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なぜか軟禁されていました〜雑な設定の脇役に転生したら、年の離れた騎士様に執着されました〜  作者: 涙乃


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2/2

1

また一日が始まる。


ただ、過ごすだけの日々。


私の存在に、なんの意味があるのだろうか。


物心ついた頃から、私は、ずっと一人で暮らしている。


()()()()


幼い頃、誰かにそう呼ばれていた気がする。

今は、誰からも呼ばれることはないけれど。


多分、それが私の名前だと思う。


あの頃は、誰かが側にいたような気がする。いつ頃一人になってしまったのか、どうしてその誰かがいなくなってしまったのか、その辺りの記憶は曖昧だった。思い出そうとしても、頭の中にモヤがかかった感じがして、どうしても分からなかった。

まるで、無理矢理忘れようとしたみたいに……。

 

悲しい記憶の予感がするので、過去を振り返ることは放棄している。


家の周囲を見渡しても、目に入るのは木ばかり。


いったいここがどこなのかも、今日がいつなのかも分からない。


この状態で育っていたら、普通なら平静ではいられないと思う。


でも、私は、何となく自分の状況を把握している。


多分、ここは、前世で流行った乙女ゲームの世界だと思うから。


先日、偶然、どこからか飛ばされてきたビラのようなものを見つけた。

こんな所まで飛ばされてくるなんて、珍しい。

ふと手に取ると、書かれている文字が目に入る。


そのビラの内容は、この国の第一王子レオナルドの婚約発表だった。


「っ!」


その瞬間、頭にガツンと大きな衝撃を受けたようだった。

頭の中を色々な情報が、まるで走馬灯のように駆け巡っていく。


これは……前世の記憶?

そうか、ここは、()()()()()の世界だ。

乙女ゲーム「君のために全てを捧げたい」

通称「君のために」

題名の通り、ヒロインの為にとにかく周囲が尽くし溺愛するというゲームだ。


ヒロインは、少し傾きかけた貴族の娘マリア。

庇護欲をかきたてるヒロインで、とにかくいい娘。


対する悪役令嬢ポジションは、攻略対象の婚約者エリザベス。

父親の権力を駆使して、婚約者の座に収まっていた。 

エリザベスは、甘やかされて育ったせいか、とてもわがままな令嬢だった。ヒロインを陰でいじめまくっていた。

事あるごとに、マリア嬢を罵倒し、取り巻きと思われる令嬢達と嫌がらせを繰り返していた。


ところが、偶然その現場を攻略対象に目撃されて、今までの悪事が露見することとなり、あっさりと婚約破棄される。そして、めでたくヒロインとヒーローは結婚する、というよくあるストーリーだ。


王道のレオナルドルートで、婚約中にお忍びデートをするエピソードがある。

途中、レオナルドとはぐれてしまい、マリア嬢

は森に迷い込む。

その森の中で、マリア嬢は、ひっそりと佇む古びた家を発見する。


そこには、理由も分からず、ずっと軟禁されている娘がいた。優しいマリア嬢は、その娘の境遇を嘆き、彼女を何とか助けたいと思う。

すると、タイミングよくそこへ、レオナルドが辿り着く。

マリア嬢の無事な姿に安心したレオナルド。

マリア嬢は、その娘をここから連れ出したいと必死に懇願する。マリア嬢の為ならば、どんなことも(いと)わないレオナルドは、行動も早かった。あっという間に、軟禁された娘は解放され自由になる。


レオナルドは、マリア嬢の優しさにますます惹かれた。マリア嬢も、軟禁された娘を解放すべく尽力してくれた王子に、ますます惹かれた。

二人の距離が、ぐっと近づくエピソードだった。


ただ、なぜ軟禁されていたのかは明かされなかった気がする。理由が分からないとか雑すぎっ、と思わず笑った事を覚えている。

脇役の境遇なんて興味ないし。


あの時の自分が恨めしい。もっと調べるべきとアドバイスしたい。だって……。


その軟禁されている娘というのが、今の私だと思うから。リィーンという名前、軟禁されている境遇、レオナルドとマリアの結婚といい、偶然で片付けるには無理がある。


よりにもよって、詳しい説明のない脇役に転生してしまうなんて……。


でも、きっと、もうすぐヒロインがやってくるはず。


自由までもう少し。








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