#28
久々の真魚島。
ボートから降りてゴツゴツとした岩場に足を踏み入れる。あれからどれだけの時間が流れたと言うのだろうか。
「ヘイ、タモツ」
「……タモツ?」
あ、そうか。
「すまない。俺は保じゃない。」
「ワッツ? タカコの言ってた仲間? ソーリー……」
男はあとずさる。紀子もその警戒に合わせ、俺の後に隠れる。
「俺の言い方も悪かった。保には会ったけど、ゆっくり話をする時間がなかったんだ」
「タカコの仲間……それはオーケー?」
「うーん。実際には、孝子にも詳しい話は一切聞いていない。ただ」
「……タダ……」
「古くからのダチだ」
「オー! ヨースケ? ……オオオオー! ヨースケ!」
「って、俺の名前知って居るのかよ」
まあ、孝子とつるんでいるのならそれも納得できる……けれど。いったいこいつ、何者だ?
「あなたはいったい、誰ですか?」
「同じクエスチョン、ワタシも持っていますネー」
「改めて、笹目洋介。保のダチだ」
「パードン」
男は深々とお辞儀をした。
「ワタシは、ケンヤ・サワダと言います。ICPOのエージェントです……ヨースケの事は、タカコから聞いてるネー」
タカコから……。
「タカコ・セイ、ヨースケ、見つけられない……バット……必ずヘルプ・アス」
この真魚島という場所のせいか、傍らの紀子を一瞬、孝子へと錯覚する。
小さな頃はそんくらいずっと俺に着いてきていた孝子……あいつも本当に妹みたいな。
「俺達は偶然ここに来た。孝子には途中ですれ違ったけど俺がここに居ることは知らないと思う」
「オー! ジーザス!」
サワダは岩場に膝をつき、両手で頭を押さえるポージング。
外国人……いや、日系何世とかか? とにかくオーバーアクションだな。膝痛くないのか?
「オォォォォォ……」
首を振り落胆する様を見てちょっとあっけに取られてはいたが、思い出した。
「あ! でも多分あんたらが探しているモノ……保から預かっているぜ」
「リァリィ?!」
サワダの表情がパッと明るくなる。漫画みたいに分かりやすい奴だ。
本当にエージェントなのか? それともこれは俺たちを信用させるための演技なのか? そして、渡してよいものなのか?
「俺達は別ルートでこのヤマを追ってきた。たどり着いたところがたまたま同じだっただけだ」
「ワンダホー! とても心強い!」
渡す前に。
「協力してもいい。だがその前に俺達にはかなり情報が少ない。時間がないのは分かっている。それでも話してくれないか? 孝子とのこと。保から預かったものの隠し場所を教えるのはその後だ。もちろん隠し場所はこの子は知らない」
そんなのは嘘だ。だが駆け引きってのはとても大事なんだ。
そう。いきなり銃で撃たれて、紀子が危険な目に遭ってしまう可能性だけは潰しておかないと。
サワダは、少し悩んだあと、英語交じりで話し始めた。ネーとかウザイので要約するとこんな感じだ。
彼はとある製薬会社の不正な金の流れを追っていた。その途中で同じようにその会社を調べに日本から来た孝子と知り合い、やがて行動を共にするようになった。
その製薬会社はどうも軍事目的の何かを作ろうとしている、というとこまでは分かったのだが、肝心の工場が押さえられなくて手を出せないでいた。その糸口がどうやら日本にあると……いうのは孝子のおかげでつかめた。
そしていろいろな調査の結果、途中10回くらい孝子に告白して振られて、んで、その工場がここにある、ということを突き止めて侵入。なんとか証拠をつかもうと、まだここに住んでいた保やマリ子さんにも声をかけて事を進めてきた。
街で見た二人は、孝子が助っ人として連れてきたかつてのここの住人。
なぜ、住人である必要があったのかと、俺が尋ねると……。
「ヨースケは、仮面ライダー、知ってます、か?」
「仮面ライダー?」
「ジャパニーズ・アニメーション、ネー? 敵の組織に捕まる、改造される、バット、正義のスピリット失わないヒーローネー!」
「それと、何の関係が……」
「タカコ、ここの村の出身ですネー……」
まさか。
「まさか、あのお姉ちゃん、サカナ人間になっちゃったの?」
っと、紀子が俺より早いツッコミ。
「それは分からない……何度もヤメテクダサイ言ったヨ。バット……オンリー村の出身……工場、潜入……」
「ちょ、ちょっと待て。そこは分かった。だけどだよ。あのサカナ人間っていったいなんなんだよ? さっきディープワンって言ってたな。手術とかであんな風になるものなのか?」




