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第139話 防御こそ最大の攻撃

 次に見せられたのは、まるで地球儀のような形をしている奇妙な丸い装置で、その装置からは無数の長いケーブルのような紐が伸びており、それぞれのケーブルの先には、何やらソーラーパネルのような薄い鉄板が取り付けられていた。


「何コレ?」


 見せられたその装置が、何に使われるものか分からず首を傾げるニーナ。


「これは魔導防壁展開装置シールドジェネレーター。その名の通り、魔力によって強力な防壁を作り出して、敵の攻撃から船を守ってくれる。まだ試作品でいくつか欠陥が残っているが、役には立ってくれるはずだよ。中央にある丸い装置がエネルギー集束炉、そこから魔力がケーブルを伝って各防壁展開パネルへと接続される。パネルは全部で六枚あるから、船の前後上下左右、全方位全てをカバーすることが可能だ。テストはしていないが、動作確認はできている。しかし長い間使ってなかったから、動作不良を起こしていないと良いのだけれどね……」


 心配そうに装置に被った埃を取り払い、絡まったケーブルを解いてゆくラディク。シールドを張れる装置なんてSF映画に登場する宇宙船くらいにしか装備できないものだと思っていたが、どうやらエルフの技術なら魔法を使って帆船にも装備することができてしまうらしい。ここまで来ると、もはや魔法と科学の境界線が曖昧になってくる。もう何でもアリだな。


『だが使えそうだ。不良品も多いから、きちんと動くかどうかは謎だが……俺の船でテストもやってみたい。大砲も試し撃ちしてみたいしな』

「ええ、そうですね師匠」


 ラビも同意を示し、それからラディクに向かって言う。


「先ほど見た大砲や、この装置も、全て私たちの船の強化のために使わせてほしいです! 無傷で返せるかどうかは分かりませんが……それでも、許可していただけますか?」


 するとラディクは、アハハと照れ笑いしながらこう答えた。


「許すも何も、私としては壊れるまで使ってくれた方がむしろありがたいよ。これまで日の目を見ることなくずっと倉庫で眠っていた私の発明品が、こうして役に立ってくれると思うだけで私も幸せな気持ちで一杯なんだ。ここにあるマジックアイテムたちは全て最先端の魔法技術を使用しているものばかり。ゆえに、悪用しようと思えばいくらでもできるのだろうけれど……まぁでも、君たちに託しておけば間違った使い方はしないだろうから大丈夫だろう。ウッドロットに住むエルフたちのためにも、私もできることなら何なりと協力しようじゃないか」


 ラディクはそう言って、俺たちに全面的に協力する姿勢を見せてくれた。


『良かったな、ラビ』

「はい! 王国の無敵艦隊アルマーダに立ち向かうためにも、できる準備はしっかりとしておきましょう!」


 王国との決戦に向けて意気込みを見せるラビ。しかしそこへ、ポーラが手を挙げて進言する。


「ですがお嬢様、これらを船に積み込むにしても、上空に機雷原マインフィールドがあるせいで、私たちの船をウッドロットへ直接降ろすことができません。ですので、これらのアイテムをどうやって船まで運べば良いのか……」

「ああ、それなら僕のママに頼んで、ウッドロット防空騎士団のドラゴンたちに飛んで運ばせてもらうから平気だよ。折角だから、我々マジックアイテム研究開発チームも同行して、君たちの船を戦闘用にカスタマイズしてあげよう!」



 ――こうして、ラディクやエレノア率いるウッドロット防空騎士団の協力もあって、俺の船の改装計画がスタートした。


 エルフたちの手によって大砲の砲身や台座、砲弾が部屋の外へ運び出され、それを騎士団のエルフたちがドラゴンの足に固定させて、次々と空へ飛び立ってゆく。騎士団たちの乗るクリーパードラゴンは、小柄な体であるにもかかわらず、重い大砲をよく運んでくれていた。


 そんな中、魔導防壁展開装置シールドジェネレーターの据え付けや船の改装をするために、ラディク含めたマジックアイテム研究開発チームの白衣を着たエルフたちも、ドラゴンの背中に乗って俺の船へと向かっていった。


「お嬢様、私たちも船へ戻りましょう。騎士団のエルフたちだけでは、大砲の積み下ろしは大変でしょうから。船で待機しているメリヘナだけでは指示を出しきれません。乗組員たちを手伝わせるのに、船長の指揮が必要かと」

「ええ、そうね。ウッドロットとはしばらくのお別れになるかもしれないけれど、また戻って来れることを祈りましょう。……グレンちゃん、聞こえる?」


 ラビが指にはめた召喚指輪に話しかけると、指輪から「う〜ん……」と、寝起きのグレンの声が聞こえてくる。


「どうしたの?」

「眠っているところごめんなさい。私たちを船まで運んでほしいのだけれど」

「うん……あ、でもそれ、あの爆弾まみれな空の中を通って行かなきゃいけないんでしょ?」

「ええ、そうね。……難しそう?」

「……ボク、まだちょっと怖いかも」


 ラビとグレンが指輪を通して会話を交わす中、空の上から「まったくその子は」と、呆れた声が降ってくる。


「世界最強の竜を名乗ってるくせに、意外と根性無しなのね」


 その声の主は、クリーパードラゴンに乗って降りてきたエレノアだった。同じくニーナも、自分のクリーパードラゴンに乗って母親の隣へ飛んでくる。


「私たちが船まで送ってあげるわ。乗って」


 俺たちはニーナとエレノアのドラゴンにそれぞれ乗って、俺の本体であるクルーエル・ラビ号へと向かった。


 船へ向かっている途中、ラビの指にはめた召喚指輪から、「ボクは根性無し……ボクは根性無し……」とぼそぼそグレンの呟く声が聞こえていた。あいつ、エレノアのママからさりげなく言われた一言にかなり傷付いてしまったらしい。まぁ、そのうち立ち直ってくれるだろうとは思うのだが……

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