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無能才女は悪女になりたい~義妹の身代わりで嫁いだ令嬢、公爵様の溺愛に気づかない~(WEB版)  作者: 一分咲
六章

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30.

「あら?」


 後ろを通りかかったフレイヤの怪訝そうな声で、エイヴリルは今この瞬間、自分はコリンナになっていることを思い知る。


 いつもなら、フレイヤは気さくに声をかけてくれる。それをしないということは、この目の前の女がコリンナと認識しているのだろう。心許なさで泣きたくなる。


(ど、どうしてこんなことに……!)


 夕方になり、サロンに降りるとすでに数人の客が来ていた。顔見知りの娼婦と談笑しているようで、自分の出る幕はなさそうである。


 しかしとりあえず、コリンナは階段の踊り場からサロンを俯瞰するように見下ろしていたことを思い出し、エイヴリルも真似をして見ているのだった。


 けれど、一度は通り過ぎたはずのフレイヤが目を泳がせつつ戻ってきて、こっそりと忠告してくれた。


「ねえ大丈夫? 男漁り、というよりは、家出した犬を探しているみたいだけれど」

「えっ」


 完全にコリンナになりきっているのは自分の思い違いだったらしい。フレイヤは申し訳なさそうに教えてくれた。


「言おうかどうか迷ったのだけれど……一応真面目なようだったから……。あの子になりきるのなら、その体の前で上品に組んだ手は胸の前で腕組みにしないといけないし、男を弄ぶ女を演出したいのなら、もっとふんぞり返って……」

「こうでしょうか?」

「いいえ、もっとこう」


 実演してくれるフレイヤが優しすぎる。


 しかし、実演するフレイヤはどこからどう見ても妖艶な女性だが、それを真似する自分は何かに挑む少年に見える気がする。いいや見える。それは、外が暗くなり自分の姿をはっきりと映すようになった窓がはっきり物語っていた。


 数回はエイヴリルの姿勢を矯正しようと頑張ってくれたフレイヤだが、どんなポーズを取ってもいまいちのエイヴリルを見て、ため息をついた。


「あなた、元々姿勢がいいのね。無理だわ、諦めなさい」

「せっかく教えてくださったのに、申し訳なく」

「いいのよ。それで、どうしてこんなことになっているの?」


 問われて、エイヴリルは成り行きを話した。


 コリンナが急に『相手が決まっちゃうと何もやる気が起きない』と言い出した、と説明したところで、フレイヤは目を逸らし気まずそうに頷く。


「なるほどね。あの悪女でもそんなことを言い出すことがあるんだ?」

「昨日の貴族サロンでお気に入りの殿方を見つけたのかと思い、聞いてみたのですが、どうも本人の発言と辻褄が合わなくて。その殿方は大きな商会の方と伺ったのですが」


 王宮御用達で、王都のほぼ全ての店と取引はある商会といえば、両手の指の数もない。かなり絞られてくる。エイヴリルも一応当たりはつけていたのだが、タイミングがなくて確認できずにいた。


 その答えをフレイヤは教えてくれる。


「昨日あの騒ぎの後で、あの子がシュクレール商会の方と話していたのを見たわ」

「シュクレール商会……確かに、貴族ではありませんが豪商です。コリンナが相手として選ぶのには納得しますが……」


 商会の名前に納得は行った。けれど、一方でコリンナの性質を考えると、やはりどうしても腑に落ちない部分が出てくる。


(コリンナはとんでもない面食いです。それでいて、好みは同じ年齢か少し年上の男性。その証拠に、男爵家の三男の父親――つまり男爵本人ですが――からドレスをもらっても、手紙を破り捨て、お礼状すら書きませんでした)


 ところが、シュクレール商会の主は、ダンディなイケオジのはずではある。以前、新聞にインタビューが載っているのを写真付きで読んだ覚えがあるので、間違いない。


 イケオジなのだが、年齢はコリンナの守備範囲から外れているように思えた。となると、コリンナが夢中になるのは少しおかしくはないだろうか。


(確かに若い女性にもファンが多いという記事でしたけれど……甘くてほろ苦く渋いルックスからは想像できないほど、お仕事にはシビアなのだとか? まぁ、そのような豪商を治められている方ですから当たり前ではありますね)


 余計な知識まで引っ張り出してしまったところで、フレイヤは不思議そうに首を傾げるのだった。


「でも、確かに盛り上がっていたみたいだけれど、彼女が最終的にしなだれかかって一緒に消えていったのは、シュクレール商会の主ではなかった気がするのよね。ブロンドに甘いルックスで……イケオジになるのは二十年後、って感じの爽やかな殿方」


「それは、コリンナが大好きそうです」


 うんうんと頷いたところで、ベル・アムールの正面扉が開き、来客を告げる鐘の音が響く。


(お客様ですね)


予約投稿失敗してました、すみません!

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