第一章Episode9「今の自分にできること」
二人のマジック・ショットはドォォォンと衝突し合い爆発した…と思われた。
俺が二発目に入ろうとしたときだった。
「ん…?……い゙っっっ!?」
セリシアのマジック・ショットは勢いを失っていなかった。『フィジカルオーバー・ブースト』で身体能力を引き上げているはずなのに、今の俺には避けるのがやっとだ。
(使う人が違うだけでもこうも差が出るのか…)
さっきの一撃でわかった…というかなんとなくわかってはいたが、真っ向勝負じゃ明らかにセリシアには敵うわけがないと。
(くそっ…この力の差…どうする?)
今の俺にできることは少しでも勝てる可能性を増やすことだけだ。
今の俺にはそれしかできることがないのだから。
「さぁ!二発目行くよ!」
俺が今の一撃で戸惑っている間に、セリシアは二発目を打っていた。
「っ!?」
俺は体を斜め後ろに下げマジック・ショットの軌道から外れた。
だがその二発目で俺はバリアの端っこまで追い詰められてしまった。
「くっそ…!」と一言、口にした俺は意識的足をグッと地面に踏み込み、バリアの端に沿うように走り出した。
「逃げてるだけじゃ、私には勝てないよ!」
セリシアは走っている俺にめがけマジック・ショットを連発してきた。
今止まれば、俺はマジック・ショットを受けてしまう。
だから止まることができなかった。
(くそ…このままじゃジリ貧だ。どうすれば…)
今の俺に考えている時間などなかった。だが思考が止まりかけたこの瞬間、俺の頭の中に一つの可能性が浮かんだ。
(こ、この方法なら…で、でも…)
勝てる保証など当然なかった。だがやるしかない、これが今の俺のたった一つの可能性だ。
「さ、流石にマジック・ショットでも連射は…」
セリシアはマジック・ショットの連射で少し消耗したのか、インターバルを置こうとしていた。
その一瞬が、俺のたった一度のチャンスだった。
その瞬間、俺は右手を地面に置き、魔法陣を発生させる。
「あれって…私の真似?いや…その姿…」
既視感を覚えたのか、セリシアの唇が「ふっ」と笑みを刻む。
その笑みは嬉しいような、どこか悲しくも見えた。
「さぁ!どこからでもかかってきなよ!」
弱気な笑みとは裏腹の、揺るぎない自信がこもった声。気圧されそうになる恐怖の裏で、俺の胸の奥にジリジリとした反骨心が燃え上がった。
「よっし!」
俺は地面に向けてマジック・ショットを放った。
ドォォォンと爆発したと同時に俺はそのマジック・ショットの爆発で大きく飛び上がった。
(くっそ…高え…でもこれなら!)
俺は空中でなんとか体勢を維持していた。
マジック・ショットの勢いを失った俺の体はセリシア目掛け急降下していく。
(ここに…賭けるしかない…)
セリシアは全身を前にグッと構え、俺に魔法陣を向けて、マジック・ショットを打とうとしていた。
(まだだ…セリシアがマジック・ショットを放つ時、そこが俺のたった一つの可能性)
俺が地面に衝突する瞬間、セリシアは手にググっと力を入れ、魔法陣は光を成す。
「これで終わりだよ!アス君!」
セリシアは俺に目掛けてマジック・ショットを放そうとしていた。
「よしっ……今だ!」
俺は今度は地面に向けてマジック・ショットは放さず、斜め下方向に向けて放った。
今放ったマジック・ショットの勢いで俺の身体はセリシアのマジック・ショットをかわし、そのまま頭上を超えた。
セリシアも咄嗟に対応し、後ろに俺にもう一度マジック・ジョットを放そうしていたが
「やるね!でもそれ…隙だらけじゃ……え?」
セリシアの頭上を旋回しながら越えたその瞬間、俺は初めて彼女の完全な【死角】をとらえていた。
空中で身体を半回転させ、上下反転した体勢のまま、セリシアの背後へ向けて右手の大魔法陣を完璧にロックオンする。
「そこだぁぁあぁ!!」
喉がちぎれんばかりの咆哮とともに、俺は至近距離からマジック・ショットを解き放った。
次回Episode10「ここにいる理由」




