くならないとね。
たださ、俺だけ、首輪のオマケ機能知らないんだけどいいのか?
なんか凄く中途半端な気分だけど、有希ちゃんの家に行くまで待つとしますか。
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