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第110話 新しい仲間も増えたけど、先行きに不安しかないのだが……

 ――これまで、サラザリア城に囚われの身であったポーラは、ラビに助けられてから、晴れて近衛メイド隊「ホワイトベアーズ」に復帰し、ラビリスタ海賊団の一員となった。最初、自分の仕えていたお嬢様が海賊船の船長をやっていることに驚いてはいたものの、案外状況をすんなり受け入れたようで、海賊団へ入団する際も、迷いもせずにあっさりと決めてしまっていた。


「ラビリスタお嬢様の下で働けるのであれば、例え盗人ぬすっとの一団であろうと、喜んで参加いたします」


 ポーラ本人はそう答えていたが、盗人呼ばわりしているところから、俺たち海賊のことをあまり良くは思っていないらしい。まぁ、本来海賊はお尋ね者なのだから、良く思っていなくて当たり前か……


 けれどもポーラは、海賊団に入って早々《そうそう》、今回の奴隷解放作戦でラビの補佐を務め、海賊団たちを統率する司令塔としても活躍していた。やはりメイド長としての手腕が発揮されるのか、出す指示はどれも的確だし、行動も早い。


 ……しかし、そんな何事にもきっちりしているポーラと、自由奔放で何事もテキトーなニーナとは性格の相性が抜群に最悪で、事あるごとに互いに突っかかるようなこじれた関係が出来上がってしまっていた。


「……今の言葉、聞き捨てなりませんね。確かに、敵の手に堕ちて、お嬢様から助けて頂いたことは、完全に私の失態です。ですが、だからといって同じくお嬢様から助けて頂いたことのあるあなたに言われたくありません」

「はぁ? 私がいつラビっちに助けられたっていうのよ!」

「お嬢様からお聞きしました。リドエステの洞窟で黒炎竜のグレン様と対峙した際、間一髪でお嬢様から危機を救われた、と。あなたは脚を怪我して、逃げることもできなかったとお聞きしていますが?」

「なっ! いや、あの時は、その……ちょっと油断しただけで……」


 自分の失態を指摘されてしまい、俯きながらブツブツと文句を垂れるニーナに、ポーラは溜め息を吐いて言う。


「はぁ、また言い訳ですか……その油断が命取りになることを、胸の内にしまっておくことですね」


 そう言って踵を返そうとするポーラに、ニーナが負けじと言い返す。


「それはアンタも同じでしょうが! ……まぁでも、アンタの場合は、それをしまうだけの胸もロクに持ってないから、言ったところで無駄かもしれないけど~?」


 ピキッ、とポーラの頭で何かがキレる音がした。……ヤバい、これは逆鱗げきりんに触れた予感――


「………最後に言い残したい言葉はそれだけか?」


 ポーラの手が、ゆっくりと腰に下がった銃へ伸びてゆく。


「あ、ひょっとしてタブーに触れちゃった感じ? あははっ、意外と気にしてたんだ~、ウケるんですけどwww」


 ポーラを見て面白がるようにニヤニヤするニーナ。しかし彼女の手は、ゆっくり肩にかけた弓へと伸びてゆく。今にも二人で殺し合いが始まりそうな殺伐とした空気が漂う中――


「ふ、二人とも落ち着いてくださいっ! まだ作戦中なんですよ!」


 ラビが慌てて止めに入るおかげで、二人のいがみ合いはどうにか収束する――ここまでの流れが、この一ヶ月でもはや日常茶飯事になりつつあった。


 最初は新しい仲間が増えて、こっちも自身の操船が楽になると喜んではいたものの……これ本当に大丈夫なのか? ここに居る奴(ラビを除いて)の誰と誰を組み合わせても、相性最悪にしかならないのだが……


「それならさぁ、どちらが多くの奴隷を解放できるか、勝負してみない?」

「望むところです。まぁ、既に結果は目に見えていますけれど」

「もし私が勝ったら、私がラビっちの専属メイド係ね? ラビっちの護衛から身の回りのお世話、食事から着替えからお風呂まで、みーんな私がやってあげるの! そしてもちろん、お風呂はラビっちと一緒に……ね♥?」

「なっ!……そ、そんな破廉恥はれんちなこと、この私が絶対に許しません! ラビリスタお嬢様の専属メイドはこの私です! 私が常にお嬢様の傍に仕えるに相応しい立場であるはずです!」


 お互いににらみ合う二人の間で、見えない火花がバチバチ飛び散る。そんな二人の間に板挟みにされて、あたふたしてしまうラビ。


 ――そして、さらにそこへ闖入者ちんにゅうしゃがもう一人……


「あ、あの……おこがましいかもだけど――」


 突然、ラビの指にはめられた召喚指輪サモンリングが反応して光り出し、呼んでもいないというのに、黒炎竜のグレンが姿を現したのである。


「……ぼ、ボクも、その勝負に参加して、いいかな?」

「「―――はぁ!?」」


 突如として参戦してきたグレンに、素っ頓狂な声を上げるニーナとポーラ。グレンが召喚されてしまったせいで、周りに居た町の人々は、竜が町を襲いに来たと勘違いしてしまい、あちこちで悲鳴が上がっては、右往左往に逃げ回ったりの大パニック。


「ちょ、グレンちゃん? どうして勝手に出て来ちゃったの!?」

「いや、あの………ぼ、ボクも、ラビちゃんとずっと一緒に居たくて……もしその勝負に買って、ラビちゃんとずっと一緒に居られる権利が貰えるのなら……ボクもやりたいな、って……駄目かな?」


 そう言って恥ずかしそうに顔を背けるグレン。――いや、駄目も何も、お前が参加したら建物一つどころか、この町全体が灰になるわ!


 ……そして、そんな三つどもえな修羅場など何処吹く風、腹を空かせたクロムが、一人だけ蚊帳かやの外で、傍に倒れている男を指差しながら「ねぇ、こいつ食べていい?」と子どものようにしつこく強請ねだってくる。


 もはや完全に混沌カオスと化したこの状況に、俺はとうとう発狂するように声を張り上げた。


『―――おいお前ら! いい加減にしろ~~~っ‼︎』


 これから先も、こんな連帯感皆無な奴らと旅を続けなければならないと思うと、はなはだ先行きが不安過ぎて仕方ない。


(いやマジで、誰かコイツらをなんとかしてくれよ……)


 俺とラビの苦労は、これから先もまだまだ続く……そんなあらがえない運命を感じながら、俺はラビや他の仲間たちと共に、ウルツィアの町中を駆け巡るのだった。







※この時点での俺(クルーエル・ラビ号)のステータス

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【船名】クルーエル・ラビ

【船種】ガレオン(3本マスト)

【用途】海賊船 【乗員】124名

【武装】8ガロン砲…20門 12ガロン砲…18門

【総合火力】1500 【耐久力】1200/1200

【保有魔力】3000/3000

【保有スキル】神の目(U)、乗船印ボーディングサイン(U)、総帆展帆そうはんてんぱん(U)、自動修復(U)、詠唱破棄、治癒(大)(ヒール・マキシマ):Lv6、魔素マナ集積:Lv7、結晶操作:Lv6、閲読えつどく、念話、射線可視、念動:Lv10、鑑定:Lv10、遠視:Lv10、夜目:Lv10、錬成術基礎:Lv10、水魔術基礎:Lv8、火魔術基礎:Lv8、雷魔術基礎:Lv8、身体能力上昇:Lv6、精神力上昇:Lv6、腕力上昇:Lv6、

【アイテム】神隠しランプ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

※ニーナに乗船印ボーディングサインを使ったことで、「治癒(小)(ヒール・ミニマム):Lv6」が「治癒(大)(ヒール・マキシマ):Lv6」にレベルアップ!

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